動物衛生研究部門

ヨーネ病

ヨーネ病遺伝子検査 Q&A

Q1:融解曲線解析においてDNA検体のTm値が指示陽性DNAのそれよりも1°C程低いのですが、陽性と判定して良いのですか?

Q2:スピンカラムを用いるDNA精製においてDNA溶出液が膜に上手くしみ込まない時があります。DNAの回収に問題はないでしょうか?

Q3:融解曲線解析における解離温度の許容範囲は何°Cまでですか?
解離温度は指示陽性DNA全体の平均を用いるのか、あるいは最低、最高温度を用いるのですか?

Q4:1/2 wellでDNA陽性となり、計算上のDNA量が0.001pg以上の時、「ヨーネ病患畜」となるのですか? また、1/2wellでDNA陽性の時に再検査を行わなくて良いのですか?

Q5:融解曲線解析の方法が機種により様々ですが、統一された術式(温度の上昇スピード等)でなくて良いのですか?

Q6:融解曲線解析において指示陽性DNAの解離温度とほぼ同様な値を示す小さなピークが認められましたが、ピークの形状が指示陽性とは少し異なります。この結果をDNA陽性と判定するのでしょうか。

Q7:判定に係わる注意にマニュアル設定に関する注意事項が記載されていますが、具体的にはどのような場合にマニュアル設定が必要なのでしょうか?

Q8:自主淘汰で用いていたリアルタイムPCR検査と「ヨーネジーン・KS」による検査では、術式などが異なるところがあるのは何故ですか?

Q9:リアルタイムPCR装置によっては温度の変化を高速に行える装置がありますが、装置の最速の温度設定条件でPCRを行っても良いのですか?

Q10:試験成立条件にあるPCR効率が80%は超えますが、90%まで達しないことが多いのですが、どこに問題があるのでしょうか?

Q11:融解曲線解析で指示陽性DNAのピークが分かりにくいことがあります。どこが問題なのでしょうか?

Q12:リアルタイムPCRにおける検体の蛍光増幅曲線が、指示陽性DNAの反応と比べ、傾きが緩やかに見えることがありますが、何故ですか?

Q13:DNA量が0.001pg付近の検体では遺伝子検査の成績が、1/2 wellでしかDNA陽性にならないことがあります。また、2 wellでDNA陽性となった場合でも、各wellのCt値が大きく異なることがありますが、検査に問題はないですか?

Q14:糞便由来サンプルの検査成績が1/2 wellでDNA陽性でしたが、DNA量が0.001pg未満であったサンプルについて、同じDNA液を用いて再試験を行ったところ、全て陰性となりました。何故ですか?

Q15:糞便採材当日中に遺伝子検査が行えない時は、糞便を何°Cに保存すれば良いですか?

Q16:ヨーネ病検査マニュアルにある検定用糞便はどのようにして入手するのですか?

Q17:農場の全頭の遺伝子検査を行ったところ、50%以上がDNA陽性となるような結果がでた場合、どのような対応が必要でしょうか?

Q18:遺伝子検査でDNA陽性ですが、DNA量が0.001pg未満の牛についてはどのように対応すれば良いのでしょうか?

Q19:ヨーネ病検査マニュアルに載っていないリアルタイムPCR装置を購入することは可能ですか?推奨される装置はありますか?

 

Q1:融解曲線解析においてDNA検体のTm値が指示陽性DNAのそれよりも1°C程低いのですが、陽性と判定して良いのですか?

A1:検体のTm値が指示陽性DNAのTm値の±1.5°C以内であれば陽性と判定します。陽性検体におけるTm値の低下について、原因として最も可能性が高いのはDNA抽出過程における、DNA液へのエタノールの混入です。ヨーネスピン®を用いてDNAを抽出・精製する場合、Spin Columnの洗浄からDNA溶出の操作においてエタノールを含む洗浄液4の除去が不十分な時に(下図参照)、溶出後のDNA液にエタノールが混入する可能性があります。このような場合は、濾液を除去した後、Spin Columnを再度遠心して、Spin Columnに付着した洗浄液4を完全に除去してからDNAの溶出操作を行って下さい。ヨーネプレップ®では、DNA沈査を70%エタノール洗浄後、洗浄液を完全に除去してから、DNAをTE緩衝液で溶解することが重要です。

図. 洗浄液がカラムの先端やチューブとの間隙に 残っているとDNA液にエタノールが混入する。

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Q2:スピンカラムを用いるDNA精製においてDNA溶出液が膜に上手くしみ込まない時があります。DNAの回収に問題はないでしょうか?

