農作業安全コラム

日韓研究交流セミナーの開催

H21年11月 中村 利男

 去る10月27日、「農業機械安全対策のフロンティア」と題して「日韓研究交流セミナー」が開催されましたので、今月はその概要をご紹介します。

日韓交流セミナーにて/革新工学センター理事:行本 修

 本セミナーは生研センター(現:革新工学センター)と韓国の農村振興庁国立農業科学院が協力し、農業機械の安全性向上のために毎年実施しているもので、今回で4回目となります。①農業機械安全研究における先端技術の応用、②農業機械安全に関する調査研究、③農作業分析を基盤とした技術開発の3つのセクションに分けて、日韓の研究者8名から報告があり、これらに基づき参加者間で活発な意見、情報交換が行われました。

 韓国サイドからは、①韓国の農業は、這う農業(~1970年)、歩く農業(~1990年)、乗る農業(現在)と変遷してきていること、②稲作の乗用機械化率が74%、園芸の機械化率は46%と機械化が進んでいること、③研究機関の改編が昨年行われ、現場・需要者中心の組織体制となったこと、④今後の重点事項としてエネルギーの削減技術の開発、自動化・ロボット化の研究開発、高齢化に対応した農作業安全の確保、農業の6次産業化等が挙げられること、⑤農業機械の事故は減少しているが、2008年度の事故実態調査(標本調査)では事故件数が13,714件で、うち歩行型トラクタ(韓国では運搬車として主に使用されている)によるものが78%、乗用型トラクタによるものが11%となっていること、⑥高齢者の事故が多く、田植え時期と収穫時期に事故が集中していること、⑦2007年度の調査ではトラクタのROPS装着率は80%で、運転者の78%がROPSの効果を認めていること、⑧シートベルト装着率は39%、利用率は9%となっており、シートベルトが改善できれば利用率の向上も可能と考えられること、⑨農業従事者の健康と安全管理の課題解決のため、人間工学に基づく作業環境の改善と機械操作部の改良研究も行っていること等が紹介されました。

 また、日本サイドからは、①「農作業安全eラーニングシステム」の開発、②農作業ロボットにおける安全性確保要件の検討、③女性・高齢者の安全性向上のための農業機械及び農業者の実態調査、④自脱型コンバインの緊急停止装置の機能向上、について説明・報告しました。

日韓交流セミナー/ディスカッション風景

 韓国と日本とは農業をめぐる社会・経済的状況、条件等の違いもあろうとは思いますが、ソフトウェア、ハードウェアの両面からの技術開発・研究により、農作業、農業機械による事故をいかに防止又は低減させ、農業の担い手を守り、農家経営の維持・安定を図るかが、共通の緊急かつ重要な課題であることに変わりがありません。そのためにも、今後とも相互交流を深め、連携・協力していきたいと考えております。

 

キーワード:安全装置・対策/研究
サブキーワード:国際/高齢者