水稲湛水直播栽培における落水出芽法


[要約]
落水出芽法では、乾籾重量比100%の過酸化石灰粉粒剤コーティング種子を、代かきした水田に播種 深度10o程度に播種後、出芽始めまで10〜15日間落水管理を行う。従来の5o以内の浅播き・播種後湛水栽培 の問題点であった浮き苗と倒伏の防止に効果があり、北海道における湛水直播栽培の安定性が強化される。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲栽培科
[連絡先]0126-26-1518,0166-85-2200
[部会名]作物
[専門]   栽培
[対象]   稲類
[分類]   指導 

[背景・ねらい]
播種後出芽始めまで落水する「落水出芽法」を導入し、慣行法である浅播 き・常時湛水直播では不安定であった出芽・苗立ち、耐倒伏性および収量性の 安定・強化を図る。

[成果の内容・特徴]

  1. 落水出芽法では、埋没深度を慣行法よりもやや深くするが、苗立ちは良好 で、浮き苗が少なく、出穂後の倒伏もみられず、収量は慣行法(播種後湛水) に優る(表1)
  2. 落水出芽法では、種子近傍の土壌が酸化的に保たれるため、出芽・苗立ち の安定性が高まる(図1)
  3. 播種後落水期間中における地表下1pの地温を湛水条件と比較すると、日 最低地温は落水区でやや低いが、日最高地温はむしろ落水区で高い場合が多 い。
  4. 過酸化石灰粉粒剤16を乾籾重量比100%コーティングした種子の苗立ち率 は、播種深度10oで最も高い(図2)
  5. 条播および散播の各種湛水直播播種機を導入したところ、いずれの場合で も落水出芽法の実用性は高い(表2)
  6. 落水出芽法では、慣行法に比べてノビエが多発する(図3)。 入水直後の直播用一発処理剤と入水後14〜20日のノビエ専用剤との体系処理が効果的である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 水稲湛水直播栽培暫定基準(平成10年1月改訂)に基づいて実施する。
  2. 播種期は従来の播種後湛水栽培と同一で良いが、その地帯の低温の出現頻 度を考慮して決定する。

[その他]
研究課題名:低コスト稲作総合技術開発
予算区分:道費
研究期間:平成9年度(平成3〜9年)
研究担当者:田中英彦、谷川晃一、古原 洋、前川利彦
発表論文等:北海道の水稲湛水直播栽培における「落水出芽法」の適応性について
,育種・作物学会北海道談話会報,36号,1995
北海道の水稲湛水直播栽培における「落水出芽法」の適応性について2)
土壌還元の進行および播種深度が苗立ち率に及ぼす影響
,育種・作物学会北海道談話会報,37号,1996
目次へ戻る