農作業安全コラム

地球益と農作業安全

H17年12月 菊池 豊

 先日、「地球白書」で有名なレスターブラウン氏の講演会に参加する機会があった。学生時代、同書に感銘を受けたが今回も示唆に富んだものであった。

 講演では、第二次世界大戦後の日本農業の発展から衰退までの過程をジャパンシンドロームと命名した。現在、韓国、台湾、中国でも同様な兆候が見受けられ、国際的に食料を買いあさっていると指摘する。たとえば小麦1L生産するために1000Lの水が必要で、間接的に水や石油を輸入していることになる。これは砂漠化や地域紛争の背景になっている。つまり、生産力の減少が地球益を損なっているのである。

 近年、日本の農家数は毎年4万戸程度減少しているが、農作業死亡者数は年間400名程度で事故が離農に直結すると仮定すれば、とんでもない数字である。

 数年前に農林水産省の農作業安全対策予算が廃止されたが、新たに農作業保安指導員の育成を推奨しているとのこと。安全対策の新機軸を期待する。

 

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