食品総合研究所

反応分離工学ユニット

役割

農林水産物の高付加価値化を目的として、分離技術および反応技術を対象とした工学的アプローチを行っています。分離技術では、省エネ・マイルドな食品分離技術として注目される逆浸透、ナノろ過、限外ろ過等の膜分離技術を対象として、液状食品に適用した際の分離特性やファウリング機構の解明などに取り組んでいます。また、反応技術では、常圧でメタノール蒸気を連続的に油脂に吹き込むことにより、触媒を用いることなくバイオディーゼル燃料(BDF)を作製できる装置を新たに開発し、油脂のメチルエステル化に関する基礎的研究を実施しています。 さらにいろいろな化学反応中の状態を微弱な光により計測・評価する研究も実施しています。

 

主な研究テーマ

膜分離技術

常温操作、省エネルギーのマイルドな膜分離技術は、加熱を伴わない食品・農産物の高品質化プロセスとして乳加工、果汁加工など食品産業において広く実用化が進んできました。現在も、緑茶、紅茶、コーヒー等の嗜好飲料加工やバイオリアクターへの利用、クロマト分離と競合する高度分離での利用等の水溶液系への適用とともに、新たな非水系油脂加工への膜利用なども検討されており、新しい性能の膜開発とともに新たな膜利用の展開が注目されています。
当研究室では、チキンエキスから各種膜技術(限外ろ過、ナノろ過)とイオン交換クロマト法を用いて任意の純度の抗酸化性ジペプチド、アンセリン-カルノシン、を精製する技術を新たに開発しました。生体内で発生する活性酸素には多様性があり、各抗酸化剤には有効に作用する活性酸素種があります。ペプチドのアンセリン-カルノシンはClO・系に強い抗酸化作用を持ち、植物由来のポリフェノール類、カロテノイド類、カフェ酸類縁体はOH・系に、ビタミンCはONOO・系にそれぞれ強い抗酸化作用をもつので、これらを含む食品素材の適切な配合により理想的な抗酸化食品の調製が可能となることを調べています。  

バイオディーゼル燃料の生産

実用化されているBDF燃料の作製法はアルカリ触媒を用いた植物油のアルコリシスによる脂肪酸メチルエステル(FAME)の生成のみですが、副産物であるグリセリンを有効利用するためには、アルカリ触媒を除去する精製工程が必要であり、コスト低減の障害となっています。当研究室では触媒を用いることなくFAMEを作製できる装置を新たに開発し、油脂のメチルエステル化に関する基礎的研究を実施しています。副生成物のグリセリンの精製や反応生成物の洗浄等が不要なため生産コストが削減できると期待されます。
アルカリ触媒を用いないアルコリシス反応装置
常圧の条件で過熱メタノール蒸気を油脂中に吹き込むことにより、アルカリ触媒を用いることなく動植物油脂から脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル燃料)を製造します、これにより、1)アルカリ触媒を除去するための精製工程が不要であるためコスト低減が可能、2)副産物であるグリセリンについてもその利用にあたって精製工程が不要、3)遊離脂肪酸も燃料とすることができるため、廃食用油に適用した際に歩留まりが向上する等、現行技術よりすぐれたバイオディーゼル生産プロセスを組み立てることが可能です。


微弱発光計測による食品の評価

化学学反応に伴い食品素材から極微弱な光が発生します。この微弱な光を検出することで、試料の品質状態を計測できる可能性があります。主に食品素材の品質指標となる劣化度や抗酸化性を、従来のように複雑な化学分析を必要とせず簡便に検出することを目的にしています。さらに、発光計測の応用により食品素材への放射線照射履歴を迅速に判別する研究も実施しています。

 

メンバー

主任研究員
蘒原 昌司(はぎわら しょうじ)/専門:食品工学・計測工学

研究員
安藤 泰雅(あんどう やすまさ)/専門:食品工学

交流研究員
柳内 延也
塩谷 茂信

研究補助員
太塚 晴美

インターンシップ
3名

 

主要成果

原著論文

  • 石川智子、山崎理恵、岩本悟志、鍋谷浩志、小坂田潔、宮脇長人、相良泰行: 無触媒アルコリシス反応によるバイオディーゼル燃料生産方法の経済性評価と原料油の価格がバイオディーゼル燃料の価格に及ぼす影響について, 日本食品工学会誌, 6(2), 113-120 (2005)
  • 後藤典子、蘒原昌司、等々力節子、本田克徳、山崎正夫、関口正之、水野弘明: 照射粉末食品の光ルミネセンス法による検知, 食品照射, 40(1,2),11-14 (2005)
  • 水野雅之、千葉洋平、木村豊、名達義剛、鍋谷浩志、中嶋光敏: 廃鶏中抜き屠体から常温流通型丸鶏エキス製造プロセスの開発、日本農芸化学会誌、78、494-499(2004)
  • 柳内延也、塩谷茂信、水野雅之、鍋谷浩志、中嶋光敏: チキンエキス由来アンセリン-カルノシン混合体の抗酸化活性、日本食品科学工学会誌、51、238-246(2004)
  • 柳内延也、塩谷茂信、水野雅之、鍋谷浩志、中嶋光敏 : 動物エキス中のヒスチジン含有ジペプチド(アンセリン-カルノシン)のHPLCによる迅速定量法、日本食品科学工学会誌、51(2)、87-91(2004)
  • R. Subramanian, K. S. M. S. Raghavarao, M. Nakajima, H. Nabetani, T. Yamaguchi, T. Kimura: Application of dense membrane theory for differential permeation of vegetable oil constituents, Journal of Food Engineering, 60, 249-256 (2003)
  • 蘒原昌司, 兀下伸二, 関圭吾, 齋藤高弘, 志賀徹, 大谷敏郎:焙煎ゴマ油の焙煎温度および品質劣化が極微弱発光現象に及ぼす影響, ,日本食品科学工学会誌,50(7),303-309(2003)

特許等

  • 中嶋光敏、鍋谷浩志、水野雅之:新規な羽毛微粉体及びその製造法、特許第3705534号、2005年8月5日
  • 蘒原昌司、鈴木節子、鈴木茂市、後藤典子、山崎正夫: 放射線照射判別方法および放射線照射判別システム, 特許出願2005-234849
  • 鍋谷浩志、中尾真一: エタノールの醗酵濃縮システム、特許出願2004-097710