東北農業研究センター

水田作移行低減グループ

農業用水中の放射性セシウムの動態解明及び玄米への影響を調査中の試験圃場。 水口と水尻に水量を測定する堰、農業用水をサンプリングする自動採水器などを設置している。

当グループでは主に次のような研究を行っています。

  1. 土壌特性や水稲への移行メカニズムに基づく持続的な放射性物質の移行抑制対策技術の開発

    水稲においては、土壌中の交換性カリ含量を25mg/100gとする放射性セシウム吸収抑制対策が、福島県をはじめとする放射性セシウムに汚染された地域で実施されています。この一律的なカリ増施による吸収抑制対策から、土壌中の放射性セシウム濃度レベルや土壌タイプ毎の吸収リスクに応じたカリ施肥管理への移行が求められています。そこで、土壌からの玄米への放射性セシウム移行を抑制するための適正な交換性カリ水準を設定するため、汚染程度や土壌タイプが異なる現地圃場において放射性セシウムの移行を調査する栽培試験を実施しています。また、水稲体内での放射性セシウムの分配と土壌中の交換性カリ含量の関係など、カリとセシウムの吸収・分配のメカニズムの解明にも取り組んでいます。

    さらに、カリによる吸収抑制対策を行っているにもかかわらず土壌中の交換性カリが低下しやすい圃場など、放射性セシウムが玄米に移行しやすい事例が認められます。そこで、これらの圃場における土壌特性などの要因解明と移行抑制技術の開発に取り組んでいます。

  2. 農業水利施設・水田における放射性物質の連続モニタリング技術の開発と動態解明

    被災地での営農再開に向け、農業用水から水田への放射性セシウムの流入を抑制するとともに、水稲への影響を明らかにすることが求められています。そこで、水田内への放射性セシウムの流入を防止するため、農業施設内に流入する水の放射性セシウム濃度等を監視するシステムを開発し、営農再開が期待される地域での運用を目指しています。また、水田内へ流入する放射性セシウムの存在形態の変化など物質動態を観測し、農業用水による水稲への影響の解明に取り組んでいます。

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