動物衛生研究所

牛海綿状脳症(BSE)

牛海綿状脳症と新型クロイツフェルト・ヤコブ病:背景、進化および現状(仮訳)

(Bovine Spongiform Encephalopathy and Variant Creutzfeldt-Jakob Disease: Background, Evolution, and Current Concerns, Emerging Infectious Diseases Journal (EID), January-February 2001.)

Paul Brown,1 Robert G. Will,2 Raymond Bradley,3 David M. Asher,and Linda Detwiler5
1National Institute of Neurological Disorders and Stroke, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA; 2NationalCreutzfeldt-Jakob Disease Surveillance Unit, Western General Hospital, Edinburgh, Scotland; 3 Central Veterinary Laboratory, New Haw, Addlestone, UK; 4Center for Biologics Evaluation and Research, Food and Drug Administration, Rockville, Maryland, USA; 5Animal and Plant Health Inspection Service, U.S. Department of Agriculture, Robbinsville, New Jersey, USA

監訳:元動物衛生研究所疫学研究部病性鑑定室 久保正法

Dr.Paul BrownおよびEmerging Infectious Diseases Journal (EID),許可を得て翻訳し、掲載しました。】

英国における牛海綿状脳症(BSE)の流行は1986年に始まり、約200,000頭の牛が罹患し、終息に向かっているが、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が勃発し、これは中枢神経組織に汚染された牛肉製品の摂取が原因と考えられている。1994年に最初に出現して以来、年間10~15症例であるが、将来的な発生数および地理的分布(感染した英国牛ないし牛肉製品を輸入した国ないし内因性BSEのある国)の推定は不可能である。多数の見かけ上健康なヒトが潜伏期間中であるという可能性は、治療具(外科および診断過程)および血液や臓器提供を介して医原病的に感染する心配を抱かせている。多くの国の政府機関はこのリスクを最小限にする新しい施策を出し続けている。

牛海綿状脳症

BSEないし「狂牛病」は18世紀半ばからヨーロッパで認められていたヒツジやヤギの流行性海綿状脳症であるスクレイピーが起源のようだ(1)。スクレイピーは多くのヒツジ飼育国に拡散し、英国でも広範囲で発生し1988年までレンダリングした家畜の死体(ヒツジを含む)を反芻獣に給し、他の動物も蛋白質に富む栄養剤として給与された。

レンダリング時には、全ての可食部分が除去された死体は粉砕され、大きな鍋で大気圧ないしそれ以上の圧力で煮沸により分解され、脂肪(獣脂)層の下に液状のスラリーを形成する。脂肪を除去した後に、スラリーを乾燥させた産物が肉骨粉であり、動物飼料会社がパックし、家畜や他の捕獲動物(例えば、動物園、実験動物、ペット)の畜主に販売する。

議論のある部分(スクレイピー起源、認められていないが地方病性BSEを含む)はまだもめているが、1980年代に行われたレンダリング過程の変化が感染した死体の病原因子を残存させ、蛋白質サプリメントを汚染し、牛に感染したと考えられる。牛の死体および死体廃棄物はレンダリングプラントからリサイクルされ、蛋白質サプリメント内の現在流行している牛適応病原体レベルを上昇させ、その結果、BSEの流行を誘発した(2-5)。

感染起源の確証のために英国及び他の国では一連の対策を施し、牛への再感染を阻止し、病気の拡散を防ぎ、新しい感染源を消滅させた(図、付)。

図

Figure. Time course of epidemic bovine spongiform encephalopathy in the United Kingdom, 1986-2000, with dates of major precautionary interventions. The mammalian ban on meat and bone meal in March 1996 extended a 1994 ban for farmed food animal species to include all mammalian species. SBO = specified bovine offals (brain, spinal cord, thymus, tonsil, spleen, and intestines from cattle >6 months of age); MBM = meat and bone meal (protein residue produced by rendering).

