Bovine spongiform encephalopathy
病気の概要
別名 | BSE、狂牛病 |
原因 | 異常プリオン蛋白質 |
疫学 | 散発性、成牛に発生。BSE発生国との関連、異常プリオン蛋白質に汚染された飼料給与の有無を調査する必要がある。 |
症状 | 感覚異常、行動異常、運動異常。末期に、起立不能、衰弱および死亡。 |
肉眼所見 | 特異的な変化はない。 |
組織所見 | 脳幹部灰白質におけるニューロピルの空胞化、神経細胞の空胞化、神経細胞の脱落、星状膠細胞の増数。病変は延髄の迷走神経背側核、孤束核および三叉神経脊髄路核に好発するため、この部位の観察が診断に必須である。 |
我が国初発例の病理組織像
(参考のため、正常牛の組織像もお示ししました)
BSE解剖採材マニュアル
牛海綿状脳症検査に係わる解剖及び採材方法
- 服装、器具
フード付きディスポーザブルのつなぎの上に防水作業着を着用する。頭部はつなぎのフードをかぶり、マスクとフェイスシールドを着用する。2対のディスポーザブルグローブの間にアンチカットグローブを着用し(3重にグローブをはくことになる)、作業着の袖口と一番外側の手袋はテープで固定する。 刀等は出来る限りディスポーザブルのものを使用する。 - 採材箇所
脳のみを採材する。延髄の一部を密閉容器に入れ(バッファー等は使用しない)4°C(氷詰)保存し、残りの部分は10%中性緩衝ホルマリンで固定する。他の臓器は焼却処分する。 - 術式
(1)大きなシートの上で解体し、シートごと全て焼却する。
(2)生体は可能な限り全身麻酔下で放血殺する。放血にはカニューレを用い、血液はビニール袋等に出来る限り回収する。回収した血液は焼却処分する。
(3)脳のみを採材する。組織片の飛散を避けるため、開頭には鋸を用いる。主病変は脳幹部に存在するので、この部位を破損しないよう十分注意する。
(4)脳全体の採材が不可能な場合は、大孔法(別紙1)により脳幹部を採材する。
(5)別紙2により、延髄の一部を4°C(氷詰)保存用に採材する。小脳および脳の残りの部分は10%中性緩衝ホルマリンに浸漬する。
* 解体時は、出来る限り血液や内容物が散乱しないように注意し、回収して焼却処分する。 - 終了後の洗浄、消毒
(1)解剖器具は焼却可能な布等で汚れを落とした後、2N NaOHに2時間以上浸漬し、その後水洗する。
(2)解剖室は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。
(3)ディスポーザブル用品は全て焼却する。防水作業着の焼却が困難な場合は、着たままブラシを用いて次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した後、水洗する。脱衣後は更に次亜塩素酸ナトリウムに一昼夜漬けて消毒する。長靴についても同様の消毒を行う。
(4)器具等については、134~138°C、3気圧、18分間のオートクレーブ滅菌も可能である。
* 次亜塩素酸ナトリウムは有効塩素濃度2%;市販の物は6%なので3倍に希釈。 - 動物衛生研究所への材料の搬入
(1)県畜産主務課を通じ、衛生課に連絡するとともに、動物衛生研究所へ材料を病性鑑定依頼書及び別紙3-1を添えて搬入する。
(2)搬入材料
- 生材料:別紙2に準じ、縦に分割した延髄5gを採材し、閂部約3cmとその前後を別の密閉容器に入れる。なお、容器は密栓した上、周囲を2N NaOHで消毒し、さらに頑丈な輸送用の容器に収める。この輸送容器ごとクーラーボックスの中に収めて冷蔵にて動物衛生研究所へ搬入する(なお、航空便で送付する場合の輸送箱は国際航空協定適合品を推奨)。延髄生材料をやむをえず長期間保存する際は密閉容器に入れて-80°C保存する。なお、エライザ検査に供試した乳剤の残りについても動物衛生研究所に送付する。
- 固定材料(病理組織学的検査及び免疫組織化学的検査に使用する。):10%中性緩衝ホルマリンで固定する。固定容器の周囲を2N NaOHで消毒後、ホルマリンが漏出しないように注意して動物衛生研究所に搬入する。
- 消毒等の措置
- 病性鑑定施設は2%次亜塩素酸ソーダ等で消毒する。
- 患畜、疑似患畜の死体、と畜場残さ等は焼却処分する。焼却灰は埋却処分を行う。なお、焼却については、800°C以上で完全に灰になることを確認すること。
- 問い合わせ先
動物衛生研究所 プリオン病研究センター (Tel:029-838-7713(代表))
大孔法の手順
- 頭部を後頭骨と環椎の間で切断する。
- 切断した頭部を、上下を逆にして下顎が上になるように解剖台の上に置く。
- 大孔(大後頭孔)から延髄と硬膜の間にヘラ状のスプーン(薬匙など)を挿入し、延髄から硬膜を注意深く剥離しつつ、第7、8、9、10および11脳神経を切断する。
- ヘラ状スプーンを注意深く用い、小脳脚を切断(図1)、さらに小脳脚部で脳幹部を切断する(図2)。
- 脳幹部を注意深く摘出する。
≪注意≫
*特に延髄閂部を破損しないよう、細心の注意を払う。
採材方法
- ナイフもしくは剃刀を使用し、延髄中心管の入り口を必ず中央にして前後約1.5cmの位置で延髄を横断する。
- ナイフもしくは剃刀を使用し、正中で閂部を含む延髄を縦断する。
- 1. の前後の残りの部分はナイフもしくは剃刀を使用し正中線で縦断し、右側を生材料、左側をホルマリン固定材料とする。なお、これらの部位の生材料は、閂部の生材料とは別の容器に入れること。
BSE解剖採材アトラス
BSEに係わる解剖および採材の一例
(写真中の牛は健康畜であり、BSEに罹患したものではありません。)