有機物連年施用がダイズシストセンチュウ密度及び菌寄生卵率に及ぼす影響
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[要約]
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麦桿厩肥、バーク堆肥を連年施用したあずき連作圃場では、ダイズシストセンチュウの卵密度が低い。また、シスト内の寄生性糸状菌の寄生を受けた卵の比率が高い。
北海道農業試験場・畑作研究センター・環境制御研究チーム
[連絡先]0155-62-9276
[部会名]生産環境
[専門] 作物虫害
[対象] 豆類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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ダイズシストセンチュウは豆類における重要害虫の一つであるが、殺線虫剤による化学的防除法は経済的な面で難しく、また抵抗性品種の利用は、あずきや菜豆については未だ育種されていないなどの問題が残り、有効な防除法がない。天敵微生物を利用した生物的防除法は、圃場の土壌環境条件の違いなどによって、その効果が一定ではないなど、安定した防除効果が得られるに至っていない。そのため、天敵微生物の一種である卵寄生性糸状菌に着目し、その活性を高め、本線虫密度を低下させる条件を検討するため、土壌環境の改善の一手法としての有機物施用の影響を調査する。
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[成果の内容・特徴]
1.あずき連作圃場に麦桿厩肥及びバーク堆肥を、それぞれ10a当たり 1.5t、3t、 5tを16年間連年施用した区では、有機物を施用していない区に比較して、10月の卵密度が低く、また、シスト内における天敵微生物の寄生を受けた卵の比率は施用量の増加に伴って高くなる傾向があった(図1)。
2.4月から9月までのあずき栽培期間中のシスト内の天敵微生物寄生卵率は、有機物無施用区では10〜15%程度で推移した。有機物施用区では8月までは無施用区とほぼ同等の寄生率で推移し、9月に30〜50%に上昇した(図2)。
3.天敵微生物の寄生を受けた卵から糸状菌を分離した場合、最も多く分離される糸状菌A(図3・未同定)は、有機物無施用区で分離された糸状菌の50%、有機物施用区の90%をそれぞれ占めた(表1)。
4.以上の点より、卵に寄生する糸状菌は、有機物を連年施用することによって活性が高まること、また雌成虫が新シストを形成する9月に最も高い寄生率を示し、翌年の播種時までに線虫卵を分解し、密度を低下させる可能性がある。
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[成果の活用面・留意点]
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1.限定された圃場内での試験のため、本線虫の生物的防除法の開発に利用するためには、輪作圃場など、異なる条件下におけるデータの蓄積が必要である。
[その他]
研究課題名:ダイズシストセンチュウ卵寄生菌の探索と環境要因が菌に及ぼす影響の検討
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:有機物連年施用によるダイズシストセンチュウ卵密度と発育異常卵率の変動、日本応用動物昆虫学会北海道支部講演要旨集、1996
マメ科作物連作圃におけるダイズシストセンチュウ卵の糸状菌寄生率に及ぼす有機物の影響、北日本病害虫研報、46、194−196、1995
有機物施用アズキ連作圃におけるダイズシストセンチュウ卵寄生菌相の違い、第40回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨、1996
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