英国での最も重要な対策は1988年に施行されたもので、反芻獣蛋白質の給与の禁止であり、1992年に流行を下火にさせた。発症牛200,000頭の損失の他に、30ヶ月齢以上の無症状の牛450万頭を予防的に屠殺し、英国の畜産業を麻痺させた。また、牛由来産物から作製している獣脂、ゼラチン及び薬品にも影響した。

BSEは英国のみに限局していなかった。輸入した牛ないし家畜の飼料サプリメントにより多くの国でも発生した(表1)。

Table 1. Reported cases of bovine spongiform encephalopathy in the United Kingdom and other countries (as of December 2000)a

Country

Native cases

Imported cases

Total cases


United Kingdom

180,376b

0

180,376

Republic of Ireland

487

12

499

Portugal

446

6

452

Switzerlandc

363

0

363

Francec

150

1

151

Belgium

18

0

18

Netherlands

6

0

6

Liechtenstein

2

0

2

Denmark

1

1

2

Luxembourg

1

0

1

Germany

3

6

9

Oman

0

2

2

Italy

0

2

2

Spaind

0

2

2

Canada

0

1

1

Falklands (UK)

0

1

1

Azores (Portugal)e

0

1

1


aData from Organization of International Epizootics(Paris) and Ministry of Agriculture, Fisheries, and Food (UK).
b
Includes 1,287 cases in offshore British islands.
c
Includes cases detected by active surveillance with immunologic methods.
d
Origin and dates of imported cases are under investigation.
e
Case imported from Germany.

英国を含む少数の国では新しい発生は減少しているが、フランス、ポルトガル、ドイツ、スペイン及びアイルランドでは発生は増加しており、初発例が最近になって起こっている。この現象の説明は改善された症例確認(アクティブサーベイランス及び免疫学的方法に支援された)であるが、他の動物種(例えば豚や鶏)用の汚染された飼料からの感染も他の因子であろう。多くの国ではBSEは自国産牛で認められており、英国以外では自国産の症例は報告されていない(即ち、自然発生ないし牛から牛への感染による症例)。これらの症例がどのような起源であれ、家畜飼料のサプリメントを介した汚染された組織のリサイクルが英国と同様に起こったのであろう。

牛、畜産物ないし家畜飼料サプリメントを歴史的に英国から輸入していない米国ないし他の国ではBSEは発生していない。他の国でも、1970年代にレンダリングシステムは英国と同様に変化させたが、BSEは英国内でのみ発生した。この最もな説明はレンダリングした動物死体の混合物内の羊の割合とスクレイピーに感染した羊の割合は英国では他の国よりも高かったことであろう。この割合はレンダリングされた死体内の鍋内では非常に低レベルの感染因子を英国だけでなく、他の国での伝播の閾値を越えさせるのに十分であったのであろう(5)。BSEInquiry(6) の最近の報告で提案されている他の説明では、1970年代に病原性突然変異が起こった。

これらの2つの仮説のどちらでも、変更したレンダリング過程で残存し、さらに多数の感染死体のリサイクルを介して膨張した疫学的「種」の必要性を満足させる。しかし、牛起源仮説は突然変異は英国でのみ起こり、突然変異が起こったとしたら同様なレンダリング過程がBSE流行を引き起こしたであろう他の国では突然変異が起こらなかったと推定している。ヒトでは突然変異は世界中で起こっており、この点においてのみヒトは他の哺乳動物と異なっていると仮定する理由はない。英国のみが牛世界における唯一の突然変異を宿していたという不幸に遭遇したというのは奇妙である。

Variant Creutzfeldt-Jakob Disease (vCJD)

BSEの最初の症例が同定されてから数週間以内にヒトへの危険の危惧が発表された(7-13)。BSEの流行につれてBSEを撲滅する一連の対策が取られ、感染の可能性のある組織がヒトの食物連鎖に入ることを阻止した(付録)。CJDをモニターするサーベイランスユニットが1990年5月に英国で設立され、サーベイランスは3年後にヨーロッパの他の数カ国でもEUを介して共同して行われた。この対策により、英国におけるCJDの疫学における変化は速やかに検出され、この変化の意義は大陸ヨーロッパにおけるCJDの疫学との比較で評価できると期待された。

