【概要・特徴】
 ため池の漏水防止を目的に、植生に影響の少ない低アルカリ性セメント系注入剤を開発した。
本注入剤は、主剤である「デンカコロイダルセメント」に、硬化剤を添加して作製する。硬化剤には、硬化時間が5秒から10分までの「デンカES-H 」と、10分から2時間までの「デンカES-L 」の2種類の製品があり(写真1)、注入工法によって選定する。
本注入剤は微細な針状水和物を形成するため(写真2)、透水係数は10cm/s以下に低減される。また、収縮量も水ガラス系注入材の100分の1以下であること、水に溶出する成分が無いことから、耐久性に優れる。
注入後の改良体は適度の強度(0.5〜1MPa)を示すため、地震等が発生した場合も大きな損害を被る恐れが少ない。
従来のセメント系や水ガラス系注入材は、pH値が13以上と強アルカリ性を示すが、本主材・硬化剤は無機系鉱物からできており、pH値が10以下で、アルカリの溶出はほとんどない。従って、植生や魚類への影響は極めて少ない。
 
【導入効果】
注入工法は、前刃がね工法とは相違し、貯水状態での施工が可能であり、元の景観を損なうことがない。
本注入剤の価格試算はリットル当たり31円で、従来の水ガラス系注入剤(27円)に比べて高くなる。
しかし、耐久年数の向上により相殺され、低アルカリによる環境負荷の低減効果が期待できる。
 
【導入上の留意点】

硬化剤は、二重管単相式ストレーナー工法や単管ロッド工法では「ES-H 」、二重管ダブルパッカー工法では「ES-L」を使用することが望ましい。

さらに浸透性が求められる地盤に対しては、主剤には「デンカコロイダルスーパ」を使用する方が好ましい。
 
【実証事例】
四国農業試験場(現農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター)の敷地内に、模擬ため池を作製し、注入を実施した。注入後に、水位を測定し漏水の無いことを確認した(写真3)。
長崎県佐世保市貯水池での本施工では、二重管単相式ストレーナー工法と二重管ダブルパッカー工法を併用し、約1000キロリットルの注入を行った(図1、写真4)。注入前の透水係数が1×10cm/sであったものが、注入後には1 ×10cm/sに改良された。
注:なお、現在「デンカES-H 」は、「デンカES 」として使用いただいている。
 
【開発企業・問い合わせ先】
電気化学工業株式会社 特殊混和材事業部第二課 平野 健吉
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-4-1
TEL:03-3507-5367
FAX:03-3507-5085

 

 
 
 

 

 

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