食品総合研究所

栄養機能ユニット

役割

食品に含まれる主要栄養素(糖質、脂質、たんぱく質、無機質)は生命現象を営むために必要不可欠なエネルギー源や生体構成成分の補給としての役割(一次機能)に加え体調のリズム調節や疾病の予防・回復など、健康を維持する三次機能を持っています。栄養素の起源(例えば植物由来であるか動物由来であるか)によって一次および三次機能の効力は異なっています。また、農林水産物中には体調調節機能を持つ種々の微量成分も含まれています。この研究室では主に動物実験により種々の食品、栄養素・食品成分およびその組み合わせが脂質・エネルギー代謝に与える作用とその発現機構を分子レベルで解明し、循環器性疾患・肥満等の生活習慣病の予防に有効な食品や食生活の提案を目指した研究に取り組んでいます。

主な研究テーマ

肝臓の脂質代謝制御機構の解明

肝臓は体全体の脂質代謝の制御に中心的役割を果たす組織です。肝臓の種々の代謝系の中で脂肪酸酸化系と脂肪酸合成系の変化は肝臓からのリポたんぱく質分泌に影響を与え血清脂質濃度を決定する大きな要因であることが明らかにされています。この研究では種々の栄養素・食品成分による両代謝系の変化および両代謝系を制御する転写因子の挙動変化を系統的に解析し、その生理発現機構の分子レベルでの解明を目指した解析を行っています。今までに、大豆食品、種々多価不飽和脂肪酸、大豆たんぱく質、イソフラボンおよび共役リノール酸などの食品成分が両代謝系に関与する酵素の発現に大きな影響を与えることを明らかにしてきました。さらに、最近の研究で魚油と大豆タンパク質の組み合わせにより、相乗的な脂質代謝改善作用が発揮される(下図)など異なった食品成分の組み合わせにより生理作用の相加的作用が期待される事実なども分かってきました。このような研究結果は健康に資する食品・食事の提案に資するものと考えています。

魚油と大豆タンパク質の同時摂取の図1魚油と大豆タンパク質の同時摂取の図2

図:大豆タンパク質と魚油を同時摂取は、脂肪酸合成系の抑制と脂肪酸酸化系の活性化により血清脂質濃度を低下させる

DNAマイクロアレイを用いた食品成分や食品の機能性の解明

DNAマイクロアレイは、大規模スケールで遺伝子発現の解析することができます(数千から数万遺伝子単位)。その結果、多くの遺伝子の発現変化を同時に観察することが可能になりました。この研究では、DNAマイクロアレイ解析により、食品成分や食品そのものの機能性を評価する方法を開発しています。食品やその成分が動物での代謝変化にどのように関わっているかを調べるため、まず、動物(ラットやマウス)に調べたい食品成分や食品を含む食餌を摂取させ、特定の臓器で発現している遺伝子を解析します。その解析のカギとなるのは、生データの標準化と適切な統計解析法です。これらの研究で得られる成果は、食品成分や食品が有する機能性の総合的な働きを理解するために役立つものです。

DNAマイクロアレイ解析方法の概要

生活習慣病に関わる新規機能性成分の探索

その原因を生活習慣に由来する生活習慣病は現在国民にとって重大な病気となっており、大きな病気を引き起こす病気として考えられております。食品中に、このような病態に効果のある成分がこれまで多く見つけられており、有効な成分を多く含む農産物や食品をとることよって、生活習慣病を予防軽減しようと様々な食品が開発されております。特に高血圧、糖尿病、高脂血症、アレルギー等の病態に関与する食品成分に関して、伝統的な素材から地域的に特徴のある素材まで様々な食品から有効な成分の探索を継続しています。

メンバー

ユニット長
八巻 幸二(やまき こうじ)/専門:食品機能

主任研究員
高橋 陽子(たかはし ようこ)/専門:栄養化学、食品機能学

主要成果

原著論文

  • 高橋陽子,小西智一;DNAマイクロアレイ解析を活用した大豆の機能性評価,食品総合研究所研究報告,77, 25-32 (2013)
  • Y. N. Sreerama, Y. Takahashi, K. Yamaki; Phenolic antioxidants in some vigna species of legumes and their distinct inhibitory effects on α-glucosidase and pancreatic lipase activities. Journal of Food Science, 77(9), C927-C933 (2012)
  • D. Bayarsaikhan, M. Ohnishi-Kameyama, N. Shirai, Y. Takahashi, K. Yamaki; Inhibition of angiotensin-converting enzyme by components of traditional mongolian fermented milk products. Food Science and Technology Research. 17(6), 567-572 (2011)
  • Y. Takahashi, T. Konishi; Tofu (soybean curd) lowers serum lipid levels and modulates hepatic gene expression involved in lipogenesis primarily through its protein not isoflavone component in rats. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 59(16), 8976-8984 (2011)
  • Y. Takahashi; Soy protein and fish oil independently decrease serum lipid concentrations but interactively reduce hepatic enzymatic activity and gene expression involved in fatty acid synthesis in rats. Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 57(1), 56-64 (2011)
  • 高橋陽子;凍り豆腐がラット肝臓でのコレステロール代謝に及ぼす影響,食品総合研究所研究報告,75, 33-38 (2011)
  • Y. P. Zhu, K. Yamaki, T. Yoshihashi, M. Ohnishi-Kameyama, X. T. Li, Y. Q. Cheng, Y. Mori, L. T. Li; Purification and identification of 1-deoxynojirimycin (DNJ) in okara fermented by Bacillus subtilis B2 from Chinese traditional food (Meitaoza). Journal of Agricultural and Food Chemistry. 58(7), 4097-4103 (2010)
  • T. Yoshihashi, T. T. D. Huong, P. Tungtrakul, S. Boonbumrung, K. Yamaki; Simple, selective, and rapid quantification of 1-deoxynojirimycin in mulberry leaf products by high-performance anion-exchange chromatography with pulsed amperometric detection. Journal of Food Science, 75(3), C246-C250 (2010)
  • K. Yamaki, M. Goto, Y. Takano-Ishikawa; Inhibitory effects of fucose-related sugar compounds on oxidised low-density lipoprotein uptake in macrophage cell line J774.1, Food and Agricultural Immunology, 20(4), 355-362 (2009)
  • Y. Takahashi, T. O. Odbayar, T. Ide; A comparative analysis of genistein and daidzein in affecting lipid metabolism in rat liver, Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition. 44(2), 223-230 (2009)

特許

  • 八巻幸二、石川祐子:動物の血管透過性の高感度迅速測定方法、2005-55344 2005年3月公開