中央農業研究センター

所長室より --農業法人における人材育成のポイントを刊行(その4)-(数値データの取得と活用)--

パンフレット「農業法人における人材育成のポイント」(https://fmrp.dc.affrc.go.jp/publish/management/HRD_Point/)では4つの経営事例を紹介していますが、これらの農業法人はいずれもJGAP認定農場です。これは、GAP(農場工程管理)に取り組む中で、農産物の販売対応や農薬の誤使用、農作業事故の防止といった側面に加えて、責任者の設置など組織体制の整備を通して従業員の経営改善意欲を喚起するという機能も持っているためです。
このようなGAPに取り組む中では、様々な記帳を行うことが進められますが、その経営記録を人材育成に活用する活動も進められています。
島根県雲南市の(有)だんだんファーム掛合では、生育状況の記録や作業記録などのデータ解析をもとにした栽培管理を行い、情報の共有化を進めるとともに、それらを使って若手社員の教育を実施しています。
具体的には、JGAPの認証に必要とされる記録以外に、a.作業時間、b.生育データ、c.病害虫の被害程度・品質、d.ガス・水道・電気・天候などの情報も記録することにしました(図13、図14を参照。なお。この他に、温度、湿度、水温、CO2、日射量も計測)。そして、これらのデータを社員全員で共有し、それらをもとに、今後の改善目標として「作業の効率化」、「1作当たりの収量向上」、「光熱費の削減」の3つを摘出しました。
だんだんファームでは、この中の「1作当たりの収量向上」を進める際に、収量の多い少ないに関わらず作業時間や資材の投入量は変わらないという結果であったことから、生育が早い品種から重量がとれる品種に変更するとともに、収量向上に向けて社員間で意見を出し合い、定植時点での苗の大きさがその後の生育状況に影響していることや、収量向上に適した定植時の苗の大きさを見出しました。その結果として10a当たり収量は、2007年と2014年を比較し、ネギで80%近く、ホウレンソウやミズナでは20~30%増加しました。
だんだんファームでは、正社員だけでなく、パート従業員の意欲向上にも取り組んでおり、こまめな情報共有とパート従業員も交えた作業改善を進めています。そのため、毎週月曜10時の休憩時間に全員が集まり、朝礼と併せて、その場で1週間の作業計画、市況、収穫物の品質の状況など、できるだけ詳細な情報を従業員全員に伝えるようにしています。また、作業内容の改善についてはパート従業員も交えて実施してきており、全員が色々なアイデアを出すように努めています。このようなデータに基づいた作業速度の目安設定や、パート従業員が一つだけではなく様々な作業を遂行できるようにした結果、2007年から2014年にかけて労働時間は約20%削減されました。これらの具体的な内容については上記のパンフレットを参照して下さい。
近年、ICTを活用して様々な経営データ、栽培データが収集されるようになりました。経営運営の効率化という観点から重要な点は、そのような多数のデータを経営改善にどう活かしていくかです。そのためには、このだんだんファームの事例に見られるように、現状を客観的に把握し、それら解析結果を従業員、作業者全員で共有するとともに、具体的な改善策の構築に向けて積極的な提案を出し合っていくことが望まれます。また、このことは、従業員の経営改善に向けた動機付けとなり、人材育成対策としても機能していくことになります。この点では、ICTも、このような人材育成の観点から利用していく意義があると言えるでしょう。

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