動物園の外国産偶蹄類及び家ネコ及び捕獲野生ネコが感染したことにより心配はさらに高まった(14-18)。偶蹄類及び家ネコは肉骨粉が補填された飼料で飼育されており、野生ネコは牛の脳や脊髄を含む未調理の組織を食べた。BSEは牛肉ないし畜産物の消費、あるいは牧場主、乳業者ないし屠畜場労働者が職業的接触により種を越える可能性も無視できなくなった。

ヒト感染への心配を冷静にさせているのは、BSEはスクレイピー起源であり、スクレイピーはヒトに対する病原体ではないという前提であった。しかし、ヒトへのリスクは小さいと考えている人々でさえもスクレイピーが牛を継代している間に宿主域を変化させるかもしれないことを認めた。このような動態については実験的先例がよく知られており、スクレイピーのマウス適応株をハムスターで継代するとげっ歯類へのバック継代では伝搬性が変化した(19,20)。クールーないしCJDのヒト株は霊長類ないしネコで継代するまではフェレットないしヤギには伝達しない(21)。BSEの牛株はマウスで継代しないとハムスターには伝達しない(22)。もし、BSEが牛における突然変異を起源とするものであれば、この新しい株の伝達性海綿状脳症(TSE)の種の感受性の実験では、ヒトは感受性がないことを推定するには十分ではない。しかし、BSEの最初の症例が同定されてから10年の間に、CJDの症例はハイリスク群の人々での上昇はなく、BSEの出現前と同様な臨床及び神経病変の同一のスペクトルの一般的人々の間で発生しつづけている。

1995年5月から10月にCJDサーベイランスユニットには16、19及び29歳の3例のCJD症例が報告された(23,24)。神経病理学的検査では、3人の患者でアミロイド斑が認められ、このアミロイド斑は散発性CJDでは5-10%で認められるものであった。患者が比較的若いこと及びこの異常な神経病理学的所見は、死因が異なる患者でも同様な所見が見られるかといった研究に拍車をかけた。特に、亜急性硬化性汎脳炎(SSPE)は、若い患者におけるCJD症例がSSPEサーベイランスで同定されたというポーランドの報告を考慮して詳細に検討された(25)。英国のSSPE記録では、このような症例は認められなかった。

若い患者におけるCJDが誤診により曖昧にされていなかったとしたら、BSEを取巻く情報公開、汚染された成長ホルモンのレシピエントにおける医原性CJD、英国で制度化されたアクティブCJDサーベイランスプログラムないし遺伝的およびプロテイナーゼ抵抗性蛋白質(PrP)免疫組織化学が可能になったことにより医者の注意が高揚したことを反映していた。これら全ての要因がバイアスとなり、CJDは以前に比べて頻繁に診断されるようになったが、ほとんどの症例が老齢者における発症であった。

1995年12月までにサーベイランスユニットには50歳以下の10人のCJD症例が報告された。ある者は散発性ないし家族性CJDあるいは他の病気であったが、29歳と30歳の2人の患者は後に神経病理学的にCJDと確認され、前の3人のCJD患者と同様に広範なプラークが認められた。1996年1月1日までには、これらの症例とBSEとの関係は疑われていたが、仮のものであり、関連性を明らかにするのに必要な情報がまだ欠けていた(表2)。

Table 2. Evolving assessment of criteria used to link bovine spongiform encephalopathy and variant Creutzfeldt-Jakob disease


 

