中央農業研究センター

育種素材開発・評価グループ

水稲の生育は、気象条件や栽培管理等の環境的要因により大きく変化し、収量・品質が影響を受けることが知られています。水稲には多くの品種があり、その品種が持つ遺伝的要因によって、環境に対する反応が異なります。当研究グループでは、様々な方法で遺伝的要因を変化させることにより、環境変化に対応できる育種素材の作出を行っています。
近年は、夏期の高温による登熟障害が頻繁に発生しており、高温登熟性に優れる育種素材の開発が急がれています。そのために1)日本型イネ以外の遺伝資源が持つ高温登熟性に優れた遺伝子の特定、2)高温での登熟種子中で特異的に発現量が変化する遺伝子の解明と、その発現量を変化させることによる高温登熟性の向上、3)白未熟粒の発生を引き起こす活性酸素を消去する脂質代謝関連遺伝子の解明による高温登熟性の向上、4)生育調節ホルモンの応答反応調節および投与によるデンプン蓄積機能の向上等により、高温登熟性を調節する遺伝子の同定と高温登熟性に優れた育種素材の開発を行っています。
また、温暖化と同時に気象の変動幅も拡大しており、低温障害も起こりやすくなっています。特に、多収性に優れた熱帯起源のインド型稲は、春先の低温により、発芽・苗立ちの阻害が発生します。そこで、生育初期の低温耐性に優れた遺伝子を探索しています。
加えて、デンプンやタンパク質が種子に蓄積する過程は、環境要因によらず、すべての条件下で高収量・高品質を得るために重要です。光合成により合成された糖は、茎を通って転流し、デンプンとして種子に蓄積します。その制限要因を明らかにし、取り除くことによって転流効率を向上させ、多収性品種育成を目指しています。逆に転流を途中で止めることにより、茎葉に糖が蓄積した稲を作出することが可能であり、バイオエタノールや飼料生産に利用することも可能になります。また、タンパク質含量は、窒素施肥量と関係します。多収や環境ストレス耐性の強化には、窒素肥料の投入が必要ですが、反面、食味や加工適正が低下します。そこで、タンパク質等の成分含量を制御する遺伝子の機能解析を行い、多収と高品質が両立する育種素材の創出を行っています。
このように、品種の持つ様々な性質の基となる遺伝子の単離・解析研究を行うことにより、どのような環境においても収量・品質に優れる育種素材の開発を目指して研究を行っています。

リン脂質代謝酵素(Phospholipase :PL)の改変による高温登熟条件下での白未熟粒発生程度
リン脂質代謝酵素(Phospholipase :PL)の改変による高温登熟条件下での白未熟粒発生程度
WTは親系統の日本晴。PL1-KO、PL2-KO、PL3-KO、PL4-KOは、リン脂質代謝酵素を破壊した変異系統。 PL1/PL2-KOとPL3/PL2-KOは、その集積系統。

メンバー

法人番号 7050005005207