寒地の乾田播種早期湛水水稲の時期別生育指標


[要約]
寒地直播水稲の安定多収には主稈と下位(1〜4節位)分げつ穂を確保する必要があり、好適生育相は苗立数200本/m2以上と側条施肥による栄養制御が大切である。このため影響の大きい分けつ盛期(6葉期)を中心に好適生育量と生育・栄養指標を明らかにした。
北海道農業試験場・生産環境部・水田土壌管理研究室、・総合研究部・総合研究第1チーム
[連絡先]011-857-9244011-857-9300
[部会名]生産環境
[専門]栽培・肥料
[対象]稲類
[分類]指導

[背景・ねらい]
寒地の直播で安定多収を実現するには、出穂期を遅らせずに栄養生長量を確保することが大切で、そのためには播種出芽を早める必要があり、この点でも早期播種が可能な乾田播種早期湛水栽培は利点がある。寒地の乾田播種早期湛水栽培のこのような利点を生かし600kg/10a以上の安定多収を実現するための時期別生育指標を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
  1. 苗立ち密度は200〜250本/m2、穂数790本/m2以上、籾数3.6〜4.0万粒/m2、登熟歩合80%以上確保を目標とする。節位別穂の構成は、主稈と下位節位穂(1〜4節位)で86%程を確保し、5節位以上の分げつ穂や2次分げつ穂を少なくする(表1)。
  2. 収量は栄養生長中期(4〜6葉展開期)の生育経過に最も影響され、好適生育相の獲得には1〜4節位の下位分げつ、特に1〜2節位分げつの確保が大切である。また、苗立数が200本/m2以下では下位節位穂の構成割合が少なく、2次分げつ穂が著しく多くなるため生産は不安定である。側条施肥すると全層施肥にくらべて1〜4節位の下位分げつ穂構成割合が高まり、とくに1節位穂が多く確保される(図1)。
  3. 好適生育量は、6葉期で茎数600本/m2、乾物35kg/10a、茎葉の窒素含有率は3.6〜3.9%(葉緑素計値41〜45)程度である。有効茎決定期(7葉期)では、茎数940本/m2、乾物85kg/10a、窒素吸収2.9kg/10a、窒素含有率3.2〜3.6%(葉緑素計値41〜45)が好適である。この時期の葉緑素計値が38以下の場合は下位分げつや1穂籾数が少なくなる(表2)。
  4. 乾物重、窒素吸収量はそれぞれ草丈×茎数(乾物推定指標)、草丈×茎数×葉緑素計値(窒素吸収推定指標)から推定して診断できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本生育指標は、苗立数が200〜250本/m2の場合の結果であり、この範囲外は上記指標は適用の外である。
  2. 生育指標は、早生品種「ゆきまる」、道央以南の初期生育の良い稲作安定地域に適用する。
  3. 本生育指標を実現できた条件では窒素の玄米生産効率が高まり、低タンパク米の生産が期待できる。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:寒地の乾田播種早期湛水直播水稲の時期別生育指標(指導参考)

[その他]
研究課題名:寒地の水稲乾田播種早期湛水栽培における収量安定・向上技術の開発
予算区分 :経常・地域総合
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)
発表論文等:農林水産業北海道地域研究成果発表会講演要旨,30-39,1997.

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