Assessment through early 1996

Criteria

Jan 1

Feb 1

Mar 1

Mar 8

Mar 20


Novel clinical phenotype

Uncertain

Possible

Probable

Probable

Probable

Novel neuropathologic phenotype

Uncertain

Possible

Probable

Probable

Probable

Distinct from pre-1980 cases in UK

Unknown

Possible

Probable

Probable

Probable

No association with PRNP mutations

Uncertain

Uncertain

Uncertain

Probable

Probable

Distinct from cases outside UK

Unknown

Unknown

Unknown

Possible

Probable


 1月の間に若い患者における更に2症例のCJDが神経病理学的に確認された。プラーク形成と関連した特異な臨床症状が分り始めた。若齢での発症、初期の痴呆、顕著な運動失調、周期的脳波活動の欠如、及び比較的長い臨床経過であった。しかし、これらの特徴の各々は1つないし組合わせで古典的散発性ないし家族性CJDでも認められることが、英国における1980年代以前のCJD患者の記録の再検討で確認された。これらの特徴を持つ3人の若い患者がこれらの共通所見を示し、他のヨーロッパ諸国におけるCJDに罹患した若い患者に関する調査の結果でも、英国と同様な年齢分布を示した。主な心配事はこれらの類似した症例が散発性ないし家族性CJDの異なる群を示しているかもしれないということであった。1980年前後の若い患者におけるCJDの完全な比較神経病理学的検査が必要であり、さらに、それとともにPRNP遺伝子配列解析が必要であった。

1996年2月には、前7人の患者と同様な症状を示した1症例が報告され、神経病理学的検査で今回の症例も特異的であることが確認された。特に形態学的に異常なプラークが全ての症例で認められた。花状ないし「ヒナギク」プラークはアミロイドのコアを海綿状変性の「花弁」が取巻いていた。3月1日現在では、この患者群は「新変異」CJDらしかったが、突然変異が関与しているか、また、このような症候群が英国以外でも起こっているかがはっきりしなかった。この2つの点は特異な病気がBSEへの暴露と関連していることを確認する上で重要であった。

3月4日、6症例の遺伝的解析が終了したが、病的突然変異は同定されなかった。この結果は、この症候群の遺伝的原因を排除し(遺伝的素因は排除されていない)、残った不確定要素は変異表現型の地理的分布はヨーロッパCJDサーベイランスシステムにより明らかにされることになっていた。その答えは、3月20日に出た。ヨーロッパ大陸の若いCJD患者は英国の症例のような臨床及び神経病理学的特徴は示さなかった。前の週に、さらに2人の変異型症例が神経病理学的に確認され、全10症例の報告では、45歳以下の人々で起こった未知の変異型CJDは恐らくBSEに暴露したためであろうと結論した(26)。

BSE感染牛とvCJDのヒト症例から分離された病原因子が同一で特異な生物学的及び分子生物学的特性を示す実験室内の研究によりこの関連性は確立されつつある(27-29)。汚染源は牛肉らしいが、筋肉はいずれの型の海綿状脳症においても感染性因子を含んでいないことは繰り返し証明されている。従って、感染は恐らく中枢神経系に汚染された牛肉製品によるものであった。汚染は以下の方法のいずれかで起こったのであろう。牛を放血殺する前に動かさないようにするために用いた脳を気絶させる道具による脳血管血栓、屠殺時に用いる鋸や他の道具による脳ないし脊髄組織と筋肉との接触、脊髄組織を含む肉のカット内に脊髄神経節が含まれる(例えば、Tボーンステーキ)、及び最も重要なのは脊髄の残り及び脊髄神経節が「機械的に回収した肉」のペースト内に存在することである。「機械的に回収した肉」は合法的に調理した肉産物であるミートパイ、ビーフソーセージ及び様々な肉製品の缶詰に加えられていた。これらの汚染源を除去するために対策が取られ、今までに起こったかもしれない汚染が起こらないようにしている(付録)。

消費された感染性組織の量がBSEのvCJD型への伝播の重要な決定因子であるが、ヒトの遺伝型のPRNP遺伝子のコドン129の多型が感染に対する感受性に重要な働きをしている。メチオニン(Met)及びバリン(Val)がコーカサス人では約50%がMet/Val,40%がMet/Met及び10%がVal/Valである。76人の全てのvCJD患者はメチオニンをホモ接合体として持っており、BSEの単一の感染株は他のヒト遺伝型では複製できないかもしれない。しかし、クールーの同様な経口感染や末梢からの医原性CJD感染のように、ヘテロ接合体のヒトは病気に対して比較的抵抗性であり、ホモ接合体のヒトよりも長い潜伏期の後に発症するかもしれない(30-33)。

vCJDの発生予測

vCJDの最初の発生例は1994年初頭に起こり、BSEの最初の症例が牛で確認されてから約10年後であった。vCJDの早期の出現がBSEに対する早期の暴露であったと推定すると、この潜伏期間は実験動物及びヒトの医原性CJD症例の末梢からの感染の期間と一致している。2000年11月末までに、英国では87人の確定ないし推定症例が認められ、フランスでは2人の確定と1人の推定症例、及びアイルランド共和国では1人が確定された(表3)。