A2: ヨーネスピン®を用いてDNAを抽出・精製する場合、DNAを溶出する為に溶出液5を添加した時に、溶出液5がDNA吸着膜全体に十分染み込むことが、効率良くDNAを溶出する為には重要です。溶出液5を添加する時は、Spin columnの膜の中心部へ溶出液を滴下するように注意して下さい。また、溶出液5を注意深く添加し、3分間静置した後も、膜に染み込まず、チューブ壁にほぼ全量の溶出液5が残ってしまう現象が複数のSpin columnで起こった場合、あるいは、抽出操作を別のSpin columnを用いて始めからやり直した時に、別のSpin columnでも同様の現象が認められた場合は、その旨を販売元へ問い合わせて下さい。

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Q3:融解曲線解析における解離温度の許容範囲は何°Cまでですか?
解離温度は指示陽性DNA全体の平均を用いるのか、あるいは最低、最高温度を用いるのですか?

A3: 指示陽性DNAの解離温度は得られたTm値の平均値を用います。また、各糞便検体の解離温度の許容範囲はその平均値の±1.5°Cです。例えば、指示陽性DNAの解離温度が87.5°Cの場合、検体の解離温度が87.5±1.5°Cの範囲であれば陽性と判定します。

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Q4:1/2 wellでDNA陽性となり、計算上のDNA量が0.001pg以上の時、「ヨーネ病患畜」となるのですか? また、1/2wellでDNA陽性の時に再検査を行わなくて良いのですか?

A4:ヨーネ菌DNA量が0.001pg/2.5μLを超えた場合は、ヨーネ菌分離成績と高い一致率を示すので、定量陽性と判定します。下表に本検査法における成績例と各成績例に対する判定基準を示します。再検査については家畜防疫員の判断に従って、必要に応じて実施して下さい。
なお、定量判定で陽性となった家畜の「患畜」であるかどうかの判定については、家畜伝染病予防法施行規則別表第1に従ってください。

表. 検査成績の判定例

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Q5:融解曲線解析の方法が機種により様々ですが、統一された術式(温度の上昇スピード等)でなくて良いのですか?

A5:装置のデフォルト設定での解析を優先して下さい。また、機種によってはROX補正を行いますが、上手く融解曲線解析が行えない時は、ROX補正を外して実施してみて下さい。

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Q6: 融解曲線解析において指示陽性DNAの解離温度とほぼ同様な値を示す小さなピークが認められましたが、ピークの形状が指示陽性とは少し異なります(下図)。この結果をDNA陽性と判定するのでしょうか。

zu002Q&A

A6:赤い矢印で示した88°C付近の緩やかなピークは、何らかの原因でPCR反応液の蛍光が非特異的に低下した為に、融解曲線解析において小さなピークを形成したと思われます。融解曲線解析における生データ(Raw data、下図)を見ると、指示陽性DNA由来の増幅産物は86°C付近から蛍光強度が急速に低下しますが、当該サンプルの蛍光強度の低下速度は指示陽性と比べて明らかに遅くなっています。この為、一次微分のグラフ上では緩やかなピークとして表示されます。このような指示陽性DNA由来増幅産物と明らかに異なる融解曲線解析像を示したサンプルは陰性と判定します。

zu003Q&A

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Q7:判定に係わる注意にマニュアル設定に関する注意事項が記載されていますが、具体的にはどのような場合にマニュアル設定が必要なのでしょうか?

A7:自動解析モードで引かれたスレッショルドラインが非特異的なバックグラウンドの蛍光増幅曲線と交差する場合、スレッショルドラインの設定位置をマニュアルモードにより,交差しないように設定を変更します。その際,新たに設定するスレッショルドラインの位置は蛍光強度が指数関数的に増幅している範囲内且つ「ヨーネジーン・KS」の試験成立条件を満たす範囲内に設定します。

具体例

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Q8:自主淘汰で用いていたリアルタイムPCR検査と「ヨーネジーン・KS」による検査では、術式などが異なるところがあるのは何故ですか?

A8:自主淘汰に用いていた方法と診断キット「ヨーネジーン・KS」のヨーネ菌DNAの検出原理や検査方法は同様です。診断キットでは用いるUNGの至適温度が50°Cである為、UNG処理の温度と時間が従来の方法とは異なります。

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Q9:リアルタイムPCR装置によっては温度の変化を高速に行える装置がありますが、装置の最速の温度設定条件でPCRを行っても良いのですか?

A9:試験成立条件を満たす反応であれば、機械の最速モードでリアルタイムPCRを行っても構いません。

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Q10:試験成立条件にあるPCR効率が80%は超えますが、90%まで達しないことが多いのですが、どこに問題があるのでしょうか?

A10:リアルタイムPCR装置は定期的にメインテナンスされているでしょうか。ハードウエアーの不調によりPCRの効率が上がらない可能性が考えられます。また、PCRの効率は指示陽性DNAの反応を基に計算されますので、指示陽性DNAの希釈が正確に出来ていない場合は、PCR効率が大きく変動します。検査に際して指示陽性DNAの希釈は、キットの注意書きに従って慎重に行って下さい。

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Q11:融解曲線解析で指示陽性DNAのピークが分かりにくいことがあります。どこが問題なのでしょうか?

