畜産草地研究所

体細胞クローン牛の効率的作出法の開発

体細胞クローン牛を効率的に作出しその健全性を評価するために、細胞融合から細胞分裂開始までの最適な時間の解明、発生初期に複数のクローン胚を集合・培養することによって細胞数の多い胚盤胞に発生させる技術の開発、ミトコンドリアDNAの遺伝機構の解明、およびクローン牛の出生後3ヶ月間の血液成分の特徴解明を行った。

背景

体細胞クローン作出技術は、優良家畜等の増殖・複製に有用な技術であり、クローン牛(図1)を産肉能力検定に用いることにより育種の効率化も可能である。しかし、クローン牛作出における流死産や生後直死の多発が大きな問題となっている。

目的

体細胞クローン胚の効率的な作出条件や、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の遺伝機構の解明を通して、体細胞クローン牛の安定的な生産を可能にする。

成果

  • 薬品刺激による細胞分裂の開始(活性化)を細胞融合後3時間に設定することにより、クローン胚の作出効率が向上した。作出した8細胞期のクローン胚の透明帯を除去し、3個を集合し培養した(図2)。その結果、胚盤胞の細胞数は223個となり、集合させなかった場合(89個)と比較して有意に細胞数が増加した。また、3個の胚を集合させることで、胚盤胞期への発育が100%となった。
  • 受精においては精子由来のミトコンドリアは完全に消失し、母子きょうだいでmtDNAは完全に一致する。核移植によるクローン牛および母系後代のミトコンドリア伝達を調べ、母子きょうだいで認められるドナー細胞由来mtDNAの割合が必ずしも同一ではないことを明らかにした。また、世代交代の過程でその伝達性は変化し、ドナー細胞に由来するmtDNAの割合が後代で増加する例があることを確認した(図2)。
  • 生後の体細胞クローン牛10頭は、一般牛4頭と比べて出生直後の赤血球数は少ない傾向があるが、その他の血液生化学成分については、ほとんどの項目で3ヶ月以上生存しているクローン牛と一般牛と差は認められなかった(図4)。
  • 以上の成果のうちクローン牛のミトコンドリアDNA伝達に関する成果は、細胞質遺伝に関する基礎的知見を得たものであるとして平成15年度日本農学進歩賞を受賞。

図

研究の今後

体細胞クローン胚における個体発生機構の解明などを行い、体細胞クローン牛を安定的に生産し、クローン技術を畜産技術として利用可能にする。