フリーストール牛舎作業の労働強度と搾乳作業の省力化


[要約]
左僧帽筋の筋活動度から、搾乳作業の筋負担を軽減するための適正ピット深さは、身長の53%(パラレルパーラ)〜54%(ヘリンボーンパーラ)を指標とする。また、搾乳施設の規模決定時の搾乳ストールあたりの搾乳能率は、タンデムパーラ6.3頭/h、パラレルパーラとヘリンボーンパーラでは3.5頭/hを目安とする。
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農施設科
[連絡先]総合研究(農業物理)畜産・草地(畜産)
[部会名]農業施設
[専門]乳用牛
[対象]指導
[分類]

[背景・ねらい]
フリーストール方式における各管理作業の作業姿勢の実態と労働強度の計測及び、搾乳作業姿勢と筋負担を検討して、飼養管理作業の軽労化及び、作業者の体格に適した搾乳パーラ設計方法を提示する。さらに、ミルキングパーラ形式別の搾乳作業能率を明らかにするとともに、搾乳作業手順と作業能率の関係について検討して省力的な搾乳作業法を提示する。

[成果の内容・特徴]
  1. フリーストール方式での除糞や給餌作業は機械作業となり、主として夫が担当し立位や乗座位が多い。妻は主として搾乳作業を担当し立位が約9割を占める(図1)。機械作業のサイレージの切り出しや給餌、除糞などは乗座位が多く、心拍増加率は50%以下である。しかし、人力となる横断通路の除糞や、飼槽の掃き寄せ作業の心拍増加率は70%以上である(表1)。
  2. パラレルパーラではピットが深くなると左僧帽筋の筋負担が大きくなる。ヘリンボーンパーラではピット深さと左右の僧帽筋の筋負担に相関が認められる。搾乳作業の筋負担を軽減するための適正ピット深さは、左僧帽筋の筋活動度の最適範囲を8〜10%と設定すると、パラレルパーラでは身長の53〜56%、ヘリンボーンパーラでは身長の54〜58%と設定できる(図23)。
  3. 搾乳ストールあたりの搾乳能率の目安として、タンデムパーラで6.3頭/h、パラレルパーラとヘリンボーンパーラでは3.5頭/hを用いるとよい(表2)。
  4. 搾乳前処理時間が5分以上と極端に長い農家では、作業手順を片側8頭(全頭)対象から4頭ごとに区切るだけで、前処理時間は139秒短縮され1時間あたりの搾乳能率は10頭増加する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験のデータはミルククロー支持アームが装備されているパーラには適用しない。
  2. パーラ形式別の搾乳能率は、前処理作業内容や作業手順、作業者数等によって大きく変化するので、乳房の汚れ具合、最も少ない作業者数等を考慮して決定する。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分]
課題名:フリーストール牛舎作業の労働強度解明と搾乳作業の省力化(指導参考)

[その他]
研究課題名:大規模土地利用型酪農における省力的群管理技術の開発
予算区分 :国費補助(地域基幹)
研究期間 :平成6〜10年度

戻る