A11:バックグラウンドの蛍光が強く、温度上昇に伴ってバックグラウンドの蛍光強度が急激に低下する為に、陽性DNAの解離温度ピークが上手く描けないことがあるようです。装置によっては、ROX補正を解除して測定することにより、問題が解消される場合がありますので、機械の点検等を含め、メーカーのサポートセンターと相談して下さい。

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Q12:リアルタイムPCRにおける検体の蛍光増幅曲線が、指示陽性DNAの反応と比べ、傾きが緩やかに見えることがありますが(下図青線)、何故ですか?

zu005Q&A

A12:糞便から調製されたDNAサンプル中にPCR阻害物質が含まれる為にPCRの効率が落ち、指示陽性DNAの反応に比べてDNAの増幅が遅れる為だと思われます。

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Q13:DNA量が0.001pg付近の検体では遺伝子検査の成績が、1/2 wellでしかDNA陽性にならないことがあります。また、2 wellでDNA陽性となった場合でも、各wellのCt値が大きく異なることがありますが、検査に問題はないですか?

A13:0.001pg/well付近の量を示すサンプルのDNA量測定結果はばらつくことがあります。これはヨーネ菌遺伝子検査の性質上避けられないことです。0.001pgという数字は、計算上はヨーネ菌1個分の約1/5のDNA量です。ヨーネ遺伝子検査では、糞便からのDNA抽出過程でヨーネ菌DNAはかなり細かく断片化されます。そして、そのDNA断片中のIS900をリアルタイムPCR で検出しますが、反応プレートの1 wellに分配されたヨーネ菌DNAの中にはIS900を含まない、あるいは1個から複数個のIS900を含むDNA断片の場合など、様々な違いがwell間で生じます。その為、ヨーネ菌DNA量が薄い時は、同一DNAサンプルであってもwell毎に反応が異なり、計算上のDNA量も違ってくる可能性があります。

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Q14:糞便由来サンプルの検査成績が1/2 wellでDNA陽性でしたが、DNA量が0.001pg未満であったサンプルについて、同じDNA液を用いて再試験を行ったところ、全て陰性となりました。何故ですか?

A14:このようなことが起こる原因としては、サンプル中のDNA量が極めて少なかった為に再試験では陽性とならなかった、あるいはサンプルを分配する時にDNAのコンタミネーションを起こした等の原因が考えられます。再検査については家畜防疫員の判断に従って、必要に応じて実施して下さい。

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Q15:糞便採材当日中に遺伝子検査が行えない時は、糞便を何°Cに保存すれば良いですか?

A15:希釈された糞便液は-20°Cに保存が可能です。希釈前の糞便は、採材の翌日に検査を行うのであれば4°Cに保存し、それ以上の期間の保存が必要であれば-80°Cに凍結保存して下さい。糞便をそのまま保存する場合は、-20°Cよりも-80°Cに保存した方が遺伝子検査におけるDNA量の低下が少ないとの報告があります。

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Q16:ヨーネ病検査マニュアルにある検定用糞便はどのようにして入手するのですか?

A16:公的機関の場合は、(独)動物衛生研究所と研究用試料提供契約書を結ぶことにより無償で提供されます。

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Q17:農場の全頭の遺伝子検査を行ったところ、50%以上がDNA陽性となるような結果がでた場合、どのような対応が必要でしょうか?

A17:PCRの各試薬やDNA調製用試薬のコンタミネーションがないことをまず確認して下さい。コンタミネーション等ではない場合、農場内にヨーネ菌を大量に排菌している感染牛がいると、農場の環境がヨーネ菌で汚染される為、感染していない牛も遺伝子検査でDNA陽性となる可能性があります。このような遺伝子検査のDNA陽性率が極めて高い農場では、大量排菌牛を早急に摘発淘汰すると共に、清掃と消毒により農場の環境中ヨーネ菌の清浄化を図り、再検査を実施することを推奨します。

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Q18:遺伝子検査でDNA陽性ですが、DNA量が0.001pg未満の牛についてはどのように対応すれば良いのでしょうか?

A18:防疫対応については、農林水産省消費・安全局動物衛生課にお問合せください。 なお、Q17の場合のように農場が高濃度に汚染され、その為に遺伝子検査が陽性となったと疑われる場合には、当該農場に対する衛生対策を講じた後に、再検査を行うことを推奨します。

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Q19:ヨーネ病検査マニュアルに載っていないリアルタイムPCR装置を購入することは可能ですか?推奨される装置はありますか?

A19: 今後、新しい装置が市販されると思われるので、ヨーネ病検査マニュアルでヨーネ病の遺伝子検査に使用可能であることが確認されていない機種であっても、検査に使用することは可能だと思います。その際は、キット付属の指示陽性DNAを用いた検査において、試験成立条件が当該機種で全て満たされるか否かが重要です。また、当該機種における指示陽性DNAのTm値を陽性の解離温度とします。推奨する機種は特にありません。

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