水稲の葉しょう褐変病および褐変穂の被害解析とその対策


[要約]
葉しょう褐変病は出すくみ穂率5%以上の発病で被害を生じ、稲体ケイ酸含有率が止葉期6%、成熟期10%以上で被害は回避できる。褐変穂による減収はほとんどない。着色米の発生は玄米の老化による生理現象であり、対策として適期刈り、稲体ケイ酸含有率の向上が有効である。薬剤による防除は両病害とも困難である。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第二科、栽培第一科
[連絡先]0126-26-1518
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]稲類
[分類]指導

[背景・ねらい]
水稲の葉しょう褐変病および褐変穂はいずれも薬剤による防除が指導されているものの、実質的な対応策がないのが現状である。そこでこれら病害について被害解析を行い、生産現場で実施しうる実用的な対策を示す。

[成果の内容・特徴]
  1. 葉しょう褐変病
    1. 葉鞘部の褐変症状は、葉しょう褐変病によるとは限らない。葉しょう褐変病は葉鞘に水浸状の斑紋を生じ、多発すると必ず出すくみ穂を伴う。
    2. 圃場において葉しょう褐変病を安定的に発病させる接種法を開発した。
    3. 多発すると不稔歩合・屑米歩合が増加し、出すくみ穂率5%以上で被害が生じる(図1)。
    4. 稲体(茎葉)のケイ酸含有率を高めるほど被害は顕著に軽減され、止葉期で6%、成熟期茎葉で10%以上を確保することで被害は回避できる(図2)。
    5. 薬剤による葉しょう褐変病の防除は困難であった。
  2. 褐変穂
    1. 淡茶米・背黒米からのAlternaria菌およびEpicoccum菌の分離率は低率である。またこれら淡茶米・背黒米は、無接種であっても遅刈りによって顕著に増える(表1)。以上のことから、淡茶米・背黒米は菌が直接玄米に感染して生じる症状ではないと考えられた。
    2. 褐変穂の病原菌の一つとされるAlternaria菌によって、籾の褐変が助長される。その結果として淡茶米の発生が増えるが、不稔や屑米は増えず、減収することはほとんどない(表1)。
    3. 着色米の発生軽減のためには、適期刈りが最も重要かつ実施可能な対策である。
    4. 稲体(茎葉)のケイ酸含有率を高めることにより、籾の褐変と着色米の発生を軽減できる(図3)。
    5. 濃茶米は粒厚が薄いものが多く、ふるい目の調整によって除去されるものが多い。
    6. 褐変穂に対して薬剤防除の効果はほとんど認められなかった。

[成果の活用面・留意点]
  1. 冷害年に甚大な被害をもたらす葉しょう褐変病と褐変穂に対する実用的な対策技術として活用する。
  2. ケイ酸質資材の施用については、平成6年度指導参考事項「低蛋白米生産のための稲体および土壌のケイ酸指標」に基づいて行う。
  3. いずれの病害に対しても、薬剤防除の効果は低く、実用的な対策にならない。
  4. 褐変穂に対するその他の耕種的対策(畦畔雑草の処理、防風網の設置)は昭和60年度指導参考事項「褐変穂の発生生態と防除」に準ずる。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:水稲の葉しょう褐変病および褐変穂の被害解析とその対策(指導参考)

[その他]
研究課題名:水稲の葉しょう褐変病および褐変穂の被害解析とその対策
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成5〜10年)

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