畜産草地研究所

「攻めの農林水産業」への対応

所長「攻めの農林水産業」においては、1) 生産現場の強化、2) 需要のフロンティアの拡大、3) 生産から消費までのバリューチェーンの構築が、重要な戦略として掲げられています。研究に大きく関わるのは、3) 生産から消費までのバリューチェーンの構築における「新品種・新技術の開発・普及、知的財産の活用等」で、品目毎に、新品種・新技術の開発・保護・普及の方針の策定・公表に向け農林水産省内で検討が進んでいます。「攻め」という観点からは、全ての戦略において研究に期待される部分は大きいものと考えており、「攻めの農林水産業(畜産業)」における畜産草地研究所の対応について、3つの重点戦略毎に概括してみました。

  • 生産現場の強化

  • 近年、外部支援組織への委託による、飼料作部門の畜産経営からの分業化が急速に進んでいます。外部支援組織としては、地域における飼料生産の中核的担い手としてのコントラクター(飼料生産受託組織)や、収穫・調達した粗飼料に各種の配合飼料等を混ぜたTMR(飼料成分が均一に保たれた混合飼料)を調製したうえで,畜産農家へ配送する組織であるTMRセンターがあります。農林水産省によると、平成12年度におけるコントラクターの組織数および受託面積は、180組織および61,581haでしたが、平成22年度には564組織および156,839haと急増しています。また、TMRセンターについても、平成15年度に34組織が平成22年度には109組織と急増しています。畜産の生産現場を強化するため、飼料の生産・調製・給与に関する技術開発については、飼料生産も行っている畜産農家を対象とした技術開発も必要ですが、外部支援組織を対象とした技術開発を加速化する必要性があります。例えば、コントラクター等の大規模作付けに適した飼料作物作付け体系として、新品種を活用した2年5作体系、トウモロコシ二期作体系、トウモロコシ・ソルガム混播栽培体系を開発し、その導入適地を明らかにする技術開発等が考えられます。

    平成23年度において、飼料自給率は26%であり、粗飼料自給率は77%および濃厚飼料自給率は12%となっている。平成32年までに、飼料自給率を38%、粗飼料自給率を100%および濃厚飼料自給率を19%まで増産する目標を設定しています。畜産の生産現場を強化するためには、国内で良質な粗飼料を生産するための研究開発に加え、高栄養な飼料を増産するための研究が重要です。

  • 需要のフロンティアの拡大

  • 需要のフロンティアの拡大については、農林水産物・食品の輸出促進が重要な施策となっています。

    畜産では、特に日本産牛肉の輸出額を現状の約50億円から250億円へ拡大することを目標としています。肉用牛等を対象に、生産者の改良ニーズに応えることができる新たな育種改良技術を開発し、日本ブランド化をはかります。高品質な日本ブランド牛肉を生産するためには、低コスト・高受胎率が可能な和牛受精卵移植技術等の確立も重要な課題となります。

  • 生産から消費までのバリューチェーンの構築

  • バリューチェーンの構築等の中で、畜産草地研究に関わる部分として6次産業の市場規模の拡大と農山漁村における再生可能エネルギーの活用があります。

    乳製品等の畜産物に対する消費者嗜好を明確化するとともに、畜産物の品質や体調調節機能等に関して科学的知見を蓄積し、新たな「おいしくて体によい」ブランド畜産物生産技術を開発することが重要です。再生可能エネルギーに関しては、グリーンエネルギーを活用した家畜管理・ふん尿処理システムや、家畜ふん等の畜産由来のエネルギー利用技術などの開発が研究課題となります。

上記以外にも、畜産草地研究所においては「攻めの農林水産業」に資するための研究を推進していきます。

2013年11月
農業・食品産業技術総合研究機構
畜産草地研究所 所長 土肥 宏志
[就任挨拶]