畜産草地研究所

第3期中期計画の開始にあたって

2011年4月15日掲載

畜産草地研究所所長 松本 光人


所長写真4月1日から農研機構の第3期中期計画が始まりました。畜産草地研究所は、機構内はもちろん、機構外の皆さんとも連携・協力し、我が国の畜産が現在抱える諸問題の技術解決のために、さらに将来の畜産の発展に寄与する新技術の開発に取り組んでいきます。
今、私たちが取り組むべき最も大きな課題は、国産飼料を利用した畜産を定着させるための技術開発です。日本の畜産は、関税0%で輸入される安価な飼料穀物に代表される海外の飼料を前提に拡大し、全体のシステムもそれに対応したものになっています。
しかし、発展途上国の所得の向上、人口の増加は、かつての日本がそうだったように、畜産物消費の増加、必然的に飼料穀物需要の拡大をもたらします。また、地球温暖化に伴う異常気象の頻発やバイオエタノールの増大などによる穀物需給の逼迫化も否めません。このような状況の中で、国民の皆さんに安心して国産畜産物を消費していただくためには、海外から輸入される飼料に頼るのではなく、我が国の国土を活用して生産された飼料をムダなく利用していくことが求められます。
そのために、水田を利用した飼料生産や草地や耕作放棄地の積極的な利用、我が国の風土や気候に合った飼料作物の開発や利用などに貢献できる技術開発を進めていきます。この実現は単に畜産のあり方を変えるだけではなく、国土・農地、地域文化の保全や国民の皆さんに安らぎをもたらすものになると思います。
飼料を有効に利用するためには家畜の生産性を高める必要もあります。飼料を効率的に利用することは家畜生産におけるコストの過半を占める飼料費の低減に直結します。しかしそれだけはなく、新たな育種手法を開発したり、受精から発生・分化さらに成長、ライフサイクルにおける損耗を少なくするための技術開発も重要です。そのためにはゲノム情報や生命現象に関する基本的理解が欠かせません。学術的な成果の発信にも努めていきます。
家畜が生産するふん尿は貴重なバイオマス資源でもあります。ただ単に処理するだけではなく有効に利用する技術開発も重要です。また、堆肥を造る時には発酵熱がでますし、畜産の現場では冷やしたり暖めたりの作業が多く熱の移動が頻繁です。これらを上手に使うことにより新たな省エネルギー技術を畜産から発信できると考えています。熱のことをいうのであれば、地球温暖化に対応した研究も世界に貢献するものです。
私たちの食卓に畜産物(食肉、卵、牛乳やその加工品)はなくてはならないものになっています。我が国の畜産物の品質には定評がありますが、少子高齢化が進む中、すべての世代の健康な生活のために、安全・安心で高品質な畜産物が求められており、「おいしさ」、「品質」、そして「機能性」に関する研究がますます重要となっています。畜産草地研究所は、畜産技術を通して健康で文化的な社会の実現のために貢献すべく、第3期中期計画を着実に実施していきます。