Table 3.  Chronology of variant Creutzfeld-Jakob disease (vCJD) in the United Kingdom and other European countries, as of December 2000


Year of onset

United Kingdom

France

Ireland


1994

8

1

 

1995

10

   

1996

11

   

1997

14

   

1998

17

   

1999a

20 (+4)

1 (+1)

1

2000a

1 (+2)

   

aParentheses indicate still-living persons with probable vCJD or deceased persons whose diagnoses have not yet been confirmed by neuropathologic examination. In 2000, additional cases have been identified that do not yet meet the minimum clinical criteria for a premortem diagnosis of "probable" vCJD. Dates are for year of onset of illness, not year of death.

アイルランドの患者は英国で数年生活したことがあった。しかし、フランスの患者は英国に住んだり、訪れたこともなかった。従って、彼らの感染は英国から輸入した牛肉ないし肉製品(フランスで消費される5-10%の牛肉)ないしフランスのBSE罹患牛に由来した物であろう。ヨーロッパの多くの国々は少量ではあるが英国から牛肉及び肉製品を輸入してきたので、もし輸入された牛肉が感染源だとしたら大きな問題である。

BSEの流行とは異なり、vCJDの発生は最初の6年間にわずかな上昇を示しており、2000年における発生数は前年の全症例よりもかなり低いが、今後同定される症例が増加するであろう。BSEとvCJDの相違はヒトでは感染組織のリサイクルがなく、流行は牛よりもゆっくりと進行するであろう。あるいは、この差は遺伝的に感受性のあるヒトを除いては種間バリアーがあり、比較的非効率な感染経路の作用を凌駕できない非常に少量の感染量のためにヒトでは限られた数が発生することを示唆している。

vCJDの発生の程度に関する不確定さはvCJDの潜伏期が分らないという事実に帰すことができる。平均潜伏期が10~15年とすると、vCJDの初期の患者は1980年代初期に感染したことになり、BSEは少数であるが増加する牛で静かに培養している時期であった。この場合には、1980年代後期に、汚染された組織に多数の人々が暴露され、数年後にvCJD症例が平行して上昇することを意味している。しかし、vCJDの平均潜伏期が5-10年とした場合には、初期の感染は1980年中期から後期に始まり、BSEへの暴露も小さくなる。この場合には、1987年から1997年に制度化された動物及びヒトのBSEへの暴露をなくす対策により、vCJDの発生は小さいままである。潜伏期及び他の変数の仮定に依存して、数学モデルでは全発生数は100例以下から何千症例の範囲となる(34-37)。

もし、多数の感染者が無症状のまま病気を培養しているとしたら、vCJDのヒトからヒトへの医原性拡散は非常に現実的なものとなる。一見健康なヒトが内視鏡、血管カテーテル、外傷ないし病気の手術、及び血液や臓器の提供を含む同種の内科及び外科的処置を受けることになる。vCJD患者の組織内の感染性因子の量及び分布がCJD型よりも大きいとしたら、内科及び外科の用具が感染性のある内臓や移植組織に暴露されることが、散発性CJD症例では今のところほぼ無視できるほどの危険とは異なり、非常に大きな心配の種となる。

現在及び将来の政策決定

いくつかの政府はvCJDの潜伏期にある一見健康なひとからの血液提供によりヒトからヒトへの伝播の危険を最小限にする対策を取った。英国では、後にvCJDで死亡したヒトからの全血及び血液産物を他のヒトに投与していたが、全血漿を輸入し、英国のドナーからの全血は血液内で感染性の運搬者と考えられている白血球を除去するためにろ過している(38-40)。米国では、血液ドナー政策として1980年から1996年の間に加算して6ヶ月以上英国で生活ないし訪問したヒトからの供給を排除した。6ヶ月間というのは、英国に居る80%以上の全米国人/年を除外でき、除去による血液供給者の2-3%の減少は血液バンクにより不足することなく吸収できるという事実に基づいていた。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、日本及びドイツといった国々でもこの規定を用い、同様な政策を取った。

