農作業安全コラム

農作業事故はどのくらい多いのか?(その1)

H27年12月 積 栄

 単なる「年間400件」の話ではありません。

 ご承知のとおり、農作業死亡事故件数は毎年350~400件程度で推移しており、本ウェブサイトでも「死亡事故の動向」で毎年ご紹介しています。

 この数字は関係者には見慣れたものですが、各地の安全講習で農業者の方々とお話すると、肝心の現場ではこの数字がほとんど知られていないことを強く感じます。

 確かに、自らの周囲では事故は数年に一度起こるかどうか、というなかで、全国で「年間400件、毎日どこかで農業者が1人は亡くなっている」などと言われても今ひとつ実感に乏しく、この数字だけでは、農業者の方々に広く認知されるようなインパクトがないのかも知れません。しかし、重大事故の多さが自覚できないままでは、個別の注意点などを聞いても耳に入りにくいのが現実だと思います。

 そこで、この死亡事故件数を、農業者が死亡事故に遭う確率、つまり「農業者が10万人いたら、そのうち何人が亡くなっているのか」で考えてみます。

 図中の折れ線は、農業就業人口10万人あたりの死亡事故件数を年毎に示したものです。これを見ると、件数自体は横這いでも、農業者の数は減少しているため、死亡事故に遭う確率は増え続けていることがわかります。平成25年では、その数字は年間14.6人/10万人(農業の場合ほぼ1件=1人なので便宜上こう標記します。)にまで達しています。

 この数字をどう考えればよいでしょうか。全農業を仮に従業員1万人の企業に見立てた場合、その企業では年平均で1.46人、毎年1人か2人は仕事で亡くなる人(殉職者)を出すことになります。また、その企業で40年仕事をすると仮定すると、その間の殉職者は、年平均の40倍で約58人(従業員1千人規模に換算すると約6人)出るということになってしまいます。

 これらの数字を身近にある企業と思い比べてみてください。農作業事故がいかに多いかが、少しわかりやすくなるのではないでしょうか。次回のコラム担当時には、さらに他産業との比較や機械の台数あたりの事故の多さについても紹介したいと思います。

図

 

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