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自脱コンバインの手こぎ部緊急即時停止装置

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自脱コンバインの手こぎ部緊急即時停止装置
【背景・経緯】
 稲の収穫体系が、手刈りからバインダーへ、バインダーから自脱コンバインへと変化して、農業者は楽に収穫作業を行うことができるようになりました。しかし、自脱コンバインによる収穫作業が一般的になっている今日においても、多くの農家がほ場の四隅などでは未だに手刈りを実施しています。そして、手刈りした稲を手で自脱コンバインの脱穀部に投入する(手こぎ)際に、フィードチェンに手が巻き込まれてしまう事故が多く報告されています。
 これに対して安全鑑定では、平成11年度に自脱コンバインの手こぎ部にエンジンの緊急停止装置を備えること外部リンクを基準化しました。しかし、停止はするもののボタンを押した後にフィードチェンがすぐには止まらない、また手が挟まれた際に自力では手を解放できない場合がある、との報告がありました。緊急停止装置の導入は、比較的軽傷な怪我の低減には効果があるものの、入院が必要な怪我には効果が薄い、との調査結果もありました。
 そこで、自脱コンバインを市販している国内メーカー4社と共同で、手こぎ作業時に緊急停止ボタンの操作により手こぎ部が即時に停止することで、巻き込まれた際の重傷化を防止する装置を開発しました。

【開発機の概要】
1.アンケート調査に基づく手こぎ作業の実態把握
 回答を得たうち、3割以上の農家が、手こぎ作業における「本人や共同作業者のヒヤリ体験」を耳にしており、手こぎ作業の危険性を身近に感じていることがわかりました。危険な作業であるとの認識はあるものの、7割以上の農家が今後も手こぎ作業を継続する意向を示しており、比較的規模が大きな農家においても同様の傾向でした。

2.市販機こぎ胴開放レバーの操作力と女性の持上げ力の比較(手が挟まれた際にこぎ胴を開放することで、女性でも挟まれた手が解放できるかの確認)
 37名の女性(平均年齢51歳)を被験者に、片手での垂直上方への持上げ力を測定した結果、持上げ力の最小値が100N(10kg相当)を超えた被験者の割合は28%に留まり、50N(5kg相当)を超えた被験者の割合は97%、60N(6kg相当)を超えた被験者の割合は86%でした。このことから、こぎ胴開放レバーの操作力は50〜60N(5〜6kg相当)以下が望ましいと考えられました。しかし、2条刈のような小型の機種を除けば、市販機ではほとんどの機種でこぎ胴開放レバーの操作力が60N(6kg相当)以上であったため、フィードチェンに手が巻き込まれて挟まってしまった場合、女性にとって現在の操作力ではこぎ胴を開放して手を抜くことが容易ではないと考えられました(図1)。

3.開発要件の策定
 アンケートや試験の結果、さらには関連する規格を参考に表に示す6つの開発要件を策定しました。

4.要件を踏まえた装置の開発
 開発要件を満たした、「通常作業型」(図2−1、図2−2)、「片手操作型」(図2−3)、「両手操作型」(図2−4)の3方式を開発しました。「通常作業型」、「片手操作型」では、緊急停止ボタンの押下と同時にこぎ胴カバーあるいは挟やく桿が開放する機能を付加することで、挟まれた手を容易に抜き取れる可能性が確認され、重傷化防止に対して有効であると推察されました。手を挟まれる可能性がない「両手操作型」では、作業性の低下が懸念されましたが、一度に比較的多めのイネを供給することが可能であるため、大幅な能率低下には至らないと推察されました。

【普及状況と今後の課題】
 開発された装置は、2017年3月までで17型式の自脱コンバインにおいて市販化され、普及が拡大しています。今後は、巻き込まれる恐れがなく、かつ従来と同等の作業能率で手こぎが可能な装置の開発が望まれます。そして、畔際までしっかりと田植えを行っても、手刈りの必要がなく、さらに詰まりも容易には発生しない自脱コンバインの開発が最終的な目標になります。
(労働・環境工学研究領域 山ア 裕文)





図1 手こぎ作業のアンケート調査の結果


表 6つの開発要件






図2−1 通常作業型
                  手こぎレバーを倒すと、フィードチェン速度が低下する。
                  緊急停止ボタンの押下と同時にこぎ胴カバーが開放する。




図2−2 通常作業型
                   緊急停止ボタンの押下と同時に挟やく桿が開放する。




図2−3 片手操作型
              イネ載せバーを手前に倒すことで手こぎ作業可能な状態となり、
              左方に設置したボタンを押している間だけフィードチェンが駆動する。
              緊急停止ボタンの押下と同時にこぎ胴カバーが開放する。




図2−4 両手操作型
            右手で手こぎ操作ハンドルをイネの上からフィードチェンに押さえつけ、
            左手で手こぎ作業位置左方に設置したボタンを押すとフィードチェンが駆動し、
            どちらかを離すと停止する。


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