農作業安全コラム

動き出した農作業事故情報の収集、分析体制

H22年11月 志藤 博克

 農林水産省による秋の農作業安全確認運動が終わりましたが、皆さんは今年も無事に秋の収穫シーズンをお過ごしになったでしょうか。

 農作業安全確認運動もそうですが、昨今の農作業事故撲滅への機運の高まりを受けて、農林水産省はこれまで以上に積極的な動きを見せています。そのひとつに農作業事故情報の収集、分析体制の強化があります。毎年、農林水産省が発表している農作業死亡事故調査結果は、人口動態調査の死亡個票から農作業事故と見なされる事例を振り分けて集計する流れとなっています。そのため、全国的な情報収集が可能である反面、発表までに時間がかかります。また、死亡事故に限られるため、単独作業中の事例では発生原因の特定が困難な問題もあります。

 今回の体制では、都道府県が独自に調査した結果を農政局を通じて収集するため、発表までの時間が短縮されること、負傷事故も含めた情報が集まること等が期待できます。まだ、すべての都道府県からの収集体制が整っていないこと、情報の質が不均一なこと等、解決すべき課題はありますが、生研センター(現:革新工学センター)もこの取り組みに積極的に関わっていきます。

 生研センター(現:革新工学センター)では、農林水産省と連携して集められた情報の分析をより体系的に行い、事故につながる要因の因果関係の解明や、事故原因の特定等に取り組む予定です。事故は様々な要因が複雑に絡み合って生じますが、そのメカニズムが明らかになれば、その対策も立てやすくなります。事故情報が継続的に集まるようになれば、様々な事故原因のリスクの大小もわかり、安全啓発のポイントも絞りやすくなります。最初から多くの分析結果をお示しすることは難しいですが、啓発活動の材料にお役立て頂くとともに、メーカーに対しても安全性向上のための改良の参考にして頂けるような情報を発信することを目標に、少しずつでも現場に情報をお返ししたいと思います。さらに、こうした情報を基に、これまでにも増して精力的に新たな安全装置の開発や安全で快適な作業についての研究を行い、安全で楽しい農業を実現するために汗を流します。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/研究
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