農業環境研究部門

ご挨拶

農業環境変動研究センターは、平成28年4月1日に4法人(農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、農業生物資源研究所、農業環境技術研究所、および種苗管理センター)の統合により、農業環境技術研究所を母体とした農研機構の重点化研究センターのひとつとして新たなスタートを切りました。

近年、高温による農作物被害が問題となるなど、気候変動が農業に及ぼす影響が顕在化しつつあります。また、農業労働力の減少や耕作放棄地の増加、大規模営農体による分散多圃場の管理など、農業・農村を取り巻く環境は大きく変化しています。気候変動への対応や持続可能な農業生産への取り組みは、わが国農業における急務の課題であるとともに、豊かな農業・農村環境を次の世代へと受け渡すためにも重要な研究課題と言えるでしょう。

このような背景のもと、私たちは、農研機構における気候変動対応研究の中核として、温暖化の農業への影響予測、気候変動に柔軟に対応できる栽培管理支援技術の開発、さらには農業分野からの温室効果ガス排出削減技術の開発などの研究を一体的に推進します。また、持続可能な農業生産に資する技術開発として、環境変動や農地・作物・栽培体系の変化が生物多様性や土壌・水質ならびに物質循環へ及ぼす影響評価手法の開発、生態系サービスの評価手法の開発、外来生物や農薬が農業生態系に与える影響評価、有害化学物質の農業環境中動態予測や作物残留低減技術の開発などに取り組みます。またリモートセンシング、地理情報システムなどを駆使して農業・圃場環境の変化を時間的・空間的にモニタリングする技術や、得られた多種多様な情報の解析手法の開発、さらには様々な農業・環境情報を統合・整備し、広範な利用のためのデータベースの構築・公開などの基盤的技術を開発します。

これらの取り組み・研究成果の農業現場へ適用・普及には、行政、公設農業研究機関、普及組織、担い手農家、民間企業、大学などさまざまな分野・セクションとの連携が不可欠であり、そのためにはわかりやすい成果の発信が重要と考えています。研究成果の受け手・発信先は国内にとどまりません。私たちはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)などの国際的な枠組との連携を図るとともに、イニシアチブを発揮していく所存です。
皆様のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

農業環境変動研究センター
所長 渡邊 朋也