農村工学研究部門

用水管理ユニット

ユニット概要

わが国の農業用水は,水利用全体の約3分の2を占めており,総延長約40万km(地球10周分に相当)に及ぶ農業用用排水路網を通じて, 全国の隅々に広がる水田等にきめ細かく配水されています。この仕組みを農家と水管理組織(土地改良区等)が支えています。

近年,圃場の大区画化や担い手の規模拡大が進展し,農業用水の需要は多様化しています。また,近年は気候変動に適応するための用水利用など新しい需要も発生しています。そこで, 農業用水の需要と供給を整合させ,用水を有効に利用して農業生産性の向上を図る用水管理手法の開発を行っています。

研究成果の活用事例

高温障害の発生が懸念される地区で、土地改良区が気温・水温等の観測とWeb公開を行うシステムを整備し、営農部局と用水管理部局が連携を図るきっかけとなりました。(写真:「高温に対する農作物への技術対策会議」の様子)

東日本大震災による地盤沈下の影響で、農業用水への塩水浸入が見られるかんがい地区で、電気伝導度(EC)のモニタリングを行い、塩害を回避するための用水管理の方法を検討しています。(写真:宮城県石巻市に設置したECデータ送信システム)

スタッフ

ユニット長 進藤 惣治 総括:
情報通信・制御技術を導入した圃場-広域連携型の次世代水管理システムの開発に取り組んでいます。開発途上国での水管理問題にも取り組んでいきたいと考えています。
上級研究員 鬼丸 竜治 用水管理組織の運営管理を担当:
大規模経営体と小規模農家への二極分化といった、農業・農村の構造の変化に対応して水路を持続的に管理するための、土地改良区等の組織運営管理技術の開発に取り組んでいます。
上級研究員 大和田 辰明 4月に農水省から異動してきました。土地改良事業地区の社会経済条件・施設種別による類型化、用水管理へのICT導入の適合性・効果などについて研究しています。行政経験を活かし、行政・現場のニーズに応えていきたいと考えています。
主任研究員 谷本 岳 用水利用および圃場水収支の分析を担当:
圃場または灌漑地区単位の用排水量測定および周辺の気象要素データを基に、営農者または営農を支援する立場の方々から現状を伺うことにより、高品質な作物を栽培するために用水管理の側面から可能な手法の提案を行っていきたいと考えております。

研究課題名

第4期中長期計画における課題

中課題:大規模化等による収益性の高い農業のための農業生産基盤整備技術の開発 小課題:農業構造や営農の変化に対応する水管理手法の開発 小課題の背景:収益性の高い農業を目指し、ほ場の大区画化及び担い手への農地集積が進み、農業経営の大規模化・法人化といった農業構造の変化や、作目の多様化など営農の変化が予想される。このような状況下では、圃場レベルの水需要も変化することから、それに対応した用水管理が必要である。 小課題の目標:農業経営の大規模化・法人化といった農業構造の変化や高収益作物導入など地域営農の変化による水需要の変化が予想されており、その変化に対応する水管理手法を開発する。 小課題の具体的方法:担い手への農地集積等による灌漑期間の変化、直播栽培の拡大等が水需要に及ぼす影響、並びに経営規模拡大、法人化の進展等による操作管理の変化を調査・評価する。農業構造や営農の変化に対応する水利施設の操作管理技術を開発する。気候変動による用水への塩分浸入等の影響に対する水管理手法を開発する。農業・農村の構造の変化に対応する土地改良区等の組織運営管理技術を開発する。災害発生時および復旧過程における水管理に関する現場知を集積し、水管理組織の事業継続計画(BCP)等への活用方法を提案する。

研究成果(平成28年4月1日現在)

【成果情報】 【原著論文】 【総説・解説・著書】 【プロシーディング】 【報告書・その他】

成果情報

※成果情報の検索はこちら

1) 現場技術者のための水利施設の維持管理への参加促進要因選択手法 研究 2016年
2) 都市圏で暮らす高齢非農家住民の農作業参加構造 研究 2015年
3) 用排水路の維持管理における非農家住民の労力負担行動の継続性評価指標 研究 2013年
4) 震災で地盤沈下した農地で塩害を回避するための農業用水のモニタリング 研究 2013年
5) 現地調査を踏まえた津波被災農地の除塩における留意点 普及 2012年
6) 高温年の玄米品質低下を抑制するための用水充足度の重要性 研究 2012年
7) 用排水路の維持管理への非農家住民の参加を促す要因の選択方法 研究 2012年
8) 水路の維持管理への労力提供意欲を向上させる要因の選択方法 研究 2010年
9) 水稲の高温障害対策と両立できる用水管理の調整手法 技術及び行政(参考) 2009年
10) 塩水地下水浸入がある下水処理水の利用のための塩分低下対策の検討手順 技術及び行政(参考) 2009年
11) 東南アジア水田地域の互恵的な水利慣行を図示する参加型学習行動法 技術及び行政(参考) 2007年
12) 洪水時における低平水田用水管理の評価 技術及び行政(参考) 2005年
13) 米国カリフォルニア州の渇水時水移転における水の多面的役割の保全 技術及び行政(参考) 2003年
14) 農業用水管理における水のプライシングの位置付け 技術及び行政(参考) 2002年
15) 中山間地域水田における流出抑制機能の発揮条件 技術及び行政(参考) 2001年