英国における広範な感染の可能性により、心配は血液及び臓器ドナーを越えて、内科及び外科、特に神経外科及び眼科の手術に用いられる用具の安全な使用へと広がった。スクリーニング試験のない状態では、国家臓器ドナー計画の中止を必要とするゼロ-リスク政策は維持できない。一つの妥協は、30ないし40歳以下の若いヒトからの臓器提供―あるいは角膜供給のみを-一時的に拒否することかもしれない。しかし、この対策は推奨できない程ドナー人口を著しく減少させるかもしれない。同様な配慮は侵襲性内科及び外科手術にも当てはまる。十分な内科医療はvCJDの理論的危険を基に中止することはできない。また、CJDの疑いのあるヒトへの必要な手術を拒否するのは人道的ではない。現状では、使い捨て用具を出きる限り用い、再利用する用具については標準的な滅菌プロトコールを用い、腐食性の強い滅菌剤(例えば、CJDの感染防御に関するWHOのガイドライン〔41〕のように、1N苛性ソーダと134°Cでのオートクレーブの組合わせの併用)を用いるべきである。このような激しい方法に耐えるにはデリケートな用具ないし用具のパーツに対する効果的滅菌方法はない。そのような用具はTSE組織抽出物の中等度ないし良い消毒剤として認められている界面活性剤/プロテイナーゼ溶液で繰り返し洗浄し、洗った用具は腐食性の弱い化学薬品(例えば、6Mの尿素ないし4Mグアニジンチオシアネート)に暴露し、できる限り消毒しなければならない(42-44)。

同様に重要な問題は、ヒトへの感染能を新たに獲得した牛適応スクレイピー因子が種間バリアーを越え羊に再交差したか否かである。TSE株を識別する唯一信頼性のある方法は、異なる近交系マウスに接種後に時間のかかる潜伏期と脳病変の分布特性を比較することである(28)。罹患した脳組織から抽出したPrP株の糖タイピングはより迅速であるが、BSEとスクレイピー間を確かには識別できない。しかも、いずれの方法もBSEの羊適応株(即ち、羊を複数回継代した)についての試験はない。BSEの羊適応株は牛から羊への初代の継代で認められる特異な特徴は消失しているかもしれない。

牛に感染したものと同じ汚染された肉骨粉を与えられた羊にBSEがバッククロスしたとし、また、羊のBSEは羊のスクレイピーとは異なり水平ないし垂直感染できないとしたら、ヒトへの感染もBSEと同様にリスク期間はおよそ1980年から1996年に限定される。2つの病気を識別できる試験方法がなければ、羊内のBSEの流行及び牛と同様に羊からヒトへの感染リスクに対する防御方法はない。従って、動物のTSE全体を消滅させることを真摯に考えなくてはならない。

この目標は数年前よりも実際的になっている。スクレイピー撲滅のための国家計画は血統の選択的屠殺、あるいはスクレイピーが同定された全群の屠殺を歴史的に行ってきたが、そのような試みは全て失敗している。近年まで野外観察と古典的遺伝学に基づいてきたスクレイピー抵抗性繁殖計画を実施する分子遺伝学的ツールが現在では使用でき、また、免疫学的ツールが扁桃、第三眼瞼及び恐らく血液で臨床症状以前にスクレイピー感染を検出できるようになった(45-48)。TSE病原性の環境内での耐久性が撲滅を困難にしている(49,50)。しかし、羊及び他の動物におけるTSEの世界的撲滅は、その達成に必要な出費、努力及び忍耐に値する目標である。

References

Appendix

Table A. Measures taken to prevent the spread of bovine spongiform encephalopathy (BSE) to animals

