食品総合研究所

非破壊評価ユニット

役割

非破壊評価ユニット(旧非破壊評価研究室)は、1986年12月に設置されて以来、近赤外分光法の食品への応用研究および普及に関し、先導的役割を果してきました。近赤外分光法は対象物に近赤外光を照射し、対象物に含まれる化学成分の分子振動によって吸収される光の程度を測定することによって、対象物の化学成分を迅速に測定する方法です。これまで、果実糖度の非破壊測定、サトウキビの迅速品質評価、穀物の一粒成分分析、残留農薬の迅速測定など多くの成果を上げてきました。最近では遠紫外光など、他の波長帯域を使った分光分析法の開発と応用にも注力しています。また非破壊評価ユニットでは定期的に近赤外講習会やセミナーを開催し、技術の普及を行っています。

 

主な研究テーマ

 食品の品質特性の非破壊測定 

近赤外分光法を用いてタンパク、糖質、脂質、水分など、成分や特性(品質特性)を非破壊的且つ迅速に測定する方法を開発しています。これまでにモモ・温州ミカンの非破壊糖度測定技術、マンゴの樹上品質評価技術において大きな成果を上げてきました。評価式(検量モデル)は多変量解析法によって半自動的に得られるため、これまではスペクトルの詳細について議論されることは希でした。当ユニットでは水素結合などの分子間相互作用の観点からスペクトルを解釈することで、より的確で詳細な分析を目指しています。
 
樹上でのマンゴスペクトル測定   ハンディタイプ分光器による樹上でのマンゴの測定                    

 食品の血糖値応答性の近赤外分光法による測定 

生活習慣病の予防の観点から、食品の血糖応答性に対する評価法の一つとしてグリセミックインデックス(GI)が注目されています。しかしGI値を決定するには長時間にわたって複数回の採血を必要とするため、簡便な方法が求められています。血液成分の非侵襲測定が可能な近赤外分光法を利用したGI値のモニタリングシステムの開発を行っています。
グリセミックスインデックス(GI)の定義 グリセミックスインデックス(GI)の定義

非侵襲血糖値測定専用に開発した分光器 非侵襲血糖値測定専用に開発した分光器

 

 遠紫外分光法の応用 

遠紫外光(波長の極端に短い紫外光)を用いた単純な分子のスペクトル分析応用を行っています。赤外分光の分野でよく使われる減衰全反射分光法を応用し、独自に装置を開発しました。たとえばこれにより、わずかにイオンの溶存したミネラルウォーターの判別などが容易になります。洗浄水などの機能水の評価に役立てようとしています。
遠紫外分光システム 遠紫外分光システム

 表面プラズモン共鳴センシングの開発 

金属表面の自由電子と光の共鳴である表面プラズモン共鳴(SPR)が化学センサーとして普及していますが、これを分光技術と組み合わせ、より多くの情報が得られる装置を開発しています。たとえば近赤外スペクトルを高感度化する技術や、非金属を用いた新しいSPRセンサー原理の開発・応用を行っています。
酸化物膜を利用したSPRセンサー
酸化物膜を利用したSPRセンサー。右はグルコース濃度に対するスペクトル応答。

 

メンバー

主任研究員
池羽田 晶文(いけはた あきふみ)/専門:物理化学
塚越 芳樹(つかごし よしき)/専門:情報工学

契約研究員
羅 璇(ら せん)/専門:農業工学
上平 安紘(うわだいら やすひろ)/専門:非侵襲血糖値測定

 

主要成果

原著論文

  •  Feasibility of rapid in vitro estimation of haematocrit in cattle by using short-wavelength near infrared spectroscopy, Akifumi Ikehata, Xuan Luo, Kunio Sashida, Shanji Park, Tsutomu Okura, and Yutaka Terada, J. Near Infrared Spectrosc., 22(1), 11-17 (2014).
  •  Pulse Laser Photolysis of Aqueous Ozone in the Microsecond Range Studied by Time-Resolved Far-Ultraviolet Absorption Spectroscopy, Takeyoshi Goto, Yusuke Morisawa, Noboru Higashi, Akifumi Ikehata, Yukihiro Ozaki, Anal. Chem., 85(9), pp 4500–4506 (2013).
  •  Oxide Surface Plasmon Resonance for a New Sensing Platform in the Near-Infrared Range, Hiroaki Matsui, Wasanthamala Badalawa, Akifumi Ikehata, Hitoshi Tabata, Adv. Opt. Mat., 1(5), 397-403 (2013).
  •  Far-Ultraviolet Spectroscopy in the Solid and Liquid States: A Review, Y. Ozaki, Y. Morisawa, A. Ikehata, N. Higashi, Appl. Spectrosc. 66(1), 1-25 (2012).
  •  遠紫外分光法による水および水溶液の分析(総説), 池羽田 晶文,後藤 剛喜,森澤 勇介,東 昇,尾崎 幸洋, 分析化学, 60(1), 19-31 (2011).
  •  短波長域を用いた近赤外分光法による非侵襲血糖値測定装置の開発とその応用,上平安紘,足立憲彦,池羽田晶文,河野澄夫,日本食品科学工学会誌, 58(3), 97 -104, (2011)
  •  Factors affecting the accuracy of non-invasive blood glucose measurement by short-wavelength near infrared spectroscopy in the determination of the glycaemic index of foods, Yasuhiro Uwadaira, Norihiko Adachi, Akifumi Ikehata, and Sumio Kawano, J. Near Infrared Spectrosc., 18(5), 291-300 (2010).