農作業安全コラム

田植機の後方転倒のしやすさについて

H27年10月 岡田 俊輔

 先日、とある大学から、田植機の事故分析のため後方転倒角について知りたいというご依頼を受け、田植機の重心位置を測定し、後方転倒角などを算出する機会がありましたので、季節外れですが、その結果をご報告します。過去のコラムでも記載されている通り、田植機で圃場から出るときは、後進が基本ですが、前進のまま進入路を上ろうとすると、機体の安定性がどのように変化するか検討してみました。

 調査結果を下の表に示します。運転者や苗が増えるにつれて、後方転倒角は次第に小さくなっていくのに対し、前側の転倒角に大きな変化はなく、40゜前後の転倒角を保っています1。圃場進入路の設計基準では、勾配を12゜以下とすることが望ましい2としており、いずれの条件であっても、この角度の範囲内で、かつ静的な(止まっている)条件であれば、機体が後方に転倒することはありません。しかし、過去の調査によると37%3の圃場で設計基準の12゜より大きい勾配だったという報告もあります。さらに車両前輪の分担加重は、走行性能の観点から一般的に20%以上を確保することが望ましいとされていますが、前側が12゜傾斜した場合には、運転者に加えて苗を載せた条件では全て20%未満となり、かなり転倒の危険がある状態となりました。

 また、実際に転倒事故が起こった圃場を調査したところ、進入路の際まで耕うんされていたため30cm程度の段差がありました。このような段差を乗り越えようとした場合を図に示します。進入路の際に段差があると、田植機は25゜程度傾くことになり、表と見比べると運転者や苗を載せた条件(c,d,eの場合)で後方に転倒してしまうことがわかります。

 これらは全て静的な条件での結果なので、前進時の加速が加わったり、路面に凹凸があったりすると、もっと簡単に後ろに転んでしまいます。このように、前進で進入路を上るのは危険ということがおわかり頂けると思いますので、進入路や坂道を走行するときの参考としていただければ幸いです。

  1. 後進で進む場合にもなるべく重心位置を低く保つため、苗載せ台から苗を降ろす必要があります。
  2. 「土地改良事業計画設計基準」を参考としました。
  3. この値は、調査地域によって大きく変わると考えられます。

 表 積載物の有無による転倒角と前輪分担加重の変化

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 図 段差乗り越え時の田植機の傾き

 

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