高齢ドライバーと安全
H16年1月 中野 丹
昨年の数少ない嬉しいニュースとして、一年間に交通事故で死亡した人が46年ぶりに8000人を下回った事が挙げられています。
減少にいたった理由として、警察庁では、飲酒運転による死亡事故が、罰則の強化により大幅に減ったことや、シートベルトの着用率が上がったためと分析していますが、一方で、高齢者が死亡するケースは依然多く、今後も重点的な課題といわれています。
一般的に、加齢により、視力や聴力、反応速度など身体的能力が衰えるのは避けられませんが、高齢ドライバーによる交通事故の原因として、身体的能力の衰えの他、長い運転歴からくる能力への過信が指摘されているところです。70歳以上になると、自動車の運転免許の更新時に講習を受けることが義務付けられたのもそれらの自覚を促す有効な方法と考えられているからです。
農作業事故では60歳以上の事故が8割程度を占め、農業者の高齢化は交通事故以上に深刻な問題となっています。農業機械を運転する高齢者のなかには自動車の免許更新時の講習とは無縁の人も多いのですが、例えば「青信号が点滅している時間内に、横断歩道を渡りきれない」、「作業中に何かとぶつかった」、「作業中に転倒しそうになった」、「機械の脱輪」、「機械を何かにぶつけた」などのヒヤリとした経験がないかを思い起こして、あらためて自分の運転能力をチェックしてみてはどうでしょうか。
若い時には運転がうまくても、年齢とともに動体視力や反応速度は衰えていき、その衰えを自覚できないことが、事故に結びつくといわれています。自分の身体的能力や判断力などを、上記のようなヒヤリ体験から自覚することで、農作業事故を減らすきっかけとしていただければと願っています。