動物衛生研究所

牛海綿状脳症(BSE)

プリオニクスWESTERNテストによるBSE初発例の再検査

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動物衛生研究所 プリオン病研究センター 横山 隆

2001年9月我が国で初めての牛海綿状脳症(BSE)の発生が確認された。同年8月15日に実施されたプリオニクスウエスタンキット(PW)で当該牛は陽性と判定されなかった。1)延髄閂部以外の試料が検査に供されたこと、2)セミドライ型の転写装置が用いられたこと、という2つの点の影響が考えられたが、凍結試料が僅少であることから十分な解析が行えなかった。BSE初発例(千葉例)のマウスへの伝達が成功したことから(RIIIマウスへの脳内接種試験で潜伏期408.6±28.2日)、千葉例の残余の凍結試料についてPWの再検査を行った。

脳乳剤の調整に使用した試料の正確な部位は特定はできなかったが、延髄閂部より尾側部と考えられる領域を使用した。対照として使用した英国より輸入したBSE試料(いずれも発症牛試料)についても同様である。PWおよび確定検査法のウエスタンブロット(WB)で検査を行った。なお、いずれのブロッティングにもタンク型の転写装置を使用した。図1に示したとおり、英国BSEのサンプル3,4に比べてわずかに弱いシグナルではあるが、BSE千葉例はどちらのテストでも異常プリオン蛋白質(PrPSc)が検出された(図1レーン2)。英国BSEの一症例(レーン1)は他の3サンプルに比較して微弱なシグナルを示した。

次に、BSE感染牛におけるPrPScの分布をPWで調べた。英国のBSE4検体を組み合わせて、各部位の試料を調整した。図2に示したとおり、BSE陽性牛(発症牛)の脳幹部においてもPrPScは均等に分布していないことが示される。特に、閂部より尾部では頭部に比べてPrPScの蓄積が少なく、BSEの診断におけるサンプリング部位の重要性が示された。

以上の結果または経験からBSEサーベイランス検査(WB)は以下の様に改善されている。1)延髄閂部を矢状断で2分割し、一方を生化学検査(ELISA,WB)他方を病理学的検査に供する。2)BSE検査のWBではブロッティングにタンク型の機器を使用する。3)BSEのWB検査では、希釈したマウスPrPScの検出によりWBの感度をチェックする。

本結果はこれら改善点の重要性を支持するものと考える。

謝辞:英国BSEの試料を分与頂いたMatthews博士(VLA, Weybridg)、本結果に関して貴重な示唆を頂いたSperling博士(Prionics AG)、品川森一博士(動衛研)、林浩子研究員(動衛研)に深謝します。

BSE千葉例のWB結果

BSE感染牛におけるPrPScの分布