農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第4号(2010年7月号)

目次

1)トピックス

■ため池崩壊の危機技術支援のため職員2名を派遣

7月8日に、Y県下のI堤の下流側のり面から流れ出ている水の一部が赤く染まり、「ため池の堤体の中を伝ってかなりの水が漏れている」と、ため池管理者が県に通報しました。Y県は、漏水から重大な災害につながる危険性が高いと判断し、その対策を講じるため、当所に専門家の派遣を要請しました。

12日に、私と上野研究員が現場に向かい、パイピングが発生していることを確認し、県の担当者と対策工法を検討しました。しかし、13日から激しい雨に見舞われ、ため池の水が溢れて決壊する危険が高まり、ため池の貯水をポンプで強制排水するなど、漏水対策というよりも、堤体の崩壊を防ぐ対応に追われました。

Y県では梅雨が明け次第、漏水の拡大を防ぐ対策に着手する予定です。漏水の原因究明、調査診断方法や改修方法など、ため池の技術については、今後とも適切に支援を続けていきます。

施設資源部 土質研究室長 堀俊和

<一口メモ>パイピングとは、堤体の中に水みちが出来て、水や土砂が噴出する現象で、放置すると規模が拡大し破堤に至る恐れがあります。

(関連URL:写真)http://www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/laboratory/nkk/028363.html

■広島県の土砂崩壊現場に職員3名を派遣

7月12日からの豪雨により、14日の16時頃に、広島県県神石高原町K地区で土砂崩壊が発生しました。農林水産省および中国四国農政局から被災状況調査にかかわる職員派遣要請があり、17日に当所の職員3名(広域防災研究チーム・川本チーム長、基礎地盤研究室・中里室長、構造研究室・田頭主任研究員)を現地に派遣しました。

農政局、関係自治体職員及び地元住民の立会いの下、派遣された職員は、これまで蓄積した知見を踏まえ、今後の被害拡大の可能性について検討するとともに、亀裂監視を含む承水路の応急的管理や今後の観測機器設置等について助言しました。

企画管理部 防災研究調整役 木下勝義

(関連URL:写真)http://www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/laboratory/nkk/028366.html

■参加160名東北農政局で技術相談会・実用新技術説明会を開催

7月6日に、仙台合同庁舎において、技術相談会・実用新技術説明会が開催されました。当所から17名の職員が出向き、事業現場が抱える37件の技術相談を受け、当所が開発した9件の新しい技術を紹介しました。約160名の技術者に参加いただき、このような会を事業現場の近くで実施する意義を感じました。

技術移転センター移転推進室長丸茂伸樹

(関連URL:写真)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm04_01-03.pdf

■ベトナムでバイオマス利活用を進めるための現地調査

ベトナム(以下、「ベ」国)において、昨年10月から、JST-JICAプロジェクト「持続可能な地域農業・バイオマス産業の融合」が実施中です。私はプロジェクト担当者の一人で、今回はJICAの短期派遣専門家として、6月27日から7月3日までホーチミン市に滞在し、ホーチミン市工科大学の研究者と一緒に、南部のパイロット地域で現地調査を行いました。

「ベ」国のように、農業を主要な産業とする国では、その食料生産機能を維持・拡大しながら、産業の近代化・工業化を進めることが重要な課題となっています。そのため、「ベ」国は、食料とエネルギーの同時安定生産や雇用創成による貧困対策などを推進することを目的としたこのプロジェクトに大きな期待を寄せています。私たちは、千葉県の山田バイオマスプラントで蓄積した運転ノウハウを活かしながら、バイオ燃料・資材等を生産し消費する”ベトナム版・地産地消型バイオマス活用システム”を実現するとともに、この研究のさらなる発展に努めます。

農村総合研究部 資源循環システム研究チーム 研究員 折立文子

(関連URL)

■ようこそ、岩手県立盛岡第一高等学校

7月7日に、盛岡第一高等学校の理数科2年生12名が来所しました。生徒達は、農村環境部環境評価研究室の松森室長(同校OB)から所の概要を聞いた後、農村流域管理、農村景観整備、生物多様性保全に関わる研究の最前線を見学しました。生徒達は、ドジョウのDNAを取り出す体験などを通じて、科学への興味を益々深めたようでした。

同校は、生徒達の自然科学に対する興味と関心を深め、学習への意欲を向上させるため、毎年この時期に、最先端の科学技術に触れることができる筑波研究学園都市で課外実習を行っています。

2)イベント情報

■農業農村整備のための実用新技術説明会の開催(第1報)

9月29日の13時00分~16時30分に、全国町村会館(東京メトロ永田町駅から徒歩1分)において、農業農村整備の現場で使える当所の研究成果を紹介します。また、オープニングセッションとして「農村工学分野における開発力の強化と技術経営の考え方」と題する基調講演を設けました。お誘い合わせの上お越し下さい。