※研究所刊行物はこちら

原著論文

1) 鬼丸竜治(2016):水路の維持管理における労力負担行動の継続性評価指標の簡易算出手法の検討,農村工学研究所技報,218
2) 鬼丸竜治(2015):水路の維持管理における労力負担行動を促進する要因の選択方法の分析-パス係数による方法と最大有効人数による方法の比較-,農業農村工学会論文集,298,II_65-II_75
3) 坂田賢,加藤仁,谷本岳(2015):既知点初期化方式1周波RTK-GPSを用いた暗渠位置特定,農業農村工学会論文集298,IV-17-IV-18
4) 友正達美,辛島光彦(2015):国東半島宇佐地域の連携ため池に見られる「水土の知」と次世代への継承の取組み,水土の知(農業農村工学会誌),83(11), 7-10
5) 友正達美,谷本岳,内村求(2015):代かき用水需要の平準化による春渇水への適応の可能性,水土の知(農業農村工学会誌),83(9), 19-22
6) 進藤惣治,山本公一(2015):地域の合意形成に基づく水質保全・排水再利用の取組み, 水土の知(農業農村工学会誌),83(7), 23-26
7) 鬼丸竜治,石田憲治,合崎英男,片山千栄(2015):都市圏で暮らす高齢非農家住民の農作業参加構造の分析-健康づくりに着目して-,農村工学研究所技報,217,63-74
8) Onimaru, T. (2014):Farmers' Willingness to Perform Maintenance Activities in Participatory Irrigation Management in Thailand, Japan Agricultural Research Quarterly, 48(4), 379-384
9) 鈴木克拓,大野智史,谷本岳(2014):多雪重粘土地帯の地下水位制御システム圃場における不耕起V溝直播水稲-冬作大麦-大豆2年3作体系下での水・窒素・リン・懸濁物質の流出,土壌の物理性,127,19-29
10) 内村 求,杉浦未希子,石井 敦(2014):農業用水の「従量制」水利費賦課による節水効果の分析-三重用水地区を対象として-,農業農村工学論文集,82(3),1-7.
11) 友正達美,谷本 岳,内村 求(2014):震災からの復興過程における農業用水の塩分濃度モニタリング,農村工学研究所技報,216,1-8
12) 鬼丸竜治(2014):用排水路の維持管理における集落の労力負担能力の継続性評価-2010年世界農林業センサス農業集落カードの山形県のデータを用いた事例-,農村工学研究所技報,215,17-30
13) 鬼丸竜治(2013):水路の維持管理における労力負担行動の継続性評価指標,農業農村工学会論文集,284,89-90
14) 友正達美,坂田 賢,内村 求(2013):平成23年(2011年)(2013):東北地方太平洋沖地震により地盤沈下した取水河川における農業用水の塩分モニタリング,農村工学研究所技報,214,9-16
15) 谷本岳(2013):北陸研究センターにおける農業農村工学研究について,水土の知(農業農村工学会誌),81(5),15-18
16) 大塚直輝,坂田 賢(2013):パイプラインを利用した夜間灌漑実証試験,水土の知(農業農村工学会誌),81(4),35-38
17) 坂田 賢,友正達美,内村求(2013):猛暑に対応した水稲作付体系が用水需要変動に及ぼす影響,水土の知(農業農村工学会誌),81(4),3-6
18) 友正達美,佐藤政良,藤本直也,吉村亜希子(2013):農業用水の水利用特性に起因する水利転用の制度的特徴-ニュージーランド南島および米国カリフォルニア州の事例に基づく考察-,水文・水資源学会誌,26(2),75-84
19) 鬼丸竜治(2012):用排水路の維持管理における非農家住民の労力負担構造の分析-働きかけが可能な要因に着目して-,農業農村工学会論文集,281,81-90
20) 勝山達郎,内村 求,樽屋啓之(2012):農業水利施設の管理における多様な主体の参加と特定受益者賦課に関する考察,農業農村工学会論文集,280,45-51
21) 進藤惣治,山本公一(2012):エジプト国における水利組合強化の取組み, 水土の知(農業農村工学会誌),80(4), 35-39
22) 鬼丸竜治(2012):参加型水管理における農民の維持管理労力負担意欲,農村工学研究所報告,51,259-306
23) 友正達美,坂田 賢,内村 求(2012):平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波被災農地における平成23年春期除塩作業の実施状況と今後の課題,農村工学研究所技報,213,79-87
24) 内村 求,坂田 賢,友正達美(2012):低平地水田地域における揚水機場の運用管理とその効率化,水土の知(農業農村工学会誌),80(3),11-14
25) 坂田 賢,友正達美,内村 求(2012):宮城県南東部の高温条件下における灌漑水路および水田の水温と稲の高温登熟障害の関係,農業気象,68(1),87-92(英文),doi:10.2480/agrmet.68.1.7
26) 坂田 賢,友正達美,内村 求(2012):宮城県南東部における高気温下の出穂期以降の水温環境,応用水文,24,21-29
27) 坂田 賢,友正達美,内村 求(2011):夏季高温下における営農手法が玄米外観品質に及ぼす影響,水土の知(農業農村工学会誌),79(8),27-32
28) 鬼丸竜治,吉村亜希子,島武男,石田憲治(2011):用排水路の維持管理における活動組織構成員の労力負担意欲への影響要因-山形県三郷堰地区を事例として-,農業農村工学会論文集,276,45-53
29) 鬼丸竜治,佐藤政良(2011):農民の維持管理労力負担意欲を向上させるために働きかけるべき要因の選択方法,農業農村工学会論文集,275,69-70
30) 鬼丸竜治,佐藤政良(2011):参加型水管理における農民の維持管理労力負担意欲への影響要因の分析-タイ国コカティアム維持管理事業支線用水路18R地区を事例として-,農業農村工学会論文集,275,1-11
31) 友正達美,山下 正(2010):水田農業の営農変化に伴う用水需要変化に関する一考察,農村工学研究所技報,210,111-119
32) 山下 正,友正達美,山口信司(2010):下水処理水の農業利用において下水道財産の形状変更を農業側が行うための制度,水土の知(農業農村工学会誌),78(3),27-32
33) 友正達美,山下 正:水稲の高温障害対策における用水管理の課題と対応の方向(2009):農村工学研究所技報,209,131-138
34) 友正達美,山岡和純(2006):地域の伝統的水利慣行を生かした農民参加による水管理形成の試み-カンボジアの平地水田を事例として-,農村計画学会誌,25(1),28-34,DOI:10.2750/arp.25.28
35) 友正達美(2005):歴史的水利慣行の智慧を海外の灌漑開発に活かす,農業土木学会誌,73(12),25-28
36) 友正達美(2003):わが国の風土と土・水資源の保全,農業土木学会誌,71(3),45-48

