食品総合研究所

食品高圧技術ユニット

役割

食品加工における高圧技術の利用・普及を目指して、産学官の研究機関と連携して融合的な試験研究を行なっています。現在は、澱粉の圧力糊化、大腸菌等の細 菌及び酵母の高圧不活性化特性、農産物の高圧処理による有効利用を中心に仕事を進めています。

高圧力とは?

私たちは通常、およそ1気圧の下で生活しています。1気圧は約0.1 MPa(メガパスカル)もしくは1000 hPa(ヘクトパスカル)に相当します。(参考:1気圧 = 0.1013 MPa)
圧力釜での調理では、2気圧(約0.2 MPa)程度が利用されています。時計には水深100m防水がありますが、水深100mは10気圧(約1 MPa)に相当します。風船を膨らますのに用いたりするヘリウムガスのボンベには150気圧(約15 MPa)程度でガスが詰め込まれています。食品の高圧加工で利用されるのは数千気圧(数百MPa)です。

食品の高圧加工とは?

1987年に林力丸先生(当時、京都大学)が、1000気圧(約100 MPa)以上の高圧力を食品加工に利用する事を提唱して以来、つまり日本でのこの提唱が端緒となり、高圧で加工した食品が開発され、流通するようになりました。高圧加工では加熱をしないため、加熱臭がなく、生の食材の香り、色、風味が保たれた高品質の食品が製造可能です。また、高圧加工により微生物が減少するので、高圧力による微生物の不活性化も可能です。さらに、液体に浸漬(しんし)した食材を高圧処理すると、液体を迅速に浸透させることもできます。加熱では外側にだけ焦げ目が付いて中は生という加熱ムラが問題となりますが、圧力は処理する材料の形状に関係なく均一にムラ無く伝わります。これら特性を生かし、世界初の高圧加工食品として日本でジャムが開発され、これ以降、ジュース、肉、魚介類、野菜など各種の高圧加工食品が開発されています。

 

主な研究テーマ

  1. 高圧処理による物性変化:澱粉・蛋白質の高圧変性

  2. 熱処理により澱粉が糊化してゲル状になるように、高圧処理によっても澱粉は変性します。この圧力糊化の現象は、馬鈴薯、トウモロコシ等、澱粉の由来植物の種類によって異なるのですが、その特性は十分に解明されていません。そこで各種澱粉の圧力糊化について、熱分析、X線回折、顕微鏡観察、物性測定等により解明を進めています。また、蛋白質の変性については、圧力でゆで卵や温泉卵のように卵が固まる現象の有効利用について検討しています。

  3. 高圧処理による食品機能性成分の変化

  4. 高圧処理では加熱が伴わないため、食品成分が一般的に損なわれないことが知られていますが、近年、高圧処理した玄米のGABA(γ-アミノ酪酸:血圧降下作用がある)含量が増加することが報告されています。そこで、玄米以外の食材における食品成分の変化、特に食品機能生成分の変化を調べる研究を進めています。

  5. 高圧加工食品の開発

  6. 実験室規模の数十~数百ccの容器では、製品と呼べる食品の加工はできませんが、高圧加工を利用した製品を開発することを目的とし、50リットル規模の大型高圧加工装置を企業との連携により導入し、製品の開発を目指しています。食品総合研究所が居を構えるつくば市との連携により、「つくば市特産農作物を用いた高圧加工食品」の開発にも着手しています。

行政対応業務

研究業務と平行して、下記の業務に取り組んでいます。

メンバー

ユニット長
山本 和貴(やまもと かずたか)/専門:食品工学、糖質科学

契約職員
廣瀬 美佳(ひろせ みか)/実験
古屋 愛珠(ふるや まなみ)/実験
小田真知子 (おだ まちこ)/実験
Baum 博美(ばうむ ひろみ)/実験

依頼研究員
有村恭平(鹿児島県農業開発総合センター)

企業共同研究
3社

 

