農作業安全コラム

当然知っていると思いきや

H27年11月 志藤 博克

 あなたは、どのくらい相手のことを理解してあげていますか?いえ、別に夫婦や親子の話ではありません。農作業に使う機械の話です。

 私は農作業事故の聞き取り調査も担当していますが、機械作業中の事故で「自分の力でどうにかできると思った」とおっしゃる被害者の方が多いのが気になっています。特に歩行用トラクタ(耕うん機、管理機、ティラーなどとも呼ばれます)といった小型機械での事故で多く聞かれます。歩行用トラクタは、見た目は小さくても人間より遥かに大きなパワーを持っています。硬い土を耕うんしているときに突然、速く走り出したり(ダッシングと言います)、バック時にハンドルが跳ね上がったり、コントロール不能に陥ると、到底、人の手では抗うことができません。
 また、乗用トラクタのユニバーサルジョイントに服が巻き込まれ、服が破れたお陰で九死に一生を得たという事故では、被害者の方が、カバーが脱落して剥き出しのユニバーサルジョイントに危険を感じていませんでした。95馬力のトラクタで回していたにも関わらず、「回転速度もそれほど速く感じないし、草が詰まっても止まるのだから、思い切り力を入れれば手でも止められそう」と思っていたそうです。

 機械のお陰で農作業は格段に能率アップし、楽になりました。それも人間を遥かに凌駕するパワーがあるからです。まず、そのことを再認識して頂き、正しく機械を扱って頂ければと思います。これを機会に取扱説明書も覗いてみてはいかがでしょう。そういうことなのか、と気付くことがあるかも知れません。
 えっ?奥様の取扱説明書ですか?残念ながら、持ち合わせがございません。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/乗用トラクター/歩行用トラクター/耕うん・代かき/点検・整備・清掃
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