農作業安全コラム

転倒するってなに?

H28年6月 堀尾 光広

 農作業死亡事故の多くの割合を占めるのが、転倒・転落によるものとなっています。これにからんでということではありませんが、つい先日、転倒とはどういう状態なのかということが話題にのぼりました。昨年のコラムで田植機の後方転倒角の話がありましたが、安全鑑定では横方向の安定性に対しては「乗用型の機械にあっては、走行状態にしたときに30度まで傾けても転倒しない左右の安定度を有していること。」とし、特殊な構造の機械でこれを満たすことが難しい場合は転倒予防警報装置など転倒防止の対策を行うことを求めています。転倒しない角度とは、空車状態の機械を左右に傾けていって転倒するときの角度を云い、静的転倒角または最大安定傾斜角度とも呼ばれますが、停車した状態からゆっくりと傾けて測定をするものです。したがって走行状態のときにはこれよりもっと早い段階で転倒の限界となります(倒れます)。

 さて、転倒とはという話に戻ると、どこかに明確な定義があるのでしょうが、簡単に云うと「重心が底面積から外れたとき」が転倒で、それが計算で求めるときの根拠ともなっていると思います。となると当たり前の話、底面積ひいては輪距(左右車輪の取付け幅)を広げるほど転倒しにくくなるわけですが、操作性や作業性などの制約があります。田植機では、苗の植付をするところを通らないようにという配慮から、4条植えなら69~77㎝、5条は90㎝程度、6条以上では120から30㎝の輪距(後輪)のものが多くなっています。田植機の場合はほとんどのものが転倒角30度以上で、それをわずかに満たさないものでも警報装置を備えていますが、それ以外の乗用機械で安全鑑定基準を満たさないものがあれば、運転者が思っているより早く転倒の限界になることも考えられます。いまお使いの乗用機械の輪距がどうなのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。いえ、それよりなにより、傾斜したところに進入するときには、斜め方向に入らず、真っ直ぐ出入りすることを守るようにしましょう。

図

 図 乗用田植機の後輪輪距と静的横転倒角

 

キーワード:事故/安全装置・対策/田植機/移植・播種/運搬・移動/稲・麦・豆
サブキーワード:春季