食品総合研究所

食品衛生ユニット

役割

「農場から食卓まで」の食品衛生向上のための役割と取り組み
(Our missions and contributions for the improve of food hygiene from farm to table)

食品の微生物学的安全性の確保のためには、フードチェーン(生産・加工・流通・消費)の各段階において、科学的知見に基づいた、適切な衛生管理が求められます(Codex委員会 「食品衛生の一般原則」、「食品安全基本法」)。そのためには、食品関連事業者・行政機関(国・地方自治体)および研究機関(大学・都道府県立研究機関および研究独法)が連携して、「科学的根拠に基づいた食品衛生管理」に取り組む必要があります。また消費者には「冷静に、食品安全に関する情報を正確に理解すること」が期待されます(一色賢司「食品安全のこれから」 [スライド])。

そこで、本研究室では「国民の食中毒リスク低減」を目的として、科学者の立場から
1. 「食品中の病原菌の迅速検出」
2. 「食品中の病原菌の殺菌・増殖防止」
3. 「食品製造過程における一般衛生管理の向上」
関する調査・研究を遂行するとともに、農水省が実施する「有害微生物リスク管理」や「外国の食品生産現場の調査」に助言・協力を行っております。

また、食品関連事業者の方にとってより身近な存在である、都道府県立の食品関連研究機関と共同で、「地域特産食品の微生物制御」等の研究を実施するとともに、「依頼研究員制度」等による地方公設研究機関職員の受け入れを行っております(:徳島県)。

微生物測定装置メーカーや、生食野菜加工食品製造業者等との共同研究実績もございます。ご興味をお持ちの食品関連事業者は「技術修得研究員制度」のご利用が便利かと存じます。

(注意) 食品関連事業者および一般消費者からの、食品安全関連問題全般あるいは個別具体的事例に関する質問・相談につきましては、お近くの保健所、都道府県立試験研究機関あるいは「内閣府 食品安全委員会」、「(社)食品衛生協会」、「(社)技術士会」の方で受け付けておりますので、そちらをご利用ください(直接、研究室にお電話いただきましても、必ずしも対応できる保証はございません)。

この他、食品安全リスクコミュニケーションあるいは国際協力の観点より、以下のようなサービスも承っております。

  • インターン制度」「連携大学院制度」を利用した大学(院)生の研修・教育(2週間~2年間程度。大学の先生を通じてご依頼ください)。
  • 「国連大学キリン・フェローシップ」「JSPS外国人特別研究員制度」「JICA長期研修員制度」を利用した外国人研究者の受け入れ(一ヶ月~1年間)。
  • JICA短期研修員(4ヶ月)を対象とした、「微生物学的食品安全性コース」の講師(JICA主催)。
  • 公設機関での出張講演や 一般消費者(団体)向け学習会講師 (本務に支障のない限り、積極的に対応しております。お問い合わせよりご相談下さい。)

主な研究テーマ

食品に付着する微生物の全てが腐敗や病気を引き起こすというわけではなく、また「腐敗を引き起こす菌=食中毒の原因」というわけでもありません。そのため「見た目・匂い・味」で、食品中に病原菌がいるかどうかは、必ずしもわかりません。そのため、食中毒の予防、あるいは食品の腐敗防止のためには、これらの菌をはじめから食品に「つけない」「増やさない」あるいは「殺す」という3原則を守ることが重要であるといえます。

本研究室では現在、農水省からの委託プロジェクト研究 『生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発』(平成20~25年度)のうち、「病原微生物の迅速検出技術および効果的な殺菌・制御技術の開発」(検出・制御)チームの中核機関の一つとして、研究を進めております。その内容を簡単に説明すると、「食品についた食中毒原因菌を早く・安く・簡単に見つけ」(←菌をつけない)、「それでも付いてしまった菌を『増やさない』『殺す』ための方法の確実性について再検討を行う」ということになります。「製造現場で使える技術」の開発を目指しておりますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

なお、本研究室では「食品の保蔵(腐敗防止・消費期限延長)」を第一目的とする研究は担当しておりませんが、食中毒発生防止を目的とした食品衛生管理の副次的効果により、そのような目的が達成されることは、当然に期待されうることです。

(これまでの研究成果)

1. 「食品中の病原菌の迅速検出・同定」 : 食中毒の発生を未然に防止し、また出荷停止・回収による損失を減らすために、「早く」「確実に」病原菌を検出するための研究を行っております。

2. 「食品中の病原菌の殺菌・増殖防止」 : 食品添加物を使用した、生食食品の表面殺菌や微生物制御の研究を行っております。

3. 「食品製造・流通過程における一般衛生管理」 : より簡便かつ安価な自主衛生管理手法の開発を行っております。

4. その他 : 農水省等からの依頼により、海外の衛生管理状況に関する現地調査や、農業生産現場における微生物検出・制御に関する研究を行っております。

  • 輸入農産物に関する海外調査(台湾・ベトナム)
  • 米国のGAP(適正農業)・HACCP導入実態に関する調査

(現在、興味のある研究テーマ) :

