農作業安全コラム

農業従事者の高齢化が農作業事故に及ぼしている影響

H20年8月 森本 國夫

 全国の農作業死亡事故は、農業従事者が減少傾向であるにもかかわらず、年間400件前後の横ばい状態が続いています。これには農業従事者の高齢化(図1)が関係していると考えられますが、その影響はどの程度なのでしょうか。今回は、あまり高齢化が進んでいない1975年(昭和50年)の農業従事者の年齢階層別の人口比率を求め、その比率が以降も変化しなかったと仮定する方法で推算してみました。こうして得られたのが図2です。推定した死亡事故件数は、年を経るごとに実際の件数との差が大きくなり、高齢化の影響は想像以上に大きいようです。

図1 1975年と2003年における農業従事者の年齢階層別人口比率
図2 農作業死亡事故件数に対する高齢化の影響

 

《推算方法の説明》
 農林水産省の「農作業事故調査報告書」には、毎年の死亡事故を農業従事者の年齢階層別に10万人当たりに換算した死亡事故発生件数が掲載されています。その10万人当たり死亡事故発生件数と、1975年の農業従事者の年齢階層別の人口比率に換算した各年の年齢階層別の農業従事者人口とで、高齢化が進まなかったと仮定した場合の推定死亡事故件数を求めました。7月のコラムで取り上げたように高齢者の10万人当たり死亡事故件数は他の年齢階層に比べて多い(図3)ので、高齢者の人口比率が低いと死亡事故は減ります。なお、15歳未満は農業従事者数の統計に含まれないので、今回の推算では別扱いとしました。

図3 農業従事者年齢階層別の10万人当たり農作業死亡事故件数(1999年~2003年の平均)

 

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