役割
植物病原菌が宿主植物に感染すると病気を引き起こします。また、ある微生物が共存すると、植物が病気に強くなることもあります。私たちは、微生物と植物がどのように相互作用しているかを知ることにより、持続的で人間や環境に優しい新たな病害防除方法を開発するための基盤を構築することを目指しています。
主な研究テーマ
研究テーマ1 作物の重要病害を抑える天然物質の同定
病原体に直接作用せず植物の病害抵抗性を高めることで防除効果を発揮する物質はプラントアクチベーターと呼ばれ、持続性の高い環境保全型の病害防除資材として注目を集めています。しかし、重要土壌病害である青枯病に効くプラントアクチベーターは知られていませんでした。我々は、天然由来の素材から青枯病に効くプラントアクチベーターを発見、同定しました。現在、実用化に向けた研究を進めています。
天然化合物による青枯病の抑制
トマトに青枯病菌を接種すると通常は枯れてしまいます(左)が、ある特定の天然化合物を予めトマトに与えておくと発病が抑えられます(右)。
研究テーマ2 植物病原細菌の病原性発揮に必要な因子の解析
植物は、病原体を感知して、防御反応を誘起することにより身を守ります。一方、病原体の多くは、防御反応の誘起を妨げる因子(エフェクター)を植物に注入して感染していることが明らかになりつつあります。私たちは、イネ白葉枯病やアブラナ科植物の黒腐病の原因であるXanthomonas属細菌等がもつエフェクターの機能を解析しています。これにより、エフェクターの機能阻害による新たな病害防除方法を開発したいと考えています。
アブラナ科植物の黒腐病菌の植物体内での増殖の観察
蛍光標識した黒腐病菌(緑)は、細胞間隙で増殖したあと(左)導管に侵入し、そこでさらに増殖します(右)。赤は葉緑体を示します。この感染の過程で、菌はエフェクターを植物細胞に注入するなどして植物の防御反応の誘起を妨げ、植物体内で増殖すると考えられます。そのため、この病原細菌の感染戦略を妨害する手法を開発することが病害防除に不可欠です。
研究テーマ3 バイオコントロール細菌に関する研究
植物を病害から保護する効果をもつ細菌はバイオコントロール細菌とよばれています。我々は、バイオコントロール細菌の植物保護効果の発現機構を解析するとともに、国内産の有用菌株を探索し、国内で利用可能な高性能バイオコントロール細菌の開発を目指しています。
バイオコントロール細菌のキュウリ苗立枯病防除効果
キュウリに苗立枯病菌を接種するとキュウリは枯れてしまいますが(中央)、バイオコントロール細菌を苗立枯病菌とともに接種すると(右)、病原菌を接種していない植物(左)と同じように元気に育ちます。