畜産草地研究所

乳牛の泌乳制御における新たな生理活性物質の動態

グレリンによる乳牛の成長ホルモン分泌作用と脂肪組織におけるインスリン抵抗性誘導因子であるレジスチンの発現を解析し、新たな生理活性物質の作用及び動態から乳牛の泌乳制御機構を解明した。

背景

泌乳牛では、成長ホルモン(GH)の分泌促進によってインスリン抵抗性が亢進し、乳合成に必要なグルコースなどの栄養素をインスリン感受性の筋肉や脂肪組織ではなく、インスリン非感受性の乳腺に効率的に分配していると考えられる。また、近年実験動物を使用した基礎研究により、消化管から分泌されるグレリンがGHの分泌を促進すること、脂肪組織で産生されるレジスチンがインスリン抵抗性に関与することが分かってきた。しかし、これらの生理活性物質が泌乳牛の乳生産に関与しているかどうかは不明である。

目的

乳牛のGH分泌に対するグレリンの作用と、泌乳及び乾乳期におけるレジスチンの発現を解析し、乳牛の泌乳制御機構の解明を目指す。

成果

  • 泌乳量の多い乳牛ほどGH分泌とインスリン抵抗性が高く、栄養素を体への蓄積ではなく乳生産に効率的に分配していることを明らかにした(図1)。また、成長と泌乳の両方に重要な役割を果たすGHの分泌について、成長期のGH分泌には視床下部から分泌されるGH放出ホルモン(GHRH)が重要であるが、泌乳期のGH分泌ではグレリンの役割が増大することを明らかにした。(図2)
  • 泌乳最盛期の乳牛の脂肪組織におけるレジスチンの発現量は乾乳期に比べて高くなること、逆に乳腺組織におけるレジスチンの発現量は乾乳期よりも低いことを明らかにした。脂肪組織におけるレジスチンの発現調節が、泌乳期のインスリン抵抗性を介する乳生産に重要な役割を果たしていることを明らかにした(図3)。

図

研究の今後

グレリンやレジスチンを始めとする新規泌乳関連ホルモンによる栄養素分配機構の特性を明らかにし、詳細な泌乳生理機構の解明をめざす。また、飼料給与方法などの具体的な飼養管理により泌乳メカニズムを効率的に機能させる技術開発に取り組む。