低アミロ−ス米水稲新品種候補系統「北海280号」

 

[要約]水稲「北海280号」は中生の早に属する低アミロ−ス粳系統で、炊飯米の粘りが強く良食味である。「彩」に比べ耐冷性、いもち耐病性、収量性、外観品質などが改善されている。

北海道農業試験場・作物開発部・稲育種研究室

[連絡先] 011-857-9311

[部会名] 作物

[専門] 育種

[対象] 稲類

[分類] 普及

 

[背景・ねらい]

北海道産米の食味は、良食味品種の育成や栽培法の改善により著しく改良されてきたが、気象や土壌条件に恵まれない地帯では粘り、柔らかさの不足が指摘されている。これらの地帯の食味改善のため、炊飯米の粘りが強く、柔らかい特性を持つ低アミロ−ス米が期待されている。低アミロ−ス米品種としてすでに「彩」が育成され、高い食味評価を受けているが、熟期がやや晩く、耐冷性が不十分で、いもち病に弱いなどのため栽培適地が限定されているため、より早生で耐冷性の強い品種の育成を図ってきた。

[成果の内容・特徴]

1. 水稲「北海280号」は、道北53号/キタアケの交配組み合わせから選抜された低アミロ−ス粳系統である。

2. 出穂期は「彩」より5日以上早く、「きらら397」とほぼ同じである。

3. 稈長は「彩」、「きらら397」とほぼ同じで、穂長も同程度である。穂数は両品種より少ない。

4. 耐冷性は”やや強〜強”で両品種に優る。いもち病真性抵抗性型は“Pi-a、k”と推定され、葉いもちの圃場抵抗性は、“やや強”である。

5. 収量性は「彩」よりも高いが、「きらら397」に比べるとやや低い。

6. 外観品質は、「彩」よりも良好で、「きらら397」と同程度かよりやや劣る。

7. 炊飯米の食味評価は、白さがやや低いが、つや、粘り、柔らかさ、総合評価等が高く、「彩」に近い。一般米との混米で著しい食味向上が期待できる。 (表1)

[成果の活用面・留意点]

1. 上川(士別以南)、留萌中南部、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島、桧山の良地帯およびこれに準ずる地帯に適応し、8,000ヘクタ−ルの普及が見込まれる。

2. 単品利用のほか、混米用、米菓等の加工原料用として利用できる。

3. 健苗育成、適正植付け本数の確保、側条施肥等により初期生育の促進を図る。

4. 適期移植により出穂を早め、登熟温度を確保して品質向上を図る。

平成9年度北海道農業試験会議における課題名及び区分

課題名:水稲「北海280号」に関する試験(普及奨励)

 

[その他]

研究課題名:寒地向け新形質・超多収品種の育成

予算区分:新形質・次世代稲作

研究期間:平成9年度(平成元年〜9年)

研究担当者:荒木 均、今野一男、三浦清之、永野邦明、西村実、斉藤 滋、小林正男、刈屋國男

 

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