動物衛生研究部門

ベトナム農業農村開発省家畜衛生局とのMOU調印式

掲載日: 2010年1月18日

ベトナム農業農村開発省家畜衛生局との「動物のインフルエンザに関する疫学調査、病原性解明研究協力」に関する覚え書き(Memorandum of Understanding: MOU)および「ベトナムにおける豚インフルエンザサーベイランス」に関する共同研究協定の締結

2009年10月19日、農研機構動物衛生研究所(動衛研)は、ベトナム農業農村開発省家畜衛生局との間で「動物のインフルエンザに関する疫学調査、病原性解明研究協力」に関するMOUおよび「ベトナムにおける豚インフルエンザサーベイランス」に関する共同研究協定を締結しました(写真1)。動衛研では2005年から文部科学省の「新興・再興感染症制圧に向けた国内外連携研究拠点形成プログラム」に参画し、タイ農業協同組合省畜産振興局との間で「東南アジアにおける鳥インフルエンザ等人畜共通感染症の疫学調査研究」に関するMOUを結び、タイ国立家畜衛生研究所にタイ-日本人獣感染症共同研究センター(ZDCC)を設置し、「タイにおける家畜および野鳥から分離されたHPAIウイルスの疫学解析」や「タイにおける豚インフルエンザウイルスの疫学解析」を主要テーマとして研究を進めてきました。今回のベトナム家畜衛生局とのMOU、共同研究協定の締結により、東南アジアにおけるインフルエンザを中心とした人獣共通感染症研究の更なる発展が期待されます。

ベトナムでは、食肉消費の約70%を豚肉が占めることから、養豚業は畜産の基幹産業となっています。一方、豚インフルエンザは豚の呼吸器症状を主徴とする病気で、他の病原体との混合感染によって重篤化して肥育豚に多大な損耗をもたらす重要な疾患のひとつです。ベトナムにおける豚インフルエンザの実態を把握し、その対策を検討することは同国の養豚産業における損耗防止に寄与することと考えられます。また、豚は、鳥型や人型のインフルエンザウイルスの混合感染によって新たな遺伝子再集合ウイルスを出現させる可能性があることでも注目されています。パンデミックインフルエンザ(H1N1)2009が人で大流行する中、本ウイルスの豚への感染も報告されており、豚インフルエンザウイルスの疫学調査は新型インフルエンザ対策にとっても重要な課題と考えられます。ベトナム家畜衛生局との豚インフルエンザに関する共同研究が、ベトナム、日本両国における新型インフルエンザ対策に貢献することが期待されます。

調印式には、ベトナム側からベトナム家畜衛生局次長Hoang Van Nam博士、国立獣医学診断センター所長Nguyen Van Cam博士、同ウイルス部門長Nguyen Tung獣医師他が、動衛研からは津田知幸研究管理監、人獣感染症研究チーム西藤岳彦上席研究員、廣本靖明主任研究員および竹前喜洋特別研究員が参加しました。また、調印式に際しては両国から情報提供として、「ベトナムにおけるH5N1インフルエンザウイルスの疫学情報」(ベトナム家畜衛生局疫学部Do Huu Dung氏)(写真2)、「ベトナムにおける豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)を中心とした豚感染症の疫学情報(写真3)」(国立獣医学診断センターウイルス部門長Nguyen Tung氏)、「リアルタイムPCRを用いた豚インフルエンザウイルスの迅速判別法(写真4)」(廣本)、「タイにおける豚インフルエンザの調査結果と豚インフルエンザの迅速検出法(写真5)について」(竹前)の講演が行われました。

MOU調印式の様子
写真1:MOU調印式の様子(前列右から津田研究管理監、Hoang Van Namベトナム家畜衛生局次長、後列右から廣本主任研究員、竹前特別研究員、西藤上席研究員)

Do Huu Dung氏による講演
写真2:ベトナム家畜衛生局疫学部Do Huu Dung氏による講演「ベトナムにおけるH5N1インフルエンザウイルスの疫学情報」

Nguyen Tung氏による講演
写真3:Nguyen Tung氏による講演「ベトナムにおける豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)を中心とした豚感染症の疫学情報」

廣本主任研究員による講演
写真4:廣本主任研究員による講演「豚インフルエンザウイルスの遺伝子診断法について」

竹前特別研究員による講演
写真5:竹前特別研究員による講演「タイの豚インフルエンザ調査結果」