  • 新規殺菌剤(亜塩素酸水・オゾンナノバブル水)の、生食野菜付着細菌に対する殺菌効果の確認・評価。
  • 食品に対する次亜塩素酸ナトリウム殺菌の利点と欠点の明確化と、使用条件の最適化。
  • 中小食品工場でも適用できる、「早く」「安く」「簡単な」自主衛生検査あるいは殺菌手法の検討と、作業現場への導入。
  • リスク管理措置導入の効果を測定するための、生産環境あるいは生食野菜に適用可能な衛生指標微生物の洗い出し。
  • 食品表面近傍のミクロ環境における、病原菌に対する殺菌剤の効果の測定系の開発。

メンバー

ユニット長
稲津 康弘(いなつ やすひろ)/学士(法学)・修士(工学)・博士(農学) /製菓衛生師、公害防止管理者(1種水質)など
担当: 化学物質による微生物制御、抗菌物質・微生物の分離・同定
主任研究員
川崎 晋(かわさき すすむ) /博士(水産学)
担当: 食品中の微生物の簡易迅速検出
研究員
細谷 幸恵(ほそたに ゆきえ)/修士(水産学)
担当: 食品中の微生物の同定、食品中の微生物の挙動調査
非常勤職員
4名
学生・研修生
Rithy Chrun(りってぃ ちゅるん)
 国連大学キリンフェロー / カンボジア

*非常勤職員等の求人がある場合には、「採用情報」にて公募を行います。

 

主要成果

学術論文

  • Kawasaki et al. 2008. "Species-specific identification of Campylobacters by PCR-restriction fragment length polymorphism and PCR targeting of the gyrase B gene." Appl Environ Microbiol. 74(8): 2529-33
  • Okahisa et al. 2008. "Evaluation and control of the risk of foodborne pathogens and spoilage bacteria present in Awa-Uirou, a sticky rice cake containing sweet red bean paste." Foodborne Pathog Dis. 5(3): 351-9
  • Bari et al. 2008. "Hot water treatments to inactivate Escherichia coli O157:H7 and Salmonella in mung bean seeds." J Food Prot. 71(4): 830-4
  • Nei et al. 2007. "Effect of temperature and gas composition on quality of garlic bulbs "Acta Hort. (ISHS) 746: 77-82

機関誌、行政報告書、学会誌発表の総説および一般誌掲載の総説

  • 稲津ほか. 2008. 「ベトナムにおける食品安全確保のための取組み」 食総研報. 72. 93-106
  • 川崎. 2008. 「遺伝子検査導入時における技術的問題点とその解決」 食品工業. 51 (16). 20-26
  • 稲津ほか. 2007. 「天然添加物による殺菌・静菌技術」 日食科工誌. 54 (10). 425-35
  • Inatsu et al. 2007. "Application of acidified sodium chlorite prewashing treatment to improve the food hygiene of lightly fermented vegetables" JARQ. 41 (1). 17-23
  • 川崎. 2007. 「自主衛生検査における迅速微生物検査技術の活用」 食品工業. 50 (16). 20-25
  • 川崎. 2007. 「食品製造現場におけるタンパク質ふき取り法による自主衛生検査の活用とその有効性」 月刊HACCP. 13. 32-40

単行本

  • 稲津. 2009. 「生鮮食材の微生物危害要因 (1)農産物」『フレッシュ食品の高品質殺菌技術』(サイエンスフォーラム)
  • 稲津. 2009. 「洗浄殺菌・除菌剤の選択と使用指針」『カット野菜品質・衛生管理ハンドブック』(サイエンスフォーラム)
  • 稲津. 2009. 「食品の殺菌・抗菌・静菌技術」『光琳選書(9)食品と微生物』(光琳)
  • 稲津. 2008. 「有害微生物の制御技術」『食品技術総合辞典』(朝倉書店)
  • 川崎. 2008. 「衛生指標菌と公定法による微生物検査」『食品技術総合辞典』(朝倉書店)
  • Fratamico and Kawasaki. 2008. "Applications of the polymerase chain reaction for detection, identification, and typing of food borne microorganisms." In "Microbial food contamination" (CRC Press)

特許

  • 堀越ほか. 「微生物の多重検出方法」 国開WO2005 / 064016(特願2003-435943; 2003年12月26日出願)
  • 川本ほか. 「飲食品等の品質判定方法およびそのインジケーター」 特開2005-87044 (2003年9月16日出願)

* 最新の研究成果はIAFPIFT等主催の国際研究集会、あるいは日本食品微生物学会日本食品衛生学会日本食品科学工学会などが主催する国内研究集会で発表しております。この他、米国USDA関係者や、バングラディッシュ科学アカデミーと日本が実施している二国間研究集会にも毎年、参加しております。