堆肥を施用した放牧地における牧草の採食性


[要約]
放牧地における堆肥の春施用では10a当り4t以下の施用量で採食性の低下は小さかったが、実際の施用に当たっては施肥標準の養分量から2t以下とする。また、1回目の入牧時期は施用後30日目が適当と考えられた。
天北農業試験場・研究部・草地飼料科
[連絡先]01634-2-2111
[部会名]畜産・草地
[専門]栽培
[対象]牧草類
[分類]指導

[背景・ねらい]
堆肥の草地への還元をさらに推進するために、影響が秋施用に比べて大きいと考えられる春施用を中心に、放牧地における堆肥の施用量及び施用後の入牧時期が採食性に及ぼす影響を化学肥料のみ施用と比較検討し、採食性を低下させない施用量及び入牧時期を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 10a当り2t及び4tの施用では採食性は施用後20日目入牧で低下するが、施用後30日目入牧ではほとんど低下しない。また、10a当り8tの施用では施用後30日目の入牧でも採食性は低下する(表1)。
  2. 施用後20日目入牧の1回目で認められた採食性の低下は、2回目ではほとんど認められず、堆肥施用の影響は1回目までである(表2)。
  3. 兼用利用における1番草を採草した後の放牧では採食性の低下はほとんどない(表3)。
  4. 施用後20日目及び施用後30日目のいずれの入牧時期も堆肥施用と化学肥料のみ施用の放牧草ではCP、硝酸態窒素、ADF及びNDF等の牧草成分の含量に明らかな差は認められず、堆肥施用がこれらの牧草成分に及ぼす影響は小さい(表4)。
  5. 堆肥の秋施用が採食性に及ぼす影響は春施用に比べて小さい。しかし、秋施用の場合、融雪水による肥料養分の流亡が環境に与える負荷が懸念されるので、これらの観点からの検討が必要である。
  6. 以上のように、春施用では10a当り4t以下の施用で採食性の低下は小さかったが、実際の施用に当たっては施肥標準の養分量から2t以下とする。また、1回目の入牧時期は施用後30日目が適当である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 天北地域の鉱質土の放牧地で未熟から中熟の堆肥を用いて得られた成績である。
  2. 堆肥施用にともなう減肥は「土壌診断に基づく施肥対応」に準じて行う。

[平成10年度北海道農業試験会議における課題名及び区分]
課題名:堆肥を施用した放牧地における牧草の採食性(指導参考)

[その他]
研究課題名:鉱質土壌、多雪地帯における環境負荷量の評価
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)

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