農作業安全コラム

あとみよそわか

R3年3月 大西 明日見

 桃の節句が間近となりました。コロナ禍においても季節は進み、春の訪れを実感するようになります。今シーズンの農作業が既に始まっている方、シーズン関係なく作業をされている方も大勢いらっしゃるかと思いますが、これからシーズンを迎える方も多いのではないでしょうか。

 さて今回は、初めて目にして以来、ずっと印象に残っている呪文をご紹介してみたいと思います。

 「あとみよそわか」
 その昔、国語のテスト問題か何かで、小説家・随筆家の幸田文さんの随筆の一部を読む機会がありました。彼女は家事全般を父親(幸田露伴)から躾けられましたが、その中の掃除の稽古にまつわるエピソードで登場した言葉です。
 掃除の稽古が終わり、挨拶をして立ち去ろうとすると「あとみよそわか」と声をかけられました。何かと思って振り返ると、ちゃんとやったつもりでも呪文を唱えてもう一度見直すのだ、というものでした。

 この『もう一度見直す』というのが、何にでもあてはまることで、もちろん農作業安全においても大事なことではないかと思うのです。
 わかりやすい例としては、作業場を後にするときがあるでしょう。今ご紹介した掃除と同じで、整理・整頓、掃除がきちんとできているか、し忘れた所がないか、次に使うときのためにもう一度見直したいですね。きれいな現場は事故が少ないと言われています。
 見直し方はいろいろあり、「そういえば今日、機械からいつもとちょっと違う音がしていたかな?」と思い返してみることや、「今、シートベルトをきちんと締めたかな?」というくらいの小さな見直しもあると思います。
 毎回、隅から隅まで念入りに再確認をしましょう、とまでは申しません。チラッと見直すだけでも、気づけることがあります。「あとみよそわか」、何だか耳に残る響きではありませんか?お役立ていただければ幸いです。

 ちなみに、掃除のエピソードは「父・こんなこと」(新潮文庫)という本に収められた一節です。ご興味ある方はどうぞ。

 

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