乳用雄肥育牛における肝膿瘍の発生要因解析


[要約]
乳用雄肥育牛における肝膿瘍の発生要因として、育成期での粗飼料採食量の不足が認められ、発生低減のために育成期には良質の粗飼料を準備し、かつこれらを適切に採食させる混合給与方式をとることが重要である。
北海道立新得畜産試験場・生産技術部・衛生科、家畜部・肉牛飼養科
[連絡先]01566-4-5321
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]飼育管理
[対象]家畜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
牛の肝膿瘍は濃厚飼料を多給する肥育牛、特に乳用雄肥育牛に多発し、北海道でもなお約3割の牛に肝膿瘍の発生が認められている。そこで実態調査を中心に乳用雄生産農家での肝膿瘍の発生状況とその要因を明らかにし、生産現場における肝膿瘍低減対策を提示する。
[成果の内容・特徴]
  1. 調査農家について過去3年間、肝膿瘍発生率が28%を超えている農家を多発農家、それ以外を散発農家に区分し、飼料の給与方法を調査したところ、散発農家では混合給与方式が多く、多発農家では分離給与方式が多かった(図1および2)。
  2. 肝膿瘍発生率と育成期における1頭当たりの粗飼料給与量との間に有意な負の相関が認められ(図3)、肥育前期(図4)および後期にはその傾向が認められなかった。また、給与飼料中の粗飼料割合との間にも、育成期にのみ有意な負の相関が認められた。
  3. 肥育農家1戸からの出荷牛について、素牛を供給した農家ごとに区分して肝膿瘍発生状況を調査したところ、素牛農家の間に有意な差が認められた(図5)。肝膿瘍発生の最も多かった素牛農家では粗飼料給与量(図6)および給与飼料中の粗飼料割合が最も少なかった。
  4. 試験牛7頭を分離給与によって濃厚飼料と粗飼料を自由採食させ肥育素牛まで育成したところ、試験牛は濃厚飼料の採食量に依存して増体し、7か月令で目標とされる平均307kgに到達した。試験牛は濃厚飼料を選択採食し、粗飼料の採食は不十分であった。また、試験牛を剖検したところ肝膿瘍の前駆症状であるルーメン乳頭の接着が認められた。
  5. 以上の結果から、乳用雄肥育牛における肝膿瘍の発生要因として、飼料の給与方法および給与量に起因した育成期での粗飼料採食量の不足が認められ、発生低減のためには育成期に良質の粗飼料を適切に採食させる混合給与方式をとることが重要と考えられた。
[成果の活用面・留意点]
育成牛は濃厚飼料を選択採食するため、粗飼料採食量を増やすように十分量かつ良質の粗飼料を準備するとともに選択採食できない混合飼料として給与すること、そのための施設機械の装備が望ましい。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:乳用雄肥育牛における肝膿瘍の発生要因解析(指導参考)
[その他]
研究課題名:肥育牛における肝膿瘍の予防技術確立
予算区分:道単
研究期間:平成11年(平成8年〜12年)
研究担当者:川本哲、平井綱雄、小原潤子、松井義貴、及川学、草刈直仁、宮崎元

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