総説・解説・著書

1) 友正達美,北川 巌,嶺田拓也,原口暢朗:津波被災農地の復旧と除塩,土と基礎(地盤工学会誌),61(2),20-23
2) 友正達美:水稲の高温障害対策における用水管理の課題と対応の方向(ウェブサイト),農業温暖化ネット,社団法人全国農業改良普及支援協会
3) 友正達美,山下 正:亘理・山元地区における高機能型水管理支援システムについて,JACEM,49,22-25

プロシーディング

1) Motomu Uchimura(2012): Irrigation Water Management Structure, 2012 FFTC International Seminar on Water Management Technology for Crop Production under Climate Change, 31-48, Suwon, Republic of Korea on September 4-6
2) Satoshi Sakata, Tatsumi Tomosho and Motomu Uchimura : Measurement of water temperature in the open canal, pipeline and paddy fields to secure cool water in summer in northern Fukui, Japan, International Council on Irrigation and Drainage (ICID) 63rd International Executive Council Meeting, and the ICID 7th Asian Regional Conference, Australia on June 24-29
3) Motomu Uchimura, Satoshi Sakata and Tatsumi Tomosho:Irrigation water management to protect rice grains from heat damage during ripening, 21st ICID congress on irrigation and drainage, 263-269, Iran on October 15-23

報告書・その他

1) 鬼丸竜治:用排水路の維持管理における非農家住民の参加行動の継続性評価指標,農工研ニュース,95,p.2,2015年1月
2) 友正達美,北川 巌,嶺田拓也:現地調査を踏まえた津波被災農地の除塩における留意点,農工研ニュース,78,p.2,2012年2月
3) 鬼丸竜治:水路の維持管理への労力提供意欲を向上させる要因の選択方法,農工研ニュース,76,p.3,2011年11月
4) 友正達美:水稲の高温障害と両立できる用水管理の調整手法,農工研ニュース,70,p.3,2010年11月