Precautions

Great Britaina

European Uniona

United States

BSE made a notifiable disease

Jun 1988

Apr 1990

Nov 1987

BSE surveillance, with histologic examination of brains

Jun 1988

May 1990

May 1990

Ban on ruminant protein in ruminant feed

Jul 1988

   
Ban on export of UK cattle born before July 1988 feed ban  

Jul 1989

 
Ban on import of live ruminants and most ruminant products from all BSE countries    

Jul/Nov 1989

Ban on export of UK cattle >6 months of age  

Mar 1990

 
Ban on SBOb for use in animal nutrition; ban on export of SBO and feed containing SBO to EUccountries

Sep 1990

   
High-risk waste to be rendered at 133°C/3 bar/20 min (or other approved procedure)  

Nov 1990

 
Ban on export of SBO and feed containing SBO to non-EU countries

Jul 1991

   
Ban on MBMd from SBO in fertilizer

Nov 1991

   
After Jan 1, 1995, rendering methods must sterilize BSE  

Jun 1994

 
Ban on mammalian MBM in ruminant feed  

Jul 1994

 
BSE surveillance includes immunohistologic features of brains    

Oct 1993

Ban on mammalian protein in ruminant feede

Nov 1994

 

Aug 1997

Ban on import of live ruminants and most ruminant products (including meat products) from all countries of Europe    

Dec 1997

Immunologic testing for ruminant protein in animal feed  

Jul 1995

 
Mammalian MBM prohibited from all animal feed/fertilizer

Mar/Apr 1996

   
Slaughtered cattle >30 months old (except certain beef cattle >42 months old) ruled unfit for animal use (hides for leather excluded)

Mar 1996

   
Mammalian MBM and MBM-containing feed recalled

Jun 1996

   
All mammalian waste to be rendered at 133°C/3 bar/20 min (or other approved procedure)  

Jul 1996

 
Cattle tracing system improved

Sep 1998

   
Quarantine of 3 sheep flocks imported from Europe with possible exposure to BSE (4 animals die with atypical TSEf)    

Oct 1998

BSE surveillance of fallen stock (downer cows) is intensified    

Oct 1998

Proposal to eradicate scrapie is rejuvenated    

Nov 1999

Allow export of deboned beef from cattle >30 months old born  after July 1996

Aug 1999

   
Prohibit use of animal protein, including MBM and blood meal (but excluding milk, or fish meal for nonruminants) in feed for any farmed animal species (effective January 1, 2001)  

Dec 2000

 
Prohibit importation of rendered protein and rendering wastes originating or processed in Europe    

Dec 2000


aIn Northern Ireland and Scotland, dates of implementation sometimes differed from those shown for England and Wales; in addition, individual European Union countries often adopted different measures on different dates.
b
SBO = specified bovine offals (brain, spinal cord, thymus, tonsil, spleen, and intestines from cattle >6 months of age).
c
EU = European Union.
d
MBM = meat and bone meal (protein residue produced by rendering).
e
Some exemptions, e.g., milk, blood, and gelatin.
f
TSE = transmissible spongiform encephalopathy.

 

Table B. Measures taken to prevent the spread of bovine spongiform encephalopathy (BSE) to humans


Precautions

Great Britaina

European Uniona

United States


Compulsory slaughter of BSE-affected cattle

Aug 1988

   

Destroy milk from affected cattle (except for milk fed to cows' own calves)

Dec 1988

   

Ban on import of UK cattle born after July 1988 feed ban

 

Jul 1989

 

Ban on SBOfor domestic consumption

Nov 1989

   

Ban on export to EUc of SBO and certain other tissues, including lymph nodes, pituitaries, and serum

Apr 1990

Apr 1990

 

Ban on export of live UK cattle (except calves <6 months old)

Jun 1990

June 1990

 

Ban on use of head meat after skull opened

Mar 1992

   

FDA recommends use of BSE/scrapie-free sources for materials used in dietary supplements; request for safety plans

   

Nov 1992

Cell lines used for biologicals should be BSE agent-free

   

May 1993

FDA requests that bovine source materials (except gelatin) used in manufacture of regulated products be restricted to BSE-free countries

   