(担当)技術移転センター 移転推進室長 丸茂伸樹

(参加申し込み・お問い合わせ先)    E-mail:iten◎ml.affrc.go.jp
※メールを送信する際は「◎」を「@」にしてください

3)新技術の紹介

■よみがえれ、劣化した水路の修復工法

我が国の農業用コンクリート水路は、昭和30年代後半に造られた古いものが多く、コンクリートに発生するひび割れや水の流れによる摩耗などによって、漏水や水が流れにくいなどの不具合が出てきています。

そこで私たちは、既存の水路表面に補修材料(ポリマーセメントモルタル)を一体化させ、水路表面の平滑性や耐摩耗性などの性能を向上させる断面修復工法を開発しました。この技術開発の独創性が認められ、特許を取得しました。関心のある方はご相談下さい。

<用語説明>ポリマーセメントとは、セメントにゴムや樹脂などの高分子材料を混ぜたもので、普通のセメントよりも固まるのが早く乾燥による体積の収縮が小さいといった特長があります。

施設資源部 水利施設機能研究室 主任研究員 渡嘉敷勝

4)水土里のささやき

■基礎技術研修を終えて

8週間、農工研の皆さま、研修生の皆さまには大変お世話になり、誠にありがとうございました。初日の確認試験で、大学で学んだ農業土木の基礎の大部分を忘れている事に気づいた時は焦りました。今は、脳のしばらく使っていなかった部分を整理整頓したような、クリアな気分でいます。教わった内容は業務の中で反復し、再度忘れてしまうことのないよう努力したいと思います。現場経験を積み、いずれは資格試験などにも挑戦していきたいです。

勉強の他、同年代の技官との交流も良い刺激となり、特に女性の研修生4人とは衣食住を共にする中でいろいろな話をしました。将来の不安や職場での戸惑い、あるいは仕事の面白さなど、「女性技官」というマイノリティ同士、共感する部分が多く、自分も頑張ろうというやる気に繋がっています。お陰様で充実した研修期間を過ごせました。今後とも、近くから、遠くから、ご指導のほど宜しくお願いいたします。

中国四国農政局 斐伊川沿岸農業水利事業所 桑田絵理子

5)最新の「農工研ニュース」より

■もう一手先を読む!ため池の防災対策

ため池が地震や豪雨で決壊すると、貴重な農業用水が消失するだけでなく、施設の復旧に資金と時間を要し、最悪の場合には、ため池下流域の住居や人命に被害が及びます。

私たちが開発した情報配信システムは、気象庁が発表する地震・雨量情報を使い、(1) ため池が壊れる危険度を予測し、(2)その情報を関係者に自動的に配信し、(3)仮に、ため池が決壊したときに被害が及ぶ範囲を示すことができます。

これらの情報を基に、地震時や豪雨が襲う前にため池に貯まった水を放流して安全を確保したり、住民が避難するタイミングを判断したり、防災対策として大変役に立ちます。自前でパソコンを用意いただければ、前述した(1)の危険度予測と、(2)の情報自動配信を行うシステムソフトウェアは無料です。お気軽にご相談下さい。

農村総合研究部 広域防災研究チーム 研究員 井上敬資

(関連URL)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm04_seika_5.pdf

6)農村工学研究所の動き

■ため池DBハザードマップを普及する取組

7月14日に、近畿農政局整備部防災課の主催で、当所が開発した「ため池DB(データベース)ハザードマップ」の説明会が開催され、同局の他、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県から防災担当者25名が集まりました。

私と木下防災研究調整役が出席し、ため池の氾濫解析やため池の危険度判定の仕組みのほか、利用できる地図データの特性やため池情報の維持管理など、この技術の導入に関わる様々な質問に答えるとともに、意見交換を行いました。

活発な梅雨前線の影響で大雨に襲われた西日本では、ため池災害も発生しました。ため池DBハザードマップの導入が各地で進むように、今後とも有用性を丁寧に説明し、また、運用面でもしっかりサポートしていきます。

農村総合研究部 広域防災研究チーム 研究員 井上敬資

■地域コーディネーターを育てる・農村計画応用研修の実施

国、県、都道府県水土里ネット等の職員を研修対象者とし、農村計画・農村環境基礎研修(7月5日から3日間:受講21名)と農村計画応用研修(7月7日から8日間:受講11名)を開講しました。

当所の農村計画部と農村環境部の研究職員が講師を務め、農村計画応用研修では、現場から要望の強い「農村景観デザイン実習」、「ワークショップ実習」、「プレゼンテーション技術」などの実践的な講義を取り入れました。

受講生が研修の成果を活かして、地域住民の合意形成を調整する優れたコーディネーターとなり、農村地域を活性化していく大変重要な役割を演じると確信しています。応用研修の様子を動画で一部紹介します。

農村計画部 集落機能研究室 主任研究員 唐崎卓也

(関連URL:動画90秒)

