卵寄生蜂の増殖技術の確立とヨトウガの被害軽減効果


[要約]
人工飼料を用いて増殖したヨトウガの卵を餌としたタマゴバチの増殖計画を作成した。輸入タマゴバ チ製剤をてんさいほ場に600カプセル/1ha(羽化した雌成虫数で338000頭/1ha相当数)を2週間間隔で2回放飼 することにより、ヨトウガによる被害を軽減することが可能である。
北海道立北見農業試験場・研究部・病虫科
[連絡先]0157-47-2146
[部会名]生産環境
[専門]   作物虫害
[対象]   工芸作物類
[分類]   指導

[背景・ねらい]
近年、農作物の安全性に対する要求が高まっていることを背景に、化学農薬に依存しない 病害虫防除法が開発されつつある。昆虫の卵に捕食寄生するタマゴバチは、古くから天敵と しての重要性が認識され、多くの研究がなされているが、国内ではいまだに増殖、利用技術 が確立されるには到っていない。そこで、タマゴバチを利用した鱗翅目害虫の防除体系の確 立のため、タマゴバチの大量増殖技術の確立およびてんさいを加害するヨトウガを対象とし た防除技術の検討を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. ヨトウガ卵を餌として、タマゴバチ雌成虫50000頭を得るための増殖計画を作成した (図1)
  2. てんさいほ場にタマゴバチを放飼する際の放飼地点間の距離は、5m程度が妥当である (表1)
  3. タマゴバチの放飼開始は、フェロモントラップによるヨトウガ雄成虫の誘殺が認められ たら直ちに行うのが最も効果的である。
  4. バイオトップ社(フランス)製造のタマゴバチカプセルをヨトウガの産卵期間に1回・ 1haあたり600個(雌成虫数33万8千頭/1ha)相当を2週間間隔で2回放飼することにより、 ヨ トウガ卵の被寄生率を高め、てんさいの被害を軽減することが可能である(表2)

[成果の活用面・留意点]

  1. タマゴバチ放飼のための計画的な大量増殖やタマゴバチ系統の維持の参考となる。
  2. バイオトップ社製造のタマゴバチは農薬未登録である。

[その他]
研究課題名: 卵寄生蜂活用によるヨトウガの密度制御技術の確立
予算区分:道費
研究期間:平成9年度(平成6〜9年)
研究担当者:小高 登・岩崎暁生
発表論文等:なし
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