農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第3号(2010年6月号)

目次

1)トピックス

◆「科学・技術フェスタ in 京都(6月5日)」に出展

メルマガ5月号でお知らせした「ため池防災情報配信システム」をPRしてきました。来訪者から、「大雨でため池が壊れると怖いですね」、「ため池の危険情報は早く知りたいと思う」、「防災に関わる種々の情報発信が総合化されると良い」などの意見感想をいただきました。フェスタ全体の来場者数は5、121名でした。

農村総合研究部 広域防災研究チーム研究員 井上敬資

(関連URL:写真)
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_1-1.pdf

◆これからの農業用水路を考えよう!

河川の水が集まってくる範囲を流域といいます。農山村の集落は、歴史的に見ると、河川の流れの筋に沿ってつくられ、一つの流域の中では、農林業という人間の営みと自然環境が調和していました。でも、流域の中の自然の役割と仕組みをしっかり理解しないと、人間活動の持続的な発展はありえないと考える人たちが増えています。

私たちは、伊勢湾を対象に、名古屋大学、国土技術政策総合研究所、土木研究所、国立環境研究所、水産工学研究所、養殖研究所と連携し、平成18年度にこの研究を始めました。この研究の趣旨を一般の方々に理解していただくため、6月13日に、三重県の櫛田川流域で現地見学会を開きました。

施設資源部 水源施設水理研究室 特別研究員 皆川明子

(関連URL)

◆国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)シンポで基調講演

タイのINWEPF委員会が、6月17日に、タイの水資源の確保と水環境保全をテーマに、国内外の知識と経験を交換するためシンポジウムを開催しました。主催者から基調講演の依頼があり、農業の水環境形成に果たす役割と水田農業が果たしている水質浄化機能について研究成果を発表しました。

INWEPFは、「食料の安定供給」、「貧困削減」、「持続可能な水利用」、「自然環境との調和」、「農村社会の持続的開発」の実現を目指すため、2003年3月に日本とFAO(国連食糧農業機関)が世界に呼びかけ、2004年11月に設立されました。

農村環境部 水環境保全研究室長 白谷栄作

(関連URL:写真)
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_1-3-2.pdf

◆国際大ダム会議(ICOLD)で日本の技術研究を発表

ベトナムのハノイで5月23~26日に、国際大ダム会議が開催されました。世界には、農業(灌漑)、エネルギー開発、洪水対策等のため、ダム建設に頼らなければならない地域があります。

この会議には53カ国409名の技術者・研究者が集まり、環境への影響が小さく、安全で効率的なダム建設に必要な知見を交換しました。日本からの参加者は51名で、農工研からは堀土質研究室長と私が参加し、それぞれフィルダムと地下ダムの情報を提供しました。

農村総合研究部 地球温暖化対策研究チーム
主任研究員 石田聡

◆カンボジアの河川流域を管理するための技術移転

カンボジアでは灌漑(かんがい:田畑に水を引いて注ぎ、土地を潤すこと)事業が国家主導で実施されています。しかし、内戦の影響もあって、事業を適切に計画、実施、管理する技術者が不足しています。

私は5月16日から6月6日まで滞在し、現地のJICA専門家およびカンボジアの技術者と各地をつぶさに調査しました。そして、地域的な水の分布・出入り・移動等をコンピューターで解析し、期別に使える灌漑水量を推定する数値計算モデルの構築について打合せました。私の研究がカンボジアでも役立つように支援を続けていきます。

農村総合研究部 地球温暖化対策研究チーム長 増本隆夫

(関連URL:写真)
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_1-5.pdf

2)イベント情報

◆東北管内の悩みに答える出前技術相談

7月6日(火曜日)の9時30分~15時30分に、東北農政局庁舎(仙台市)において開催します。農工研の職員18名がつくばから出向き、東北管内の国や県の事業等に関わる様々な技術相談(午前)に答え、農工研が産んだ実用新技術をPR(午後)します。約150名の参加が見込まれています。

技術移転センター 移転推進室

(関連URL:ポスター)
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_2-1.pdf

3)メッセージ

●水土里ネット那須野ヶ原事務局長星野恵美子様より「日本人に最も適した"米"づくりのための技術確立を!」

今年の天気は、例年にもましておかしい。春らしい日が感じられないまま、夏の気候に遭遇したかと思えば、八甲田山や北海道で雪が降った。その後も、気温は極めて冷たく、主食である"米"の生育が心配である。原因は定かでないが、地球規模での温暖化が深刻化している状況に加え、地球上に蔓延する化学物質に犯され、地球が警告を発していることは事実だ。地球上の生物の生存保障が危うい状況にある。

