農村工学研究部門

農村工学研究部門メールマガジン

メールマガジン第15号(2011年6月号)

東日本大震災の復旧・復興支援状況については、ホームページに開設した特設サイトでお知らせしています。

目次

1)イベントのご案内

■コンクリート工学年次大会2011の開催

7月12日~14日に、大阪国際会議場において、日本コンクリート工学会の主催で標記の研究報告会が開催されます。その主要行事として企画されたコンクリートテクノプラザ2011に、農工研から以下の研究成果を出展します。お近くの方は是非お越し下さい(入場料無料、一般入場可)。

  • 無人ロボットによる農業用水路トンネルの調査技術
  • 水路摩耗および粗度係数の簡易計測方法
  • ワイヤレスコンクリートセンサ
  • 農業水利施設の新たな補修・補強技術

日本農業を支える水路の総延長は約40万km(地球10周分)に及びます。これらは1960~1990年代に建設されたものが多く、コンクリートや目地材の劣化等が問題になってきています。そのため、農工研では産学官連携の枠組みで、農業水利施設の適切な更新や維持管理に役立つ技術を開発してきました。詳細はお問い合わせ下さい。

施設工学研究領域 施設機能担当上席研究員 中嶋勇

(関連URL)http://www.jci-net.jp/rally/2011/

2)技術なんでも相談

■重いコンクリート構造物がなぜ地震液状化で浮上するの?

匿名希望

●お答えします。

施設工学研究領域 土質担当研究員 有吉充

物体の全体もしくは一部が液体中に浸っているとき、その物体が排除した体積に相当する液体の重さに等しい浮力(軽くなる力)を受けます。これはアルキメデスの原理です。

農業用パイプライン工事では管内に混入した空気を排除するための空気弁工が必要であり、下水道工事では維持管理用にマンホールが必要です。このような重いコンクリート構造物が液状化で浮上した写真などをご覧になったでしょうか。アルキメデスの原理に従えば、構造物の重量よりも大きな浮力を受けたときに浮上します。

液状化すると、地盤は土粒子と水の混合液体となり、水の重さの約1.8倍の密度を持つため、地中の構造物はより大きな浮力を受けます。関連資料に示した空気弁工は、東日本大震災の強い揺れを受けて浮上し、地表とは1mほど段差が生じていました。試算の結果、道路表面から約1.4mよりも浅い位置に地下水面が存在したと考えられました。

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm15_02-01.pdf

■全国の暗渠排水の施工実績を教えて下さい。

匿名希望

●お答えします。

農地基盤工学研究領域 水田高度利用担当
上席研究員 原口暢朗

暗渠排水の施工面積の実績は、農林水産省農村振興局が発行している「農業基盤整備基礎調査報告書」で知ることができます。平成19年8月発行が最新版です。毎年度の暗渠排水施工面積が、都道府県別に整理されています。この報告書は、国会図書館または農林水産省の図書館で閲覧できます。

ご紹介した報告書によると、全国の暗渠排水の施工面積は、ここ10年間ではおよそ15,000ha-20,000ha/年です。平成17年度実績を見ると、全国15,740ha(100%)のうち9,914ha(63%)が水田でした。一方、畑地の暗渠排水5,826ha(100%)のうち5,756ha(98.8%)は北海道の施工実績であり、際だった特徴を示しています。

(関連資料)

3)最新の「農工研ニュース」より

■農地の排水性と地力を同時に改善 -カッティングソイラ工法-

5月私どもが開発した低コスト土層改良工法(カッティングソイラ工法)は、北海道の農地を研究フィールドとし、試行錯誤によって産み出された研究成果です。平成22年度に、北海道農業土木協会においてその有用性が認められ、奨励賞が授与されました。

現地で入手できる堆肥やワラなどの有機物を下層土に蓄積することで、1.心土破砕により排水性を高め、2.地力の改善により増収をもたらし、3.土壌中の有機炭素の蓄積により温室効果ガス削減にも寄与します。今後、全国にPRしていく予定です。実証試験の模様を動画でご紹介します。詳しくはお問い合わせ下さい。

農地基盤工学研究領域 水田高度利用担当
主任研究員 北川巌

(関連資料)

4)農村工学研究所の動き

■東日本大震災に係る技術支援報告会を開催

標記報告会の開催(平成23年5月31日、東京大学弥生会館)をご案内したところ反響が大きく、公示してから約10日間で定員300名に達しました。当日、メインホールに入場できない方々のため、別会議室とロビーにてライブ中継を行いましたが、ご不便をおかけ致しました。

震災後約2ヶ月間、農工研は被災した施設の応急措置や復旧に対する現地支援要請への対応に追われました。そのため、本報告会の開催が5月末に延びましたが、復旧・復興に向かって情報を得られる良いタイミングであったと好評でした。また、被災地の情報が得られ難い関東での開催にも好意的な感想が寄せられました。

東日本大震災の復旧・復興に係る農工研の技術支援の取り組みについては、今後、ホームページに開設した特設サイトを通じて逐次お知らせして参ります。

企画管理部 業務推進室 小川茂男
(E-mail : nkk-unei◎ml.affrc.go.jp)
※メールを送信する際は「◎」を「@」にしてください

(関連資料)

5)研究ウォッチ

■GISを活用した災害実態調査

近年、地理情報システム(GIS)が広く活用されるようになってきました。私が初めてGISを手にしたのは平成11年です。その当時はGISとGPSが違うものであることさえ知らなかったのですが、今では研究に欠かせないツールとして様々な調査でGIS(ArcView 3.2を使用)を利用しています。

平成17年~20年に、近畿中国四国農業研究センターにおいて、平成16年10月の台風23号によるため池の決壊、傾斜地樹園地の斜面崩壊、パイプハウスの強風被害などを研究対象として防災研究に取り組みました。

以下の資料で、香川県内におけるため池の決壊の実態調査にGISを活用した事例をご紹介します。

農村基盤研究領域 資源情報担当上席研究員 福本昌人

(説明資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm15_05-01.pdf

6)農村の草花

■水辺を彩る濃緑の葉と黄色の花 -コウホネ-

今月は、ため池や水路にみられ、ビオトープなどにも植えられることの多い水生植物の"コウホネ"を紹介いたします。葉は水面に突き出て花は黄色ですが、コウホネは睡蓮(スイレン)の仲間です。皆さんは、この植物がコウホネと呼ばれる由来を知っていますか。

農村基盤研究領域 資源評価担当主任研究員 嶺田拓也

(関連資料)http://www.naro.affrc.go.jp/nire/mail_magazine/files/mm15_06-01.pdf

【編集発行】

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