農作業安全コラム

地域に対応した安全対策が重要

H16年6月 石川 文武

 2004年4月にJICAの短期専門家としてモロッコに行き、農作業安全の調査などを行った。麦・ポテト・畜産が主作目である平坦地域と、麦のほかオリーブ、豆類、果樹も作付されている中山間地域を対象とした。平坦地域では、麦の収穫・藁処理、揚水作業で事故が多く、中山間地域では、収穫物等の運搬に関係する事故が多かった。機種では、トラクタ、コンバイン、ベ―ラ、トレーラ、ディスクハローなどで、家畜管理に係る事故もあった。

 日本ではあまり聞くことのない事故の様子として、トラクタ添乗者の転落、トラクタとトレーラの連結不十分による離脱事故(離脱に伴う添乗者の転落、ひかれ、トラクタ転倒など)、培土・覆土作業時にディスクハローのフレーム上に乗っていて転落したり、旋回時に振落とされる事故などがあった。

 農作業だけでなく社会全般で安全の意識が浸透していないことと、作業機の安全装備が不確実なこと、道路状況が悪くても速度をあげて移動すること、等が事故を大きくしている原因と考えられた。また、安全指導・対策には、地域の特性を加味して行う必要性を感じた。

 日本では、水田主体で進入路に係る事故が増えているが、畑作農業では圃場進入・退出に伴うトラブルは少ない。さらに、ヒヤリ体験調査などから、水田地域、畑作地域、果樹地域などによって、事故機種に偏りもあることもわかり、きめ細かな対策を立て、産学官共同で、少しづつ事故減少に取組む姿勢が大切である。

 

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