鶏卵黄抗体を用いたカスタム抗体の作成


[要約]
抗原を14日間隔で、皮下注射した鶏の卵から分離される卵黄抗体を、カスタム抗体として利用できる。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・家きん科
[連絡先]0125-28-2211
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]飼育管理
[対象]家禽類
[分類]指導
[背景・ねらい]
生物科学領域の拡大に伴い、分析を必要とする微量物質が極めて多種類になっている。抗原抗体反応を用いる分析は、感度の高い分析方法の一つである。この分析には、分析する微量物質に対応する抗体が必要となる。これらの抗体はカスタム抗体と呼ばれ、一つの市場が成立している。現在、ウサギなど哺乳動物を用いて抗体を作成しているが、卵黄抗体を用いることで、安価で大量の抗体が供給できると考えらる。今回の試験は、鶏の新たな利用機会を開拓し、さらには医薬や農業の分野で利用される高付加価値な卵を生産する技術へと発展させるため、鶏卵黄抗体を用いたカスタム抗体の作成方法について検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 効率的な抗体の生産方法を検討するため、抗原を14日間隔で皮下、筋肉、腹腔に投与したところ、抗原の投与により産卵は低下した(表1)。
  2. 筋肉及び腹腔に抗原を投与しても充分に抗体価が上昇しなかったが、皮下注射により抗体価は、今回設定した基準抗体価(ELISAで希釈倍率3200倍、吸光度0.2)以上になったことから、投与部位は皮下が適当と考えられた(表2)。
  3. エンドユーザー評価を収集するため、卵黄から蒸留水で抽出後、硫安分画を2回繰り返し、試供品を作製した。
  4. タンパク質を抗原に用いた時、試供品の抗体価が基準抗体価を越えた事例では多くのユーザーが、試供品である卵黄抗体をカスタム抗体として利用出来ると評価していた(表3)。
  5. 合成ペプチドを抗原に用いた時、試供品の抗体価は半数の例で基準抗体価に達していた。しかし、抗体価が基準抗体価を越えていても、ユーザーが利用できないと答えた例があった(表3)。抗原の性質上、抗体価が上昇しないことはあり得ることなので、このことが短絡的に商品化を否定するものではない。
  6. 卵黄抗体産生に個体による違いがあることが認められた(表3)。
  7. 以上のことから、卵黄抗体をカスタム抗体として商品化できた。
[成果の活用面・留意点]
カスタム抗体の生産は現状では受注生産である。
平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:鶏卵黄抗体を用いたカスタム抗体の作成(指導参考)
[その他]
研究課題名:鶏卵黄抗体の作成とカスタム抗体としての利用
予算区分:共同研究(民間)
研究期間:平成11年度(平10〜11年)
研究担当者:大原睦生、森嵜七徳、宝寄山裕直

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