■チーム南西諸島がバイオマス研究の現地検討会を開催

チーム南西諸島とは、農水省委託プロジェクト研究「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発」のうち、バイオマス利用モデルの構築・実証・評価を担当する七つの研究グループの一つであり、農工研、琉球大、沖縄県農業研究センター、NPO亜熱帯バイオマス利用研究センターで構成されています。

当チームは、南西諸島を対象に、サトウキビ廃糖蜜によるバイオエタノール生産や家畜ふん尿によるメタン生産で排出される廃液の液肥としての農業利用、バイオエタノール原料となる資源作物の生産システム、さらにこれらを組み込んだバイオマス利用モデル構築等の研究を行っています。

今年度は、7月1日~2日に沖縄県那覇市で開催し、このプロジェクト研究が終了する平成23年度において目標が達成できるように、各研究担当者が分担する課題の進捗状況を点検しました。

農地・水資源部 農地工学研究室長 塩野隆弘

(関連URL:H21成果情報)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm04_06-03.pdf

■インターンシップ技術講習生の受入れ

農村工学分野を学ぶ大学3年生が、授業の一環として夏休みの期間を利用し、当所に12日間滞在します。受け入れる研究チーム・研究室で指導を受けながら、大学で知識を得ることと社会で知識を活用することの違いを学びます。

当所では3回に分けて(7月26日~8月6日、8月23日~9月3日、9月6日~9月17日)、北海道大学、弘前大学、宇都宮大学、茨城大学、筑波大学、東京大学、明治大学、日本大学、新潟大学、九州大学から男女20名を受け入れます。今後の進路を考える上で貴重な経験になることでしょう。

技術移転センタ-移転推進室

■サマー・サイエンスキャンプの受入れ

この企画は(独)科学技術振興機構が主催し、先進的な研究テーマに取り組んでいる公的研究機関、大学、民間企業の研究所などを会場として、高校生が実験・実習を体験できる合宿プログラムです。

当所には、7月28日~30日に、福井県・北陸高校、茨城県・水戸葵陵高校、愛媛県・松山工業高校、静岡県・浜松学芸高校、山形県・米沢興譲館高校、三重県・国立鈴鹿工業高専から男女6名が参加し、農村総合研究部資源循環システム研究チ-ムの下で、社会の仕組みを変えていくバイオマス利用技術研究の可能性を実感しました。キャンプの詳細は、次号でご紹介します。

企画管理部 情報広報課

7)ズームイン

■キャベツ復興録の編さんをお手伝い

新岩手農協が、地元の特産物であるキャベツの栄光と衰退そして復興の足跡を残し、未来への道しるべになるような「キャベツ復興録」をつくりたいとして、4月に、その指導を当所に要請してきました。

岩手町周辺一帯は、昭和30年代頃はキャベツの大産地でしたが、群馬や長野の産地に押されていったん衰退しました。しかし、キャベツ産地復興を地域振興策に位置付け、まとまった土地の確保、労働力の確保、地域にあった品種の開発という問題を一つずつ克服し、見事に産地復活を果たしました。

この4月には、小学生が参加して、街路のプランターにキャベツを植えるなど、町を挙げてキャベツ特産のPRを始めました。また、キャベツを具材とする焼きうどんが地域興しのシンボルとなり、6次産業化への動きも芽生えています。私は、この地域の取組に弾みが付くように、当地の農業史、食文化史をもとに、地域振興計画等を調査研究し、都市農村交流をすすめるため、復興録の編さんに挑みます。

農村総合研究部 都市農村交流研究チーム 特別研究員 清水克志

8)研究チーム・研究室等のご紹介

◇農村総合研究部地域資源保全管理研究チーム

私たちは、農村にある農地・水・環境などの資源を守りたいと願っています。その中に、農産物の命の源である水を供給し、地域に潤いをもたらしている農業用水路があります。これらの水路の多くが、長年の使用に耐えきれず、漏水などの不具合を生じています。

このような水路を長持ちさせながら使用していくため、専門家でなくても施設の点検を簡単にできる方法や、低コストな維持管理に役立つように、適切な補修タイミングを判断する方法などの研究開発に取り組んでいます。

■農業用水路と紫陽花のステキな関係

7月4日に、福島県いわき市で「第8回あじさい祭り」が開催されました。この祭りは、愛谷用水路(全長18km)の水路敷に、地元の大人や小・中学生にあじさいを植えてもらい、”約330年前の先祖がこの水路を造り、この水路がこの地域を発展させてきた”ことを再認識してもらうという運動(平成14年度に開始。平成17年度に21世紀土地改良区創造運動大賞受賞)が始まりです。今が見頃のあじさいロードを散策してゴミ拾いをした後に、水路のボート下り、川柳大会、金魚すくいなどが行われ、子供も大人も楽しめ、農家と非農家が交流できる企画でした。その運営は、愛谷江筋愛護会、水土里ネット愛谷堰、子供会、PTAなど、多くの地元関係者が支えていました。

技術移転センタ-長 小林宏康

(関連URL:写真)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm04_09-01.pdf

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