中央農業研究センター

稲育種グループ

日本人は、1960年代には一人あたり年間120kgの米を消費していましたが、消費量は右肩下がりとなり、現在では年間60kgを割り込む水準となっています。日本全体の米消費量も年に1%ずつ減少しており、面積にして8万haもの水田が毎年余剰となっている状況です。一方、外食・中食産業で消費される米の割合は年々増加しており、現在では消費量の3割を占めるに至っています。当グループでは、家庭で消費される良食味米の品種育成だけでなく、食味・収量性・耐病虫性を向上した外食・中食産業の需要に応える品種の育成に取り組んでおり、早生・多収・良食味の「つきあかり」を育成しました。また、外食・中食産業における需要の幅は広く、カレーと寿司では求められる特性が全く異なります。そのため、用途に応じた特性を持つカレー用品種「華麗舞」、寿司用品種「笑みの絆」、イタリア料理リゾット用品種「和みリゾット」などの品種も育成しました。加工用品種についても、米麺に適した高アミロース品種「越のかおり」、ソフトタイプせんべいの加工に適した低アミロース品種「亀の蔵」、かき餅の加工に適した糯品種「ゆきみのり」、和菓子に適した糯品種「ふわりもち」などの品種を育成しており、これらのさらなる改良や新たな特性を持つ品種育成に取り組んでいます。他にも、年間1000万トンも輸入されている飼料用トウモロコシを国産の試料で代替するために飼料用米の作付けが推進されていますが、当グループでは多収品種の育成に取り組み、800kg/10aを超える収量性を持つ「北陸193号」などの品種を育成し、飼料用米の普及拡大に貢献しています。
品種育成は、交配・選抜・評価を繰り返しながら10年単位の時間をかけて進めていく作業ですが、イネの全塩基配列の解明やゲノム選抜手法の開発により、選抜効率の向上や育成にかかる年限が短縮され、新たな育種の時代に突入しています。当グループでも農研機構のネットワークを活用し、ゲノム選抜手法を取り入れながら収量性・食味・耐病虫性・高温耐性などの向上に取り組むと同時に、これまで育成された品種から有用な遺伝子を同定・活用するための技術開発を進めています。今後も、幅広いニーズに合わせた品種の育成と育成を迅速に進めるための技術開発、基礎から現場までをターゲットとした研究に取り組みます。

メンバー