農作業安全コラム

無理はしません

H28年9月 原田 泰弘

 毎日の食事で一番の楽しみは朝食です。それも果物。豊かな恵みを連想させる美味しさは勿論のこと、今日1日を乗り切る元気をいただいている感じも嬉しい。夏の盛りを何とか乗り越えた今、店頭にはブドウ、桃、梨といった元気な果実が並んでいます。ぎっしり詰まったダンボールを重そうに抱える店員さんを他所に、明日何をいただくか思い巡らすのは楽しいものです。

 収穫に限りませんが、農作業では、重量物を人手で取り扱わざるを得ない場面がまだまだ多いのが現状です。重い荷物を持上げたり、運んだり。こんなとき、私には気を付けていることがありますので紹介いたします。先ず、そのきっかけですが、・・・

 もう二十年近く前になります(時効)。私より若干若いS氏と実験装置を配置していたときのこと、たまたま位置が悪く、天井のクレーンで運び出せないモノがありました。
 検討しているうちに、いつの間にか「二人でやれば動かせるんじゃない?」という話になりました。ちょっとだけ試したのですが、動いてしまいました。となれば、未だ若いつもりだった二人のこと。その装置の移動は、人力で完了させてしまいました。

 二日後、いつも元気なS氏の姿がありませんでした。「飲み過ぎ?」などと皆が思い始めた頃になってゆるりと現れ、「力が入らず、起き上がれませんでした。」とのこと。「昨日は何ともなかったのに。もう年なんですね。」少し悔しさのにじんだその照れ笑いを今でも憶えています。若さ故の過ちというのは認められないものだそうですが、若いつもり故の過ちには気恥ずかしさも加わるようです。 しかし、さらに翌日の朝、今度は私が起き上がれませんでした。枕もとで鳴る目覚まし時計を止めることもできず・・・

 以来、荷物を運ぶときには、先ず機械や道具の活用を考えてみるようにしています。「何とかなりそう。」とか、「(機械を用意する)時間が惜しいので、やってしまおう。」という雰囲気はとても危険です。何とか'ギリギリできそう'というところがネックです。ギリギリなので身体への負担もとても大きいのです。 このような雰囲気に陥ってしまう人は多いようで、例えばリスクを小さく感じ、達成したときのメリットが大きいと感じる場合などにやってしまうようです。紹介した例では、別の機械を用意する時間が省けたなどがメリットになりますが、今から思えばデメリットの大きさと吊り合っていませんでした。

 重量物の取り扱いといいましても、モノも状況も動作も非常に多く、一概に言うことができないのが農作業です。私の場合、道具を試したり、個々の荷物を軽くしたりするだけでなく、マイペースも心掛けています。絶対に無理はしないということです。「あれを台車代わりにしては?」など思いついたら即採用します。意外な組合せほど達成感がありますし、少し楽しくなることもありますから、お勧めです。

 

キーワード:安全装置・対策/運搬・移動
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