私たち人間はヒト科のヒトという動物だから、自然界の中でしか生きられない。現在の化学肥料や農薬を主体とした慣行農法を改め、土と水と太陽を主体とした自然農法の技術確立が急務と考えている。農工研では、農村景観・生態工学・水文・力学挙動・土質構造・土木地質・浸水被害・水資源保全・水利設計等々様々な研究が行われているが、環境破壊に荷担することなく、命育む本物の米作りのための更なる研究を切に求めたい。

(関連URL)
http://www.nasu-lid.or.jp

4)新しい技術や研究成果の紹介

●洪水の時も安心・無動力止水ゲートの開発

河川とつながっている農業用水路では、洪水時に大量の水と土砂が流れ込みます。そのままでは、水路から水があふれ、災害が発生してしまいます。また、洪水の後に、水路に流れ込んだ土砂を撤去する作業も大変です。

そのため、洪水の時は、水路の入口のゲートを閉め切ります。ただし、中山間地では集落からゲートまで遠く離れていて、大雨の中を、狭く急な道を歩いて増水した川のそばにあるゲートを閉めに行くことは大きな危険です。

そこで私たちは、洪水が水路に入って水路の水位が上昇すると自動的に閉じ、水位が低下すると自動的に開く無動力止水ゲートを開発しました。このゲート開閉構造の独創性が認められ、特許権を取得しました。関心のある方は是非ご相談下さい。

施設資源部水路工水理研究室主任研究員向井章恵

(関連URL)

5)最新の「農工研ニュース」より

◇真水が海水に浮く?淡水レンズを探る

海水には約3%の塩が含まれている分だけ真水よりもちょっと重いので、例えば、コップの中で真水を塩水の上に浮かすことができます。これに似た現象が、周囲を海に囲まれた島の地下で見ることができます。

島に降った雨が地下に浸透すると、島の周囲からしみ込んでくる海水を押しのけて真水の塊まりができます。この形をレンズに見立て、淡水レンズと呼んでいます。島の生活に水は欠かせません。地下に貯まっているレンズ状の淡水の量を的確にしかも効率良く調べることができる方法を開発しました。

農村総合研究部地球温暖化対策研究チーム 主任研究員石田聡

(関連URL)
農工研ニュースNo67記事
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_5-1.pdf

6)水土里のささやき

◇カンボジア派遣JICA専門家長井薫 様より

カンボジアは熱帯モンスーン気候に属しているため、雨季(5月中旬~9月下旬)と乾季があります。雨の降り方は年によって大きく変わるため、農業のでき具合も毎年変わります。人口の約7割が農民なので、水の管理は国家の重要課題です。

農業に必要な水を、どこに貯めて、どのように分配し、どう使えばカンボジアの農業は発展するか。その技術力を育てることが私たちの使命です。しかし日本と違い、雨の量や河川の水量などのデータが乏しく、現場職員の技術力も十分ではありません。

そのため、増本研究チーム長の「分布型水循環モデル」という新しい理論を、当地の厳しい条件において問題解決を図る切り札と位置付けました。関係者の期待も大きく、引き続きご指導よろしくお願いします。

(関連URL)

7)所の動き

◇「農業水利施設のマネジメント工学」を配布・出版

これまで農工研で蓄積してきた農業水利施設のマネジメントに関わる研究情報を体系化し解説して図書にしました。関係機関に配布し、分かりやすいと好評です。一般向けに、(株)養賢堂から発売中です。

農地・水資源部長中 達雄

(関連URL:チラシ)
http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm03_sutomaneannai.pdf

8)研究チーム・研究室等のご紹介

◇農村総合研究部水田汎用化システム研究チーム

米の消費量は年々減少する一方で、消費量の多い麦や大豆の自給率はきわめて低いという日本の農業事情を知っていますか。水田で麦や大豆が生産できれば好都合です。でも、これらの作物は湿気に弱く、水はけが悪い水田で栽培してもうまく育ちません。

そこで私たちは、水田において米だけでなく、品質の良い畑作物をつくることもできるように、排水とかんがいの両方に使える地下水位制御技術や、農村地域に埋もれている未利用資源に注目した低コストな排水改良技術などの研究開発に取り組んでいます。

9)編集後記

4年に一度のサッカーの祭典「ワールドカップ」が開催中です。日本チームは、残念ながらベスト16で敗退しましたが、我々国民に"夢"と"希望"と"感動"を与えてくれました。農工研メルマガも、今回の日本チームの頑張りを良きお手本とし、皆様に愛され、そして号を重ねるごとに益々期待される、そんなメルマガにしていきます。

【編集発行】

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