畜産草地研究所

菌根菌によるリン酸供給機構の解明・低硝酸態窒素含量品種の開発

微生物機能を活用したリン酸供給を目指し、野草地における菌根菌の生態を明らかにするとともに、菌根菌の持つリン酸供給機構を解明した。また、硝酸態窒素濃度の低い安全な牧草の供給を目指し、硝酸態窒素の蓄積に関わる遺伝子を明らかにするとともに、硝酸態窒素濃度の低いイタリアンライグラスを開発した。

背景

高等植物の根に共生してリン酸を供給する働きのある菌根菌などの微生物や家畜ふん尿の活用による低コストな飼料生産が求められている。しかし、これらの微生物の機能や生態には不明な点が多く、また堆肥などを多量施用した場合には牧草への硝酸態窒素の蓄積が問題となる。

目的

菌根菌のリン酸供給にかかわる機構を解明し、荒廃地における植生の回復やリン酸肥料の削減技術に資する。また、植物における硝酸態窒素の蓄積機構を解明し、硝酸態窒素が蓄積しにくい牧草を開発する。

成果

  • 野草地における菌根菌の共生率は60~85%と高いことを明らかにするとともに、共生している菌根菌群を解明した。
  • 菌根菌の菌糸内では、非常に発達した管状構造を持つ液胞と酸性小胞がリン酸輸送を担う細胞内小器官として存在することを初めて見出した。また菌糸から植物へのリン酸供給に、菌根菌のアルカリホスファターゼが関与していることを明らかにし、菌根菌によるリン酸の輸送形態であるポリリン酸の定量法を開発した。今後、菌根菌によるリン酸供給量の定量化と菌根菌活用技術の開発を行うことにより、リン酸肥料使用量の低減が期待される。
  • 植物における硝酸態窒素の蓄積には複数の遺伝子が関与しており、その遺伝子の機能を失わせると、硝酸態窒素濃度が低下することを実証した。
  • 選抜を重ねることにより、硝酸態窒素濃度の低いイタリアンライグラス品種「優春」(畜草研、茨城畜試、種苗会社の共同育成)を育成。平成19年から市販の見込みで、硝酸態窒素の含量の低い牧草の供給により牛の硝酸中毒回避が期待される。

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