Dec 1993

Bone-in beef only from farms with no BSE for 6 years; if not BSE-free, must be deboned with visible nervous and lymphatic tissue removed

 

July 1994

 

FDA requests that bovine-derived materials for animal use or for cosmetics and dietary supplements not be sourced from BSE countries

   

Aug 1994

Thymus and intestines from calves <6 months old made SBO

Nov 1994

   

Import of beef only from UK cattle 1) >30 months, or 2) from herds BSE-free for 6 years, or 3) if not BSE-free, deboned with visible nervous tissue and specified lymph nodes removed

 

July 1995

 

SBO ban broadened to include whole skull (SBM)

Aug 1995

   

MRMd from bovine vertebral column banned and export prohibited

Dec 1995

   

Removal of lymph nodes and visible nervous tissue from bovine meat >30 months exported to EU

Jan 1996

   

Ban on export of all UK cattle and cattle products except milk

 

Mar 1996

 

SBMban broadened to include entire head (excluding uncontaminated tongue)

Mar 1996

   

Slaughtered cattle >30 months (or certain beef cattle >42 months) ruled unfit for animal or human use (hides excepted)

Mar 1996

   

FDA urges manufacturers of FDA-regulated human products to take steps to assure freedom from BSE agent

   

May 1996

Partial lifting of export ban on tallow and gelatin

 

June 1996

 

SBM ban broadened to include certain sheep and goat heads, spleens, and spinal cords (SRM)

Sep 1996

   

FDA recommends withdrawal of plasma and plasma products made from pools to which persons who later died of CJD had contributed

   

Dec 1996

CNSf tissues excluded from cosmetic products for use in EU

 

Jan 1997

 

BSE cohort cattle in UK ordered slaughtered and destroyed

Jan 1997

   

Proposed ban on SRMg in cosmetics for use in EU (effective October 2000)

 

July 1997

 

SBM controls for cosmetics and medicinal products

Mar 1997

   

FDA request to manufacturers that no bovine gelatin from BSE countries be used in injectable,  implantable, or ophthalmic products; and that special precautions be applied to gelatin for oral and topical use

   

Sep/Dec 1997

Ban on marketing cosmetic products containing SRM prepared before April 1, 1998

 

Mar 1998

 

Allow export of beef and beef products from cattle >30 months in certified BSE-free herds from Northern Ireland

 

Mar 1998

 

Importation of all plasma and plasma products for use in UK 

Aug 1998

   

FDA limits plasma product withdrawals to pools at risk for contamination by vCJD donors

   

Sep 1998

Slaughter and destruction of offspring born to BSE-affected cattle after July 1996

Jan 1999

   

FDA guidance to defer blood donors with >6 months cumulative residence in UK during 1980-1996

   

Nov 1999

Leukodepletion of whole blood donations from UK residents 

Jul/Nov 1999

   

Public FDA discussion about possible risk associated with vaccines produced with bovine-derived materials from BSE countries

   

Jul 2000

Withdrawal and destruction of a potentially tainted 1989 lot of polio vaccine from one manufacturer

Oct 2000

   

SRM ban implemented (effective October 2000)

 

Jul 2000

 

Ban on slaughter techniques that could contaminate cattle carcasses with brain emboli (e.g., pithing or pneumatic stun guns), effective Jan 2001

 

Jul 2000

 

All cattle >30 months old must have brain examinations for proteinase-resistant protein (PrP) before entering the food chain (effective Jan-June 2001)

 

Dec 2000

 

aIn Northern Ireland and Scotland, dates of implementation sometimes differed from those shown for England and Wales; in addition, individual European Union countries often adopted different measures on different dates.
b
SBO = Specified bovine offals (brain, spinal cord, thymus, tonsils, spleen, and intestines from cattle >6 months old).
c
EU = European Union.
d
MRM = mechanically recovered meat.
e
SBM = Specified bovine materials (SBO plus entire head, including eyes but excluding tongue).
f
CNS = central nervous system.
g
SRM = specified risk materials (SBM plus sheep and goat heads and spleens from animals of any age, and spinal cords from animals >1 year old).