食品総合研究所

生物機能解析ユニット

役割

放線菌、枯草菌という微生物を使い、抗生物質が作られるメカニズムと胞子形成のメカニズムを究明しています。この二つの研究過程で重要な働きをするのがリボゾームです。リボゾームはタンパク質を合成する細胞内器官ですが、遺伝子発現を制御し二次代謝や形態分化といった物質生産にも働きかけます。このような工学的観点からリボゾームを研究することを最大のテーマとして、このユニットで大型のプロジェクトが動いています。具体的にはDNA、mRNA(リボゾーム)、そしてタンパク質に至る全てのプロセスに着目して研究を進めています。 最近では潜在機能発現とRNAポリメラーゼの関係をグアノシン4-リン酸(ppGpp)の観点から究明しつつあります。

 

主な研究テーマ

  • 二次代謝の引き金は、どのような物質によって細胞内で行われているか
    微生物の二次代謝産物である抗生物質は、リボゾームタンパク質を改変することで生産量が増えたり、新しいものができたりすることを発見しました。その仕組みを解明し、抗生物質の生産に応用していくことを目指しています。
  • 胞子形成の引き金は、どのような物質によって細胞内で行われているか
    微生物の形態分化をコントロールすることを目的として、胞子を作るメカニズムについて調べています。
  • 引き金物質に続く情報伝達経路は、どのようなものであるか
    生物の情報はDNAからmRNA、タンパク質へと流れていきます。リボゾームはタンパク質を合成するだけでなく、遺伝子発現を制御することが分かってきていますが、その情報がどのように伝えられ、二次代謝や形態分化にどのような影響を与えるか研究しています。
  • 翻訳制御(リボゾーム)は、引き金に関与するのか?
    遺伝子情報からタンパク質を合成する「翻訳制御機構」は、二次代謝や形態分化にどのように関わっているのかを解明します。
  • 眠った遺伝子をどのようにして目覚めさせることができるか
    リボゾームを遺伝子工学などの手法で改変することによって、これまで知られていなかった細胞の潜在能力(機能)を引き出そうと取り組んでいます。
  • 機能性タンパク質の修飾メカニズムはどのようなものであるか
    リン酸化やADP-リボシル化など、タンパク質は修飾のされ方によってがらりと活性を変えます。このような、タンパク質の活性そのものを調整するメカニズムを究明しています。
  • 潜在機能発現における転写レベル制御はどのようなものであるか
    各種のRNAポリメラーゼ変異株の取得ならびにRNAポリメラーゼーppGpp?シグマ因子の関係を明らかにすることによって、転写レベルの制御による潜在機能発現のメカニズム解明と応用技術の構築を行っています。
    60年来のミステリーとされてきた低レベルストレプトマイシン耐性変異の実体を明らかにしました。この知見は、微生物の潜在能力発現にとどまらず、結核治療に対しても重要な情報となります。

なお、当ユニットは「リボゾーム工学プロジェクト」 を終了し、現在、産学官プロジェクト「潜在機能発現システムのデザインと活用」 を遂行中です。

 

メンバー

ユニット長
岡本 晋(おかもと すすむ)/専門:遺伝生化学、分子生物学

主任研究員
稲岡 隆史(いなおか たかし)

 

主要成果

  • Artsimovitch, I., V. Patlan, S. Sekine, M. N. Vassylyeva, T. Hosaka, K. Ochi, S. Yokoyama, and D. G. Vassylyev: Structural basis for transcription regulation by alarmone ppGpp, Cell, 117, 299-310 (2004)
  • Takahashi, K., K. Kasai, and K. Ochi: Indentification of the bacterial alarmone guanosine 5', 3'-bispyrophosohate (ppGpp) in plants, Proceedings of National Academy of Science USA, 101, 4320-4324 (2004)
  • Inaoka, T., K. Takahashi, H. Yada, M. Yoshida, and K. Ochi: RNA polymerase mutation activates the production of a dormant antibiotic 3,3'-Neotrehalosadiamine via an autoinduction mehanism in Bacillus subtilis, Journal of Biological Chemistry, 279, 3889-3892 (2004)
  • Inaoka, T., K. Takahashi, M. Ohnishi-Kameyama, M. Yoshida, and K. Ochi: Guanine nucleotides, guanosine 5'-diphosphate 3'-dipahosphate and GTP co-operatively regulate the production of an antibiotic bacilysin in Bacillus subtilis, Journal of Biological Chemistry, 278, 2169-2176 (2003)
  • Tamura, M., C. Nashimoto, N. Miyake, Y. Daikuhara, and K. Ochi, M. Nashimoto: Intracellular mRNA cleavage by 3' tRNase under the direction of 2'-O-methyl RNA heptamers, Nucleic Acids Research, 31, 4354-4360 (2003)
  • Chumpolkulwong, N., 竹本千重、横山茂之、白水美香子、木川隆則、越智幸三: S12リボゾーム蛋白質に変異を有する大腸菌細胞抽出液及びそれを用いる無細胞系によるタンパク質の製造方法、2002-345597、2002年11月28日出願
  • 越智幸三、胡海峰、日野資弘、藤江昭彦、村松秀行: Method for improving antibiotic producers by conferring combined drug resistant mutations (薬剤耐性付与による二次代謝産物の生産力活性化技術)、60/279665、2001年3月31日出願