主要成果

  • Physical properties of normal and waxy corn starches treated with high hydrostatic pressure: K. Fukami, K. Kawai, T Hatta, H. Taniguchi, K. Yamamoto, J. Appl. Glycosci., 57(2), 67-72 (2010).
  • 高圧力を活用した食品加工 その2 動向: 山本和貴, 日本調理科学会誌, 43(1), 44-49 (2010).
  • 高圧力を活用した食品加工 その1 総論: 山本和貴, 日本調理科学会誌, 42(6), 417-423 (2009).
  • Microbial Responses Viewer (MRV): A new ComBase-derived database of microbial responses to food environments: S. Koseki, Int. J. Food Micorbiol., 134(1&2), 75-82 (2009).
  • Pressure gelatinization of potato starch: K. Yamamoto, K. Kawai, K. Fukami, S. Koseki, Food, 3(SI1), 57-66 (2009). [abstract]
  • High hydrostatic pressure tolerance of four different anhydrobiotic animal species: D. D. Horikawa, K. Iwata, K. Kawai, S. Koseki, T. Okuda, K. Yamamoto, Zool. Sci., 26(3),238-242 (2009).
  • Prediction of a required log reduction with probability for Enterobacter sakazakii during high-pressure processing, using a survival/death interface model: S. Koseki, M. Matsubara, and K. Yamamoto, Appl. Environ. Microbiol., 75(7),1885-1891 (2009).
  • Leakage of intracellular UV materials of high hydrostatic pressure-injured Escherichia coli O157:H7 strains in tomato juice: D. O. Ukuku, H. Zhang, M. L. ?Bari, K. Yamamoto, S. Kawamoto, J. Food Prot., 72(11), 2407-2412 (2009).
  • Use of mild-heat treatment following high-pressure processing to prevent recovery of pressure-injured Listeria monocytogenes in milk: S. Koseki, Y. Mizuno, and K. Yamamoto, Food Microbiol., 25(2),288-293 (2008).
  • Effect of hydrostatic pressure pulsing on the inactivation of Salmonella Enteritidis in liquid whole egg: ○M. L. Bari, M. Mori, D. O. Ukuku, S. Kawamoto, K. Yamamoto, Foodborne Pathogens Disease, 5(2),175-182 (2008).
  • Effects of treatment pressure, holding time, and starch content on gelatinization and retrogradation properties of potato starch-water mixtures treated with high hydrostatic pressure: K. Kawai, K. Fukami, and K. Yamamoto, Carbohydr. Polym., 69(3), 590-596 (2007).
  • State diagram of potato starch-water mixtures treated with high hydrostatic pressure: K. Kawai, K. Fukami, and K. Yamamoto, Carbohydr. Polym., 67(4), 530-535 (2007).
  • Water activity of bacterial suspension media unable to account for the baroprotective effect of solute concentration on the inactivation of Listeria monocytogenes by high hydrostatic pressure: S. Koseki and K. Yamamoto, Int. J. Food Microbiol., 115(1), 43-47 (2007).
  • pH and solute concentration of suspension media affect the outcome of high hydrostatic pressure treatment of Listeria monocytogenes: S. Koseki and K. Yamamoto, Int. J. Food Microbiol., 111(2), 175-179 (2006).
  • Recovery of Escherichia coli ATCC 25922 in phosphate buffered saline after treatment with high hydrostatic pressure: S. Koseki and K. Yamamoto, Int. J. Food Microbiol. 110(1),108-111 (2006). [PubMed]
  • Modeling the pressure inactivation dynamics of Escherichia coli: K. Yamamoto, M. Matsubara, S. Kawasaki, M.L. Bari and S. Kawamoto, Braz. J. Med. Biol. Res. 38(8), 1253-1257 (2005).. [PubMed]
  • 高圧力と澱粉:山本和貴, 高圧力の科学と技術, 16(1), 31-37 (2006).
  • 基礎総論:国内外の食品関連高圧研究の進展:山本和貴, 食品と容器, 64(11), 614-619 (2005).
  • 予測微生物学の最近の動向: 小関成樹, 山本和貴, 食品の試験と研究, 40, 15-21 (2006).
  • 国内外における高圧殺菌の現状: 小関成樹, 山本和貴, 食包研会報109巻7-15 (2006).