次世代作物開発研究センター

育種素材開発ユニット

インド稲に由来する穂発芽耐性遺伝子Sdr4をもつ日本晴は収穫前の降雨による穂発芽を抑制することが出来ます(Sugimoto et al. 2010 PNAS 107:5792)。同じインド稲由来の収量性遺伝子TGW6は転流能の向上とシンクサイズ(粒大)の増大により収量を増大することが出来ます(Ishimaru et al. 2013 Nat Genet. 45:707)。外国産の陸稲品種由来のDRO1は根を深くすることで、乾燥した圃場でも収量を確保することが出来ます(Uga et al. 2013 Nat Genet. 45:1097)。高温不稔を回避するための早朝開花性(EMF)、ダイズの矮性変異の解析にも取り組んでいます。

育種素材開発ユニットでは遺伝子の単離・機能解明を元に育種素材となる準同質遺伝子系統や突然変異系統を育種部門に提供することをミッションとしています。準同質遺伝子系統とは99%以上の領域がコシヒカリやIR64の様な優良品種で、残りの1%~0.1%の領域が遺伝子を見つけてきた品種に由来するゲノムに置き換わっているものです。このような系統は改良した形質以外はコシヒカリなどの親品種にきわめて近く、コシヒカリは様々な品種の育成に使われていることから、日本での品種改良に貢献することが期待されます。具体的にはイネの穂発芽耐性遺伝子、収量性遺伝子、深根性遺伝子を単離し、準同質遺伝子系統を育成してきました。さらに、イネ穂発芽耐性遺伝子の知見を用いたコムギへの穂発芽耐性の付与、イネ高温不稔を回避する早朝開花性遺伝子、耐倒伏性の向上を目指したダイズの矮性遺伝子などの特定にも取り組んでいます。
さらに、育種素材ユニットではイネ、コムギ、ダイズの突然変異集団を育成しているほか、目的とする遺伝子に変異を持つ系統をTILLING法やHRM法などによる選抜技術をもつため、単離した遺伝子にマイルドな変異を導入することにより最適化する、あるいは、機能解析研究から明らかになった上流や下流の遺伝子の変異により、新しい遺伝子を創り出すことにも取り組んでいます。イネは「コシヒカリ」、コムギは「きたほなみ」、ダイズは「サチユタカA1号」と言った優良品種に対して変異を誘導し、ダイズは「ハロソイ」と呼ばれる米国の多収品種のトランスポゾンタギング集団を育成しました。
今後、遺伝子の単離や機能解析などの知見をベースに単離した、あるいは、創り出した優良な遺伝子を集積した系統の育成や農研機構で育成された「やまだわら」、「北陸193号」などの超多収米への導入や変異体集